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朝日はやはり眩しい

「うわっ、きも!!」


 冬休みになってから久しぶりの対面だというのに鮮烈なラブコールを発し、俺とすれ違うように階段を駆け上がっていく妹の甘花かりんを尻目に俺は玄関に向かう。


 そんなお化けが出たみたいな反応しないでも・・・。俺は別にキモくないので、俺の背後霊的な何かが見えたんだろうな、きっと!


 絶賛反抗期(俺にだけ)な妹の態度にもはや特に何も感じることはないままにドアを開けると、視界が白飛びするほどの眩しさに目を細める。


 今は休みの時期なのに俺が昼のこの時間に起きたのは、そう。今日がXデー(裏生徒会で出かける日)だからだ。太陽に対する耐性がほぼドラキュラな俺は、さっきから容赦なく白い肌を刺して日差しにじわじわと体を蝕まれていく。


 今日は二駅離れた先にある大きめなショッピングモールに集まることになっているので、俺は乗り気でない体を無理やり駅のほうに歩かせる。


 俺の家は駅のすぐそこなのであっという間に駅につき、中に入る。


 学校がない長期休暇中のとはいえ、平日のおかげか駅内は空いていたのでスムーズに改札を抜け階段を降りていく。そこにも人はまばらだった。


 ・・・だからだろうか。見覚えのある背中はやけに俺の目についた。俺はその背中に並ぶと、


「はよ、茉白さん」

「・・・あ。色見くん。どちらかといえば、もうこんにちはだけどね」


 ボーっと向かいのホームを見ながら電車を待っていた茉白さんは首だけをこちらにむけ、そういうとそれっきり何も言わずに顔を前に戻した。その横顔は、普段通りに何の感情も伺うことはできない。


「「・・・・」」


 ・・・チッ、柄にもなく声をかけたこと反省してまーす。


 最近では俺と茉白は互いに無言でも気まずくないような関係値なったのでいつもなら気にならないのだが、何というか、今日は茉白の感じがいつもよりもおかしい、気がする。そのせいか、茉白に対して久しぶりに気まずさを感じてしまう。


 流石にここで無言ってのも変だよな。自分から話しかけといて ・・。


 そんな思案の末、俺が選んだのは当たり障りのない内容だった。


「遅刻しないんだな、マイペースそうなのに」

「・・・まぁ、ね」

「いやー・・・っ!何して時間潰すんだろうな?」

「・・・さぁ、、ね」

「あ、電車きたぞ」


 ちょうど来た電車の隅の席に俺らは並んで座る。


「他のメンバーは遅れずにくるかな!意外と朝日さんが遅れたりして――」

「・・・ね」

「お前眠いだろ」

「・・・」


 横目で見ると、茉白はもはや返事をすることなく船を漕いでいた。いつも茉白は活発なわけではないが、今日は眠かったせいで雰囲気が違ったのか。


 嘘だろ・・・気まずさをかき消すように話題を振りまくってた俺の苦労返せよこの野郎・・


 なんなら寝息が聞こえてきそうなほど快眠してやがる。


 もう少し緊張感とかそういう類のものはないんですかねこの子・・・。けれど、ここはさすがと言うべきか、こういったシチュエーションでよくありがちな隣の男の肩に頭を置いて寝てしまう・・・なんていうラブコメヒロインにありがちな状況には一切ならず、茉白は俺の隣で左右どちらに体重を偏らせることはなく頭を垂らすようにして寝ている。


 だからこそ俺の方も「こいつ起きてるのか!?」みたいなありきたりなドギマギは起こらず、至って平静な心持ちで目的の駅までの到着を待つ。

 ・・・しかしだ。茉白が寝落ちしていると言うのは俺にとっては間違いなく好都合ではないだろうか。もういっそ茉白にはこのまま起きずに終点まで行ってもらって『揃わないならまた今度!!』って作戦もアリな気がしてきた。てか名案だろ、コレ。


 自分ながら自分勝手だとは理解してはいるのだが、俺が言い出したこの外出の予定日が近づくに連れ、当の本人である俺の外出したくない欲のボルテージは鰻登りだったのだ。

 マジでこのままバックれてやろうか・・・なんて、実際できないことを考えながらボーッと窓の先を眺めて時間を潰していると、目的地に着いたようだ。


 俺は肘で茉白をちょんと突くと、ゆっくりと茉白の閉じていた目がひらく。到着のアナウンスがなっていても、彼女のマイペースはかわらないようだ。


「着いたぞ」


「・・・うん」


 いって立ち上がり目を擦りながら電車を出る茉白さんを追いかけるように俺も降りる。

 駅を出ると、さっきの駅よりかは賑わいを見せていた。そこから歩いて十分しないほどで目的の施設に到着した。

 やはり大きな施設だけあって店の中は多くの人間で溢れている。これで人口減少ってマジかよ・・もうちょっといなくなっても大丈夫だろ


「もうみんな着いてるみたい。入ってすぐのとこにいるんだって」


 携帯を見ながら呟く茉白についていく。


 あ、ちなみに俺のスマホにはそう言った連絡は来てませんでした


 人が多いせいか歩いた距離に見合わない疲労感を感じていると、聞き覚えのある明るい声がとり分け俺の耳に届いた


「あ!こっちこっち!!」


 円柱を切り取ったようなクッションにはこちらに大きく手を振っている朝日となぜかすでにゲンナリとしている川霧がいた。


「・・・なんでお前はもう疲れてるんだ?」


 項垂れている川霧に目を落とすと、川霧はぐったりとおもたげな頭を持ち上げる。やはりその目はいつもよりやつれている。


「運が悪かったわ・・」

「なんだ、天災にでもあったか?」

「言い得て妙ねかもね・・。私は人混みが苦手だからずいぶん早く来たのよ。そしたら・・・ハァァ」


 過去を嘆くような苦悶の表情でこめかみを抑える川霧。


 あぁー、だいたいわかったかもしれない


 俺は川霧に起きたであろうに体験にある種の恐れを覚えながら口にする


「そしたら朝日さんが来てて、一生話しかけられた・・・と」

「いいえ。軽くここを一周して、人が溢れるフードコーナーでご飯を食べたわ」


 もうやめて!川霧のライフはゼロよ!!

 川霧の話を聞いただけの俺ですら寒気で震えが止まらないというのに・・


「しかもいつも以上に元気なのよ・・彼女」


 クラッ―――


 危ない危ない。もう少しで倒れるところをなんとか踏みとどまる。

 コレは今日一日川霧を労ったほうがいいのかもしれないな


「ご、ごめんね!お待たせ!!ってあれ2人とも大丈夫?」

「あ、あぁ」


 気づけば帰ってきていた朝日は俺たちの方に向き直す

 そして、代名詞とも言える満面の笑みで


「もう。コレからが本番なんだからねっ!!」


 俺・・死ぬかも――

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