死後屋の再招待
目を覚ますと同時に、安心感を感じる。
今朝の夢は街中で流砂に飲まれる夢であった。
なんの合図もなく足がとられ、見ればコンクリートがジュクジュクと溶け…
悪い夢は思い出さない方がいい。
嫌な感触を蘇らせる前に自分に言い聞かせた。
寝汗を拭いて、さっと着替え朝食に向かう。
最近の日常は置いておき、昨日増えた非日常に思考を向ける。
死後屋、二十さんの言うことにはこの世界と少し違う異界に居る化け物を退治する集団らしい。
そして私はその素質?があるらしく、二十さんに助けられた後拉致され、その場の流れ、もとい思慮の浅い好奇心で死後屋に所属することになった。
目玉焼きを割きながら頭の中で昨日の出来事を整理するが、非常に簡潔で訳のわからない出来事であった。
割いた黄身をご飯にのせて過剰量の醤油をかける。
これは黄身にかけているわけでご飯にかけているわけではない。
誰に対してもない言い訳を作りご飯を掻き込んだ。
「ご馳走様でした。ちょっと外行ってくる。」
皿を流しに置いて、父に一方的な報告をするとそそくさと外へ向かう。
ガチャリとドアを開けた先にはそれなりの晴れ空、やや聞こえる誰かの声、人の姿、普通の住宅街に対して麗夜は昨日の出来事を思い出し、今朝方から2回目の安堵を吐いた。
今日外に出たのは他でもなくその死後屋の話だ。
現代人のサガか、帰ってきてからの記憶すらないのにしっかりと充電されているスマホを開くと、形式的なあいさつのスタンプに、直近のメッセージがあった。
『迎えが多分着いとるから家の前にいてくれ』
迎えという文字を見てスマホから目を離す。
すると辺りを見回すまでもなく、先ほどからずっと佇んでいた日傘を刺す淡い紫の髪の姿を捉えた。
一見すると黒のワンピースの女性であったが、よく見ればフリルがあしらわれたゴスロリの服であり、大都会の通りから飛び出したかのような姿は麗夜に確信を与えた。
視線を感じたのかロングブーツをカツカツ鳴らしてこちらに歩いて来る。
「死後屋の方ですか?」
「…」
勇気を出して声をかけたにも関わらず一切反応を見せず、代わりに手元のスマホと私の顔を行ったり来たりしている。
「あのー、ごめんなさい、死後屋の方ですか?」
再び声をかけるとスイッチが入ったかのように喋り始めた。
「死後屋のレイサーファ・ローズナイト、蕗市麗夜ね?貴女を迎えに来たわ。」
また色濃い方が迎えとして来たようだ。
麗夜は見た目も声もまるで造られたかのように美しいその人が放った言葉に面を食らっていた。
「…人違いかしら?」
「いえ、あってます、ええ。」
「そう、よかったわ、じゃあ着いてきて」
死後屋には話の通じない方が多いのだろうか
そこはかとない不安を感じつつ、麗夜は誘導されるままに車は乗せられて行った。
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「…なんかすまんな。」
えらく厳格な門扉の前で待ち構えていた二十は開口一番に謝罪を示した。
その謝罪の先では青い顔をした少女が苦笑いで答えている。
「oops」
「安心しなさい二十、このくらいなら特別手当はいらないわ。」
平然とした表情にやや怨みのこもる視線を送った。
急ブレーキ、急発進、カーブを行くは減速なし。
見事なドライビングテクニックに麗夜は胃酸を飲んだ。
「とりあえず入りな?お水出しとくわ。」
二十も被害者なのかとても可哀想な目でこちらを見るが出来るならば昨日の人を送って欲しかった。
「気がきくわね。」
「お主じゃないわ内藤!」
「ローズナイトよ2度と間違えないで。」




