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茉白は友達のため、背中を押す

自室の扉をあけると、俺はバックを適当に放るとベットに倒れ込む。


最後まで朝日の顔が陰ったままであることをそれなりに俺は気にしていた。


もちろん俺が何かしたせいではない(と思う)のだが、それでもやはり自分なりに女の子を励まそうとして微塵も成果が見られないのは自分の力不足を痛感して、ほんのりと自己嫌悪に陥ってしまう。


・・・ホント、人助けだとか向いてないことしてんな


そんなことを思っていると、急にズボンにある携帯が震える。何の気なしに反射でそれを取り出すと、その画面にはーー


――茉白からの通話の通知があった


思ってもいない連絡にギョッとしながらも俺は急いで電話に答える。


どうしてメッセージではなく通話なのだろうかと思いながら、寝たままで携帯を耳に当て


「なんだ、今日の課題忘れたのか?」


『こんばんは。・・・そんなこと色見くんには聞かないよ。そういうことは友達に聞くし』


ちくりと茉白に刺される。


「で、なんのようだよ」


『朝日さん。大丈夫だった?任せる形になっちゃったから、様子だけ知りたくて』


まぁ、そんなことだろうとはわかっていた。それに今では茉白がそそくさと帰ったのも、いわば俺と朝日を二人きりにするためのアシストであり、面倒ごとを丸投げしようとするサボりなわけではないことはわかっていた。


・・・だからこそ、俺が朝日に何もしてやれなかったと、茉白に伝えるのは忍びない。


茉白の期待に沿えなかったわけだから。


「悪い。俺じゃどうしようもなかった」


むしろ悪化させた・・・とまでは言えなかった。言い出す気になれなかった。


俺の暗いニュアンスとは反対に茉白は変わらず淡白な雰囲気で


『そっか。お疲れ様』


と優しくいうだけだった。


それが俺には違和感で。こそばゆかった。


「・・・なんかやけに素直だな」


『だって私が一方的に頼んだことだしね。それで思うような結果が出せなくても色見くんは悪くないし』


うん。やはりおかしい。


いつもならここで「あー、その言葉で優しくしたこと後悔したよ」とか締まりのない口調に静かな怒りを含ませて言い返してきそうなものだが・・・


茉白の殊勝な態度に俺はどう接すればいいのかと、電話越しの彼女との距離感を決めかねていると、向こうからまたしても優しい口調で言葉が続く。


『でも色見くん。諦めずに朝日さんに向き合ってあげて』


「なんで俺じゃなきゃダメなんだ。川霧とかの方が少なくとも朝日のことをわかってやれそうなもんだが」


『ダメだよ。色見くんじゃないと、だめ。な気がする』


「なんだよそりゃ・・・」


随分と自信ありげだなと思った矢先にその語気が弱くなっていくので俺は困惑した。


『なんとなくだけど、色見くんじゃないと意味がない気がするの。だから、頑張って』


「んなメチャクチャな。それに今日全力で慰めたが意味がなかったんだぞ」


『それでも、だよ。色見くん。朝日さんをお願い』


「・・・」


自信も根拠もないのに茉白はそれが絶対であると疑わずに、俺に無理難題を強いてくる。


さっき茉白にも言ったが、今日の感じを考えるに朝日に元気さを取り戻す原因に俺自身がなれる気はしないのだ。


そのため、俺は天井をぼーっと眺めがら、どう茉白の願いを断ろうかとばかり思案を巡らせているとーー


『わ・か・っ・た?』


「!?・・・・はい」


急な大きな声に俺は反射的に頷いてしまった。


茉白はらしからぬ声を出すと、またこれもらしくなく楽しそうに笑うと、優しい声に戻って言う。


『ありがと。それじゃーね、色見くん。・・・おやすみ』


「あ、あぁ」


『お・や・す・み』


「わかったよ、・・・おやすみ」


『ふふっ』


茉白が笑ったかと思うと、終わりを告げる間抜けな電子音がなる。


俺の別れの挨拶に満足して、彼女の方から電話を切ったようだ。


突然家に帰ったり、電話をかけてきたかと思えば自分から電話を切ったりと、茉白は実は自分勝手なのかもしれない。


俺の中ではクセも味もないキャラという認識だった茉白の意外な一面を見つけた気になりながらも、これまでも彼女のそういうところに振り回されていたような気もするなと、俺は鼻で笑って少しばかりの仮眠についたのだった。


問題は解決していないし、面倒が増えただけにも思えるが、不思議と気分は、ほんの少し軽くなっていた。

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