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ただいま[微ホラー]

作者: コロン
掲載日:2023/07/10

僕と弟は叔父さんからもらったお小遣いで、道路向かいの自動販売機でジュースを買うことにした。


「あっ」


僕と繋いだ手を振り解き、自販機に向かって走り出す弟を追いかけた。





最期に見たのは大きなトラックだった。




……



「起きなよ。帰るよ」


僕は横たわる弟を起こす。


「…う〜ん…」

弟はなかなか起きない。


「早く起きろ。お母さんとお父さんが待ってる」


「あっ!そっか!」


思い出したようだ。

弟が飛び起きた。


僕は10歳。

弟は3つ下の7歳。



「行こう」


「…うん」



暗闇の中、僕と弟は歩き出す。



僕は、ぷらぷらと揺れる弟の手を取り、しっかり繋いで離さないようにギュッと握った。



「こっちで合ってる?」


振り返る弟が僕の顔を見て不安そうに聞く。


この道で帰れるのか、合ってるのかわからない。

本当は僕だって不安で泣きそうだったんだ。


だから…


「たぶん合ってるよ」


そう答えるので精一杯だった。




どれくらい歩いただろう…

二人で無言で歩いていると、遠くに温かな色の灯りが見えた。


するとそこに向かって、ポウ…っと足元に小さな明かりが次々と、道導みちしるべのように灯った。



こっちだよ、迷わず帰っておいで



そう言っているようだった。



弟もそう思ったらしい。

繋いだ手を振り払って駆け出す。


あっ!!


「ダメだ!」


僕はすぐに弟を追いかけてぎゅっと捕まえた。


「手を離したらダメだ!」




あの時も…

手を離しちゃいけなかったんだ…



「…ごめんなさい…」


泣きそうな声で弟が言う。


僕と弟はしっかり手を繋いだ。

ゆっくり、ゆっくり。

優しい灯りに導かれやっと家の前に立つ。



カラカラと引き戸を開ける。



僕と弟は顔を見合わせにっこり笑った。

そして大きく息を吸って言う。





「お父さん!お母さん!ただいまっ!」





。。。





降りはじめた雪に、音が消されて静かな日。


初七日の法要を終え、みんなでお茶を飲んでいると、玄関の引き戸がカラカラと開く音がしました。


誰か来たのかな?と、見に行きましたが戸は閉まっています。

不思議に思って戸を開けてみると、積もった雪の上に、家に向かって来る二つの小さな足跡がてんてんと残っていました。








帰って来たんだね。





おかえり。








拙い文章、最後までお読み下さりありがとうございます。



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夏のホラー2023参加作品になります

拾った箪笥
― 新着の感想 ―
幼い兄弟の運命や残された家族の事を思いますと、何とも切ないですね。 しかし兄弟の魂が自宅に帰り着けたのと、その事を残された家族が実感出来たのは、せめてもの救いでしたね。 兄弟の魂が安らかである事を願っ…
[良い点] 悲しくて……切なくて…… でも、帰って来られてよかったです。 『ただいま』と『おかえり』 当たり前ではないのですよね。 胸がじんとする作品をありがとうございます。
[良い点] 余計な不純物を排し、情緒を全面に押し出した文面の作品お見事でした! [気になる点] >あの時も…手を離しちゃいけなかったんだ… [一言] 切なさと悲しさと安堵。 どのような形になっても『…
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