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死後屋のいろは  作者: 杞憂蛇
序章
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プロローグ

前書きってなんぞって感じで書いてるので、てすとぷれぇだと思って

ただひたすらに、生物はそれを恐れている。


「はぁっ…はぁっ…」


私も、それが恐ろしいのだろう。いや、現にそうだから


「はぁっ…!はぁっ…!はぁっ…!!!」


おぞましい何かが呻き声を放っている。

私を、


「っ………!!!!」


嫌だっ、嫌だ嫌だ嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌!!!!

想像した途端、足の裏の感覚が消える。

恐怖で自分の五体がどこにどうあるのかもわからない。

ふと、何かに、そう、何かに

蹴つまづいた。

立ち直れず、私はそこで、止まってしまう。

振り向くとそこには、大きく空いた口がある。


「……ぇあ」


いつもそうだ。


「嫌だ」


通じるはずもない。


「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ」


生暖かく湿った空気が体を包む


「嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌」


湿りの源が、私の全身を迎えようとする。


「いやだぁ!!!!!!」


そして、


「……あ」


ここで終わる。

嫌な汗をかきながら、私は目を覚ました。


「また、夢、か。」


布団の剥がれたベッドの上、水を被したかのように、黒と白の髪に水を滴らせていた。



第一話『悪夢は存外忘れにくい。』

階段を降りてリビングへ向かう。

今日のような夢をここ最近毎日見る。

この私、蕗市麗夜(ふきいちれいや)はそれほど悪夢というものを見た覚えがない。

いや、ただ単に覚えていないというのもあるだろうが何せここ最近の悪夢はタチが悪い。

多少マシにはなったが、悪夢にうなされ始めた初日は…うん、酷いことだった。

回想を挟みつつも朝の支度を終え、和室へ目をやると、いつものように蕗市冬夜(ふきいちとうや)が仏壇に手を合わせている。


(どんだけやってんのさ…坊さんかっての。)


仏壇にいるのは随分前に死んだ私の母と、ほんの一週間前に死んだペットの『イチ丸』だ。

父の隣へ行ってりんを鳴らす

とても不謹慎であるのかもしれないが、私はこの音が少し好きなのだ。


「おはよう」

「おはよう、ご飯、作ってあるから。」


机上には、目玉焼きとベーコンがホカホカとしている。

父は、仏壇の前から長い間動かない。

朝ごはんだけ作ると、ゴミ出しの数分前まで動かない。

少し前も気にならない程度にはあったのだが、ここ最近、イチ丸が死んでからはさらにひどくなった。


「………」


慣れとは恐ろしいもので、私ももはや父を心配していない。

今日のご飯も、いつも通り変わっていないのだから。


「いただきます。……んま。」



7時50分、家を出て高校へ向かう。

私の通う『私立埴輪高校(しりつはにわこうこう)』は自転車でおよそ10分の所にある。

いつも通り、なんの変哲もないなら10分で着く。

…が、今日は変哲がある。

イチ丸の散歩ルートを通って学校へ行くことにした。

たった一週間だというのに、どこか懐かしさを感じる。

景色だけでなく、空気の匂いや日陰の具合など、普段はなんでも無い部分が懐かしいのだ。

梅の木の家、ぼろ家、時代錯誤の蔵、歯医者、そして三叉路を右に進む。というのが散歩ルートであるが、登校ルートに戻らなくてはならないため、左を進む。

するとどうだろう、梅の木の家、ぼろ家、時代錯誤の蔵、歯医者…


「あれぇ?」


思わず苦笑いがこぼれ、血の気がやわらかく引いていく。

私の目の前にあるのは三叉路である。

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