いつかぶりの二人きり
気づけば川霧の足取りが軽くなっていたせいで、俺は結局は一人後方でみんなの背中を見ながらただ無心でゲーセンまでの到着を待った。
ようやく俺の心拍が一定になったほどで、ちょうどゲーセンにたどり着いた俺たちはチラホラと学生の見える店内を散策していた。
「見て!猫デビだよ、猫デビ!!」
「見ればわかるわよ、少しは落ち着きなさい・・・」
朝日が興奮気味に指差す方を見ると、そこ一面にはびっしりとクレーンゲームが。
そしてその中には、猫デビと呼ばれる三頭身ほどの猫のぬいぐるみが。
男の俺目線ではただキモい何かにしか見えないが、一部の女子の間では腹を殴れば間抜けな声を出すという仕様も相待ってかキモ可哀想と人気を博しているというのだから世の中わからないものだ。
意外と女子はああいうのが好きなんだろうか?それともみんな嫌いそうなもの好きな私異端アピールなんだろうか。
「なんなのあれ。気持ち悪い」
「ひ、ひどい!?あの吸い込まれるような目がかわいいでしょ!」
「そうなのか、茉白さん?」
「・・・なんで私なのかな?別に私、物好きじゃないんだけど」
「も、物好き!?」
川霧と茉白の感想に俺が安堵を覚えている一方では茉白の意図しない右ストレートを決め手に、朝日はがくりと自分の肩を落とした。
項垂れながらも「みんななんでわかんないんだろ」とブツブツ文句を言っている朝日の姿を見て、思い出されるのは文芸部の依頼でのことだった。
確か朝日は自分の好きなものを守るために、外では自分の好きなもの、引いては自分の本心すらも隠して生きてきていたのだ。
そんな彼女が、こうやって自分が好きなものを臆せずに誰かに打ち明けられているというのは大きな成長なのかもしれない。
そう思っていると、
「どうしたの?色見くん」
「いや、なんでもない」
「思い出し笑いをする人は変態らしいわよ?」
「それ前にも聞いたから・・」
俺は茉白と川霧に揶揄われたのでそれを手で払い除ける。
それを受けてから川霧は言い出しずらかったような感じで言った。
「あの、しばらく外に出ててもいいかしら?ごめんなさい、思っていたよりも人が多くて・・・ちょっと疲れてしまって」
「あ、ほんと?ごめん、気づかなくて。一緒に着いていくよ!」
「あなたはここにきたかったんでしょ?なら気にせず楽しみなさい」
「なら私が外に出て付き添うよ。一人じゃ何かあったらいけないし」
「ごめんなさい、助かるわ」
「全然だよ」
そういうと川霧の肩を優しく撫でながら茉白は彼女と共にゲーセンを出ていった。
まぁ川霧、こんな場所こなさそうだもんな。それに午前中、川霧は朝日に連れまわされてたらしいしな。少しくらいは休憩も必要だろう。
ところでだ。
この場合、異様に元気な朝日の相手をするのは俺の役割というわけで。まずい、非常にまずい。俺も既に疲れているので今からでも茉白と役割を交代してもらえないものか・・・。
多分これを見越して茉白は川霧の付き人に名乗り出たんだろう。
「それじゃ、二人になっちゃいましたけど遊びましょうか!」
まるで川霧と茉白がいなくなって寂しげになった雰囲気をかき消すように、大股で歩いていった朝日を数歩遅れて俺は追いかけた。
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