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やはり彼女も、めんどくさい

「いやー寒いな。どうだ、この季節、男子高校生ともなると人肌恋しくなるんじゃないか?」

「家では基本布団にいるんで熱量は自給自足だから恋しくないですね」


 そんな風に夜道を歩くこと数分。周りの景色も来た時よりわかりずらいせいで駅まであとどれくらいなのかわからないまま夜風にあおられている。


 先まで家の中で説教じみた空気だったからか先生は自分から何か話すようなそぶりは見せず、ずっと軽口を言ってくるだけだった。


 気づけば駅の明かりが見えてきた。


 だから俺はもう無言でいいのだと油断していると、成美先生は先ほどのソファーで会話している時と同じことを口にした。


「色見、この一年はどうだった」

「よくわかんないっす」

「・・君らしいな。それでもいい。ただ、全力で過ごせよ。後悔もだが、喜びだって幸せだってその先に立つことはないよ。それが一年なのか二年後なのかそれとももっと先なのかは私にはわからないがな」

「・・適当っすね」

「失礼だな、これでも君にはかなり目を掛けているがね」


 鼻を鳴らしながら自慢げに言う先生を見て、俺は特に考えず素直な疑問をぶつけてしまった。


「なんで俺なんすか。一人でいたからですか?」

「――ッ!!」


 俺の言葉を聞くや否や先生は足を止めた。それに俺は驚いて後ろを振り返る。すると、そこには目を真ん丸にさせ口をぽかんと開ける先生の顔が。


 いうなればそれは、鳩が豆鉄砲を食ったようで・・・


 すると、


「ププ・・ック・アハハ!おま、お前が言うか!!あっッはッは」


 突然笑い出した先生はふらつく体を支えるためにガードレールに手をつくと、目じりにためた涙をぬぐう。・・・きっと俺の顔には不満げな戸惑いが浮かんでいることだろう。


「わ、悪い。まさかお前が一人でいることを自虐すると思わなくてな・・ハァ・・ハァ」

「別に俺にそんなマゾヒスト精神はないんすけど・・・」

「なら心境の変化でもあったか」


 先生はようやく笑いが落ち着くと、わざとらしく咳払いをして俺の方に数歩詰め寄ると


「・・乙女心だよ、言わせるな」


 言って先生は俺の額に軽くデコピンをした。


 威力はそこまでのはずなのに、冬の冷たい空気のせいかやけにヒリヒリする額を俺がさすっていると、先生は駅のほうを見てやさしく微笑んだかと思うと一変して意地悪そうな顔つきで続ける。


「ほら、早速面倒なやつがきた。・・・それじゃ私はこれで。ありがとな、付き合ってくれて気を付けて帰れよ、一緒にな」


 ひらりと体を翻すと、先生は来た道を戻るため、一歩ずつふみだした。


「あっ、そうだ色見」


 先生のほうを見ると、先生は足を止め、体を半分だけ俺のほうへ向けていた。


「後悔も先立たないが、幸せだって、同じだと思うぞ少年」


 にっ、と笑ってそう言い残すとこんどこそ家へのほうを向いて「寒い寒い」と両手を抱くようにしてさすりながら先生は来た道を戻っていった。


 何が何だかわからず、別れの言葉すらいえないまま俺は少し先に見える駅まで歩いて行った。

 駅のホームに近づくと、ある見知った人影に俺は呆気に取られた。思い出されるのはついさっきの成美先生の言葉だった。


『面倒なやつ』か。・・・全くもってその通りかもしれない


 駅の入り口の袖にあるちいさなベンチ。

 そこにポツンと暇そうにスマホを眺めるは、他の誰でもない――


「――茉白さん」

「・・・」


 俺の呼びかけに顔を上げるでも、ましてや笑顔を向けるでもなく、ため息というには短すぎるほどの息を吐きだした茉白さんは無表情でスマホをしまう。


「・・家事終わったんだ」

「あぁ」


 やはり表情には出ないが、間違いなく平穏ではないであろう彼女の心中を察し俺は苦い気分になる。


 誰よりも”今の”裏生徒会を愛する彼女は、立ち上がると


「もうちょっと、働いてもらうからね」


 それだけ言うと、俺の隣に立つと、改札のほうへ歩き出す。

 それから茉白はなにもいわず、電車が来るのをただただ待った。

すいませんが、少しでも続きが気になると思ってくださる方は、ブクマ、評価等で応援してくださるとありがたいです。

とてつもなくモチベーションが上がります・・

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