川霧凛はそっけない
春風に艶やかな黒髪を踊らしながら人形のようなどこか人為さを感じる整った顔立ち。
その子は、教卓の前に立つと、さっきまで先生がいた時とは違い、壇上の空気だけが異常に華やかになるのがわかる。
その女は耳に髪をかけながら、顔を廊下の方にむけながら
「川霧凛よ。進級が危うい人達に頼るのは心外だけれどよろしく」
・・・なんて一切の無駄がない自己紹介だろうか
俺は頬をひきつらせながら、朝日さんの方をチラリとみると・・
やばい!対処がわかんないからめっちゃ目を泳がしながら愛想笑いしてる!
「わ、私は朝日凪だよ!よ、よろしくね!!」
声を震わせながらも、愛想良く接する朝日、健気だなぁ。
「おし、楽しく会話できたな。んじゃ、時間はまだ早いけど見回りに行ってこい。私はもう帰るから。お前らも終わったら帰れよ」
適当しか言わない人が催促してくるが、あまりにも見回りには時間が早いのでは?
「先生、見回りは完全下校時刻あたりにする規則では?」
川霧が俺の気持ちを代弁しながら鋭く先生を見る。
「まぁー本来ならな。でもまぁ、大事なのはするかどうかだし、いいだろ。」
「そうですか」
川霧がこめかみを抑える。
わかるよ、その気持ち・・・
意外とこの子も俺と通じるところがあるのかもしれない。
そそくさと教室から出ていく成美先生の背が扉が閉まり見えなくなると、先生の上機嫌な鼻歌と活歩する足音だけが放課後の人気ひとけのない廊下に響いた。
それはまるで重苦しい沈黙にいる俺たちの様子を楽しんでいるようにも聞こえた。
「え、えっと。私もよく理解してないんだけどこれからよろしくね、川霧さん」
「・・・」
朝日の笑顔を受けても、川霧は顔のパーツ一つ動かすことはなく今日とったであろうノートに目を落とし続けている。
さっきの挨拶といい、高飛車な態度に初対面であれど俺は関係なしに口を出す。
「おい、さっきから失礼だろ。人と接する時はもうちょっと礼儀ってのをだな」
パタン、強くノートを閉じる音で俺の言葉は遮られると、その隙を見て川霧は
「どうしてあなたに人付き合いの勝手を偉そうに語られないといけないの。先生から聞くと、あなたろくに友達もいないそうじゃない。そんなあなたに何がわかるの」
「いないんじゃない。作ってないだけだ」
「可哀想な妄言ね」
「それに話し相手が不快だって言ってんなら改めるべきだろ」
「私は別にあなた達と仲良しこよしするためにきたんじゃないもの」
こいつ・・・どこまでもこっちを見下してきやがって!!
俺と川霧がバチバチと視線をぶつけ火花を鳴らしていると、朝日は手を叩いて場を沈めようとする。
「ま、まあまあ落ち着いて2人とも。ね?見回り行こっか、善は急げって言うしね!!」
「・・えぇそうね。学力に差がありすぎると話にならないそうだし、このままでは時間の無駄だものね」
「そうだな、お高くきどったただの頑固な性悪には何言っても響かねーしな!」
「ちょっと2人とも〜!!」
荒い足取りで俺達は空き教室を飛び出した。
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