【5-13】少女の冒険 ⑦ お色直し
【第5章 登場人物】
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バー・スヴァンプは、開店前から活況を呈している。
マッシュルームを象った店の扉をくぐると、待ち構えていた従業員たちよってソルは化粧部屋へ連れ去られた。
そこはもちろん男子禁制であり、入室を拒まれたクヴァシルはたちまち手持ち無沙汰となった。軍服の胸ポケットからひしゃげた紙巻を取り出すも、マッチが切れていることに気が付く。
「10代の肌って凄いわね」
「化粧のノリがすごく良さそう」
「この娘の肌はさらに特別よ」
「髪の毛もツヤツヤ」
「将来が楽しみだこと」
化粧部屋から漏れる歓声のボルテージは、最高潮に達していた。
「このチーク試してみましょうよ」
「いいんじゃないかしら、これならファンデはこっちかしら」
「お花はどっちがいいと思う?」
ソルを囲み盛り上がる従業員たちを、レリル=ボーデンが咥え煙草のまま、やれやれと見守っている。
この店の女主人が、喧騒の輪に加わろうとしないのは、少女への紙巻の煙を配慮しているのだろう。また、自身のふくよかな体が、狭い化粧部屋に邪魔なことを彼女は心得ているのかもしれない。
「この娘を国政討議の壇上に乗せて、大丈夫なのかい」
「ああ、俺の弟子は、結構やってくれると思うよ」
クヴァシルもマッチを借りて紙巻に火を点ける。
あの歩く化石のような野郎の娘と聞いて、初めはどうしたものかと思ったが、そこらの代議士なんぞより遥かに優秀だと、彼は言う。
「そういう意味じゃなくてね……」
さらにママが何か言おうとした時に、店の電話のベルが鳴る。
2人の会話は中断された。
お色直しが終わった。
化粧部屋への入室を許可され、得意げな女性陣の先に立つソルの姿を見て、クヴァシルは思わず煙草の火を消していた。
「こいつぁ……」
美しかった。二の句が見つからないほど。
姿見に映った自身を見て、少女も息をのんでいた。
椿油で整えた赤髪の上には、碧や紫の花で控えめに飾られた帽子が、斜めに乗せられていた。
上半身は、マトンスリーブが特徴的である薄い紺色のシャツで、シックかつシンプルに。胸部には、いろいろと試行錯誤した末の詰め物が格納された。
胸元の緑色の帯は、黒みがかった光沢こそ控えめながら、腰で大きなリボンにまとめられている。
その帯から下は深緑色のロングスカートをはいた。スカートの先から垣間見えるは、限界までヒールを高くした黒革のブーツだ。
そして、容姿を年齢以上に引き立てたメイクは、バー・スヴァンプ女性陣の傑作である。
【作者からのお願い】
この先も「航跡」は続いていきます。
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【予 告】
次回、「少女の冒険 ⑧ 若作り 老い作り」お楽しみに。
ついに、少女が壇上に立ちます。
少女の背中を次官がポンッと叩く。それは、ソルの全身にまとわりついた数多の視線を払い落とすかのようだった。
彼は言う。相手は、自分の弁舌に酔っているイタイ野郎だ。ぶちかましてこい、と――。




