写真には、写らぬ想い
「・・・何それは」
「ネコマ!」
気分が落ち着いた川霧は、ぬいぐるみを見せつけるために外に出てきた朝日にそう毒づいた。
せっかく人酔いが治りかけていたのに、絶望的なセンスのぬいぐるみに川霧は再び体調が悪くなったのか、こめかみを抑える。
「知らないの?みんなの間で流行ってるんだけどな・・・」
「朝日さん、その一部でイカれた嗜好の人々を大きな括りにするのをやめなさい。少なくとも私の周りじゃそれを持ってる人見たことなわよ?客観性を持ちなさい。可愛くないわよ、それ」
「そんな!?」
ぐさりと川霧に刺された朝日はネコマを慰めるように撫で、口をとんがらせる。
「まぁほら、最後のには同意だが川霧も俺も一人でいるようなぼっちだし意外と世間では人気なんじゃねーか?」
言って俺は歩く平凡こと、茉白依真を見るとそれに釣られたように朝日もガッと茉白を向いてから
「可愛いよね?知ってるよね!?」
と茉白の顔に猫デビを近づけて聞いた。
「・・・ウン。カワイーヨネ、ソレ・・・」
「だよね!」
いつも無表情気味でなんの感情も見えない声の茉白だが、今回ばかりは本当に「無」な棒読みで興奮気味の朝日をいなした。
すっかり茉白のおかげで機嫌を取り戻した朝日は、ネコマを持ち上げ気持ちよさげに鼻歌を歌ったりそれに話しかけたりとしだした。そののちに朝日は思い出したようにスマホを取り出してから 俺たちのほうを向くと
「そうだ、今日来た記念にさ写真撮ろうよ」
と提案してきた。
朝日以外の三人にはなかった発想に、俺たちがオウム返しに呟いていると真っ先にそれを肯定したのは茉白だった。
「いいねどこで撮ろっか」
「いや、でもここらにそんな良いスポットないぞ?」
「それで良いんですよ。写真ってのは何気ない日々の中にある小さな良いことを留めておくものなんですから!」
「珍しく感慨深いこと言うわね、あなた」
「ヘヘッ、ネットの受け売りだからね」
褒められたわけでもないのに嬉しそうに胸を張った朝日はそれから周囲を見回すと小さな公園を見つけた。
そこはおそらく子供連れの親の交流の場としての機能がメインなのかそこまで遊具類が豊富なわけではなく、イメージとしては閑散とした公園をぎゅっとした感じで、公園コーナー、みたいな形容がぴったりだ。
その土地に踏み入れた朝日はてくてくと公園を一通り歩いたのちに、俺たちに向かって手を振った。
「こことか良いんじゃないかな!」
朝日がいるのは唯一普通の公園にあるようなサイズ感の滑り台だった。その滑り台には、縄を結んでできた四角形上の穴を足の置き場にして登るアトラクションや普通の階段などが滑り口へとつながっている多少のアトラクションと合体していたものだった。
朝日はいたって普通な階段の正面にたって、腕を組んでうなっている。おそらく撮り方を悩んでいるんだろう。
「確かに左右に広がるよりも階段で撮るほうが上下に並ぶから大きく撮れるもんね。ここにしようか」
そう言って茉白は階段に近づいた。 そしてそれに川霧も続く。
それを見ながら俺は悩んでいた。
さて、どこにいくべきか。と
普通なら2×2で写るべきなんだろうが、何というかそれそれで小っ恥ずかしいというか。
だとしたら女子を前にして俺だけ階段に登って取るか?でもそれだとスマホの位置的に俺がセンターラインになってしまう。どうしようか――
「ほら和樹くん急いでください!人が来ると恥ずかしいじゃないですか」
強引に朝日は俺の腕をとって階段前に引っ張った。気づけば階段には茉白と川霧が陣取っており、俺には前列以外の選択肢は残されていないようだった。
俺と朝日が並ぶと、隣の朝日は俺とををつないでいる腕はそのままにもう片方の腕を伸ばす。
あの、若干当たって――
「されじゃ行くよ?さん、にー、いち!」
パシャリ
軽い電子音がなると、アサヒの腕はぬるりと抜ける。ようやくふっと力が抜けたような感覚になっていると俺の携帯が鳴った。
見ると朝日はグループでとった写真を投稿したようで、それの通知だった。
俺は何の気なしにそれをタップする。画面には先ほどの俺たちが表示されるが、まぁ特に特筆すべきようなことはないいつもの俺たちだ。
一人明るく歯を見せている朝日。端正な顔で恥ずかしそうになれないピースをする川霧。いつもの無表情気味な感じで小さく笑う茉白。そして俺。
あまりにも代わり映えのない出来にやや残念な気持ちになっていると
「うん。ありがと、朝日さん」
言って茉白は写真通りの笑顔でスマホに目を落としていた。
「これからもみんなでたくさん写真撮りたいね」
「まぁそうね。次は遠くに行ってみるのも良いかもしれないわね」
「良いけど凛ちゃん、人酔いは大丈夫なの?」
「・・・別に、回数重ねたらなれていくでしょ」
「ほ、ほんと!?あ、でも無理はしないでね?」
恥ずかしそうな川霧のその言葉を聞いて子供のようにはしゃぐ朝日は川霧に抱きついた。
「暑苦しい・・・」
「えへへ、冬でよかったでしょ?」
「そう言う問題じゃないのだけど」
川霧はああ言いながらも突っぱねるようなことをせず、朝日にされるがままといった感じでまんざらでもなさそうだ。
俺がそんな二人の様子を微笑ましい気持ちで見ていると、囁くように茉白言った。
「ありがとね」
「何がだ?俺は特に何も――」
「みんなで出掛けようっていってくれて。おかげでこんな写真まで撮れちゃった」
茉白の視線の先にはさっきの写真を表示したスマホがあった。いつもとかわらない、俺たちの姿が。
「別に綺麗な写真でもないだろ」
写真に見合わない感動をしているように見えた茉白に鎌をかけるようなつもりでそう言うと、茉白は当たり前のことを言うような口調で答えた。
「それがいいんだよ。・・・こうじゃなきゃ、ダメなんだよ」
やはり茉白が言いたいことがわからず俺は眉を顰めたが、本人が満足しているならその理由なんてのはどうでもいいのかもしれない。
そんな気がして
「そうか。よかったな」
とぶっきらぼうに言うしかなかった。
「二人とも!!ジュースとお菓子買いにいくよ!」
朝日の大きな声に振りかえると、川霧のそばで朝日はこちらにおおきく手を振っている。
どちらともなく俺たちは顔を見合わせると、小さく笑う。
「遅れちゃうね、行こっか」
そういって二人のもとに駆け出した茉白には、さっきまであったように思われた悲しさは、もう無くなっていた。
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