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死後屋の再招待(2)

鉛を飲んだような吐き気が収まらないまま、ローズと二十へついていった。

改めて知ったが、この場所はどうやら神社の敷地内らしい。

私も以前初詣で来たことがある。

この日本家屋のような建物自体も結構な大きさだというのに、社の裏にこのような建築物があることはまるで知らなかった。

旅亭の一角と言われたほうがしっくりくる。


「柘榴ぉー水持ってきてー!!」

「はいっ!?はーい!!!」


二十は扉を開けてどこかで聞いた名前と声を廊下の奥に呼び出す。

数秒待ったところで奥からどたどたとした音が迫ると、バケツを持ちながら走るいつぞやの少女が来た。


「火!火はどこですか!?」

「…そうじゃないんだな柘榴チャン」

「あ、はやとちりでしたか、失礼しました。あっどうもこんにちは」


急に来たり止まったり挨拶しているこの緑髪の少女は確か、私の枕元で念仏のようなものを唱えていた子だ。


「ど、どうも」

「む?顔色が悪くないですか?あ、こちらのお水要ります?柄杓ありますよ。」

「衛生面大丈夫?」

「大丈夫です。」


何となく抵抗があるがややとてもグロッキーなので頂いた。

鉛の消える感覚を覚えたところで、気まずそうにコホンと咳をついた二十が話し始める。


「後で共々紹介しようと思っとったんじゃが、まぁええ。この娘は柘榴、れっきとしたうちの従業員だ。」

「柘榴です。はやとちりです。そういえば昨日お会いしましたっけ。」


ぺこりと綺麗にお辞儀を決めながら質問を加えてくる。

この会話のペースが掴めない感じを先程も味わった気がするが、もしや死後屋はこういう人が多いのだろうか。


「まぁ、個人的な質問は後にしとくれ。このままみんなと顔合わしてからじゃ。」

「皆?」

「おうとも、死後屋(うち)の従業員達じゃ。」


そういって奥へと歩く二十についていく。

しかし大丈夫だろうか、現在「死後屋」を名乗る人物が事後申告誘拐犯、グロテスクドライバー、まともなような怖い人、マイペース少年少女の計5人だ。

いや大丈夫ではない。

途端に不安になって来たが、既に乗せられてしまった船なのでどうしようもできない。

などと思案していると、突き当たりのふすまから声が漏れてきた。


「絶対や、賭けてもええわ」「乗ってあげるわ、対抗に5000」「…オレは部屋に帰る。」「なんや賭けへんの?」「女、10000」「おうおう後で取りにいくわ」

「先輩方、そろそろ来ますよ。」


部屋の前に行くとふすまの奥が少しドタバタし始めた。

二十が引き手に手をかけようと言うところで、こっちに心配そうに目を向ける。


「心の準備とかいる?」

「…ちょっと深呼吸しますね。」


募る不安を軽くするため、スーと大きく息を吸う。

少し息を止め、ハーと吐くと同時に、サーッと静かな音を立てて目の前のふすまが開かれた。

横にいたはずの柘榴の手によって、

ふすまに遮られていた視線がこちらに注がれてきた。


「戻りました!」


何してくれたんだ。

咄嗟で頭が固まる。これはあれだ、授業中に当てられて答えが分かるのに思考が止まる現象と同じだ。

私の思考が固まるのに対し、あちらは騒ぎ始めた。


「ハッハッハァ!賭けは勝ちやな内藤ゥ!!!」


茶髪の見るからに怪しい羽織の男がうるさく笑ってゴスロリの女を煽る。


「ローズナイトよ。2度と間違えないで」


先ほどのローズナイトだ。ペットボトルの紅茶をラッパ飲みしている。


「姉ぇおかえり」


机に突っ伏したまま喋るのは昨日のマイペース少年。


「……………」


そしてソファの上にいる青髪の青年は黙って座ったままだ。

なんだこのトンチキパーティーは。

疎外感を得たが不幸中の幸いかもしれない、何とか思考を戻せた。が、どう話し始めれば良いのだろうか。


「…すまんな、アレで」

「いや、まぁ、はい。」


二十はどこか恥ずかしそうな顔をしている。

存外この人も苦労人なのかもしれない。


「さて、ええかぁお主ら?」


二十のよく通る声が皆の動きをピタリと止める。


「よろしい、新人で喜ぶのも良いが、引かれたらアタシが困る。ちったぁ格好つけい。」

「うっす」「えぇ〜」「(紅茶を飲む)」「おぉ〜?見た事あるガキンチョだ。」


唯一静かだった青髪の青年だけが生真面目に答える。

一瞬二十が目頭を押して溜め息をつき、声色を戻す。


「さて、麗夜自己紹介してくれるかの?」

「この空気で何を話せと?」

「じゃよな、すまぬ。」


この人は苦労人なのかもしれない、二度目の同情を覚えた。

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