休みの予定は
あれからと言うもの、茉白が変によそよそしくなったり、逆にあからさまな取り繕った感を出してきたり・・・なんてことはなく、別にいつも通りの「無」な感じで学校生活を送っていた。
けれどそれは、俺のーーつまりは受け取る側の問題なのかもしれないが、あんな不安そうにした次の日からケロッといつも通りなのも、それはそれで心配になるわけで。
俺は、どうしてもその“いつも通り”な茉白の影に、何か意味を見出そうと変に彼女の一挙手一投足に意識をしてしまっていた。
けれど、本当に何もなかったような彼女からこの前のような強いメッセージを感じ取ることはできなかった。
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そうして、数週間が経ちテストも終わって、二学期最後の登校日を迎えた。
「やった!!やりきった、やり切りましたよ、私〜」
「まぁ、正直もう少し点は上げられると思うけど、10点中5点くらいは上げられる頑張りだったんじゃないのかしら」
「凛ちゃんスパルタ!?・・・って、でも5点ってことは四捨五入で満点だしいっか!」
「ごめんなさい、私具合が悪くなってきたわ・・・」
「大丈夫?保健室連れていこーか?」
テストで疲労困憊だと机に突っ伏している朝日と、彼女のテスト勉強をほぼつきっきりで教えていた川霧はこめかみを抑えながら「本気にしないで」と吐き捨てている。
川霧は流石の優秀さはさすがといった感じで、川霧は学校での時間の大部分を朝日のサポートに削がれていたにもかかわらず、成績は上から五番目以内と言う超人的結果(個人の見解)を残した。
彼女曰く、『馬鹿に説明すると自身の学習の定着にもなるから』とのことだった。
さらっと朝日を容赦なく馬鹿と形容しながらも、当たり前の結果だと言わんばかりに髪を手で靡かせ、川霧は気取った風でもなくそう言ったのだった。
誰も聞いてもいないのに、テストの結果が出るや否やすぐに俺を捕まえてな。
・・・それにお前、造作もないみたいな感じだしてるけどテスト期間中、何回もヒスってたじゃん。
「なんでわからないの!?」と川霧がらしくもなく朝日に対して感情的になっている光景は、もはや空き教室での恒例となってしまうくらいには川霧の精神は狂っていた。
ついでにそこで朝日は「ごめんなさいぃ〜!」と力なくヘタレに言うのもセットだった。
そんな二人の、テストが終わってからも続く会話に俺と茉白はたまに入りながらも、基本は傍観の体を貫いていた。
そんないつもの空き教室。
朝日の言動にいちいちツッコむ優しい川霧。それを見る俺と、茉白。これが、茉白の願う「今」の状況なんだろうかとうっすら考えながら、俺は
「あの」
と、柄にもなく自分から全員に話し出してみた。
一言で全員の注目を集めた事を確認してから、体に走る緊張を抑えて俺は続けた。
「冬休みに一回くらい全員で遊ばないか。ま、まぁ・・その忙しかったりするならあれだけど」
なんとも歯切れの悪い提案だろう。
断られたらどうしようとか、なんでこんな恥ずかしいこと言ったんだとか、その他諸々の感情で体温がやばい。冬なのに制服の下で汗がとめどなく肌を伝っているのを感じる。
それはつまり、汗が伝うのを感じることができるくらいには、間があったと言うことで━━!!
「いいですね!それ」
手を叩いてそう言ったのは朝日だった。
滞った空気は、朝日を皮切りにして晴れていく。
「そうね。日時は折行って相談という形になりそうだけれど、私も賛成だわ」
「今思えばみんなで遊んだこととかないですしね!テスト祝いにパァッとやりましょう!」
「別にぱぁっとやるような出来ではなかったでしょ、あなたは」
「助けてカズ君〜!いじめられる!」
「その名前で呼ぶのやめろ」
「えぇー、けち」
近寄ってきた朝日をシッシと手で払うと、俺の隣に座っている茉白の方を向いて、俺は確認する。
「・・・その、茉白さんはどうだ?」
俺は言いながら、この前の茉白の背中を思い出しては、あの時の不安が徐々に込み上げ、自信なさげな口調になってしまった。体は茉白の方を向いているのに、視線だけは怖いものを見るようにチラリと覗くような、そんな視線になっていると茉白は俺の方をしっかりとみてから
「うん。私も、いいと思うよ」
と事なさげに答えた。
言葉だけでは冷たく感じるし、微笑みがあったわけでもない。ただ、それでも俺にはその一言で十分だった。
嬉しくなった俺は、決して表情が崩れないよう注意しながら続けた。
「なら決まりだな。日程はまた今度決めようか」
「そうですね。いやー楽しみですね!どこ行きましょうか」
「泊まりとかは勘弁ね」
「なんで?」
「いや、もしあなたと同じ部屋になったら疲れるでしょ」
「なんで!?絶対楽しい夜になるのに!」
「もう喋らないで。バカがうつる」
そんな朝日と川霧の会話を内心微笑ましく聞いていると、俺の制服の腕辺りが弱々しく引っ張られた。チラリとその方を見ると、茉白は今度こそ小さく笑って、俺にしか聞こえないように囁いた
「楽しみだね」
一歩踏み出してみてよかった
俺はそう思いながら、柄にもなく休みに日程が決まったことに煩わしさではなく、楽しみを感じている自分に俺は、小さく笑った。
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