ふたりぼっちな彼・彼女
どれだけ時間が経っただろう。随分立ったかもしれないし、そうでもないのかもしれない。
思考はまとまらず、気怠さにも似た疲労感が身体中に満ちている
・・・この暗闇に消えて無くなりたい
そんな考えがふと頭によぎるーー
「かくれんぼでもしてるのかしら」
俺は何も考えられないまま、ただ音に反応して頭を動かすと、そこにはいつもと変わらない川霧がいた。
「立ってれば見つけやすいのに床に座ってるせいで随分探したわよ。こんな暗い中で何やってるの」
「・・・悪かった」
「全くね。さ、見回りにいきましょうか。」
何も知らないので当たり前なのだが、川霧のいつもは冷たく感じる立ち振る舞いも今だけは心地よく感じる。
適当に校舎を回る最中も何も言わない。ただ淡々と業務をこなしていく川霧の背中はいつもより優しく見える。
やがて別棟の見回りのために出口に向かう。
出口に向かう廊下の窓の遠くでは、ワイワイとした笑い声とキャンプファイヤの光が幻想的に冬の近い夜に輝いている。
まるで、自分が除け者になった、そんな感覚だ。
「綺麗ね。キャンプファイヤ」
「・・・」
「そういえばお店、助かったわ。私のせいでああなってしまったから」
「・・・」
外に出ると乾燥した風が並んだ俺たちに吹きつけ、思わず身震いしてしまう。
「寒いわね」
「・・・って、痛っっい!?踏んでる、踏んでるってお前!」
「あら、暗くて見えなかったわ。ごめんなさいね」
的確に足先を踏んずけてきた川霧はその長くサラサラとした髪を見せつけるようになびかせる。
「にしては不自然に近いんだが・・?」
「心ここに在らずって顔なのが悪いのよ」
そんな顔をしてただろうか。心当たりはない。
思ったより深い心の傷のせいでかしばらくの記憶はない。
二人並んで、誰もいない教棟の合間を縫うようにして歩く。
しばらくすると、道がうっすらと照らされている箇所に出る。
その辺りは奥にある自販機の明かりを受けて夜の闇の中で煌々と輝いていた。
「ココアでいいかしら?」
「いや、申し訳・・」
「・・・ぐだぐだうるさいわね。こう言う時は奢られればいいのよ。で、ココアでいいのね?」
「は、はい」
言って川霧は優雅な足取りで自販機に向かった。
俺は立っておくのもしんどいので近くのベンチに腰をかける。
奥から、ガタンガタンと2回落下音が聞こえると、それを大事そうに抱えた川霧の影が近づいてくる。
「はい」
「あざす」
暖かな温度を感じながら、カシュッとほぼ二人同時にプルタブをひいて、冷えた体にホットココアを流し込む。冷めていた体にようやく暖かさが染み渡っていく。
「・・・あったかいな」
「えぇ」
チラリと隣を見ると、川霧は遠くの空を見て何か考えているようで、その口からは白い息が出ている。
彼女の横顔は、大人びていて、可愛いと形容もできるが綺麗という方がしっくりとくる。目鼻立ちがスッキリとした顔立ちは、女性らしさと本人の意志の強さが表れている。
そんな完璧な彼女は相も変わらず、空を眺めながらつぶやいた。
「そんなに見つめないでもらえる?」
「そ、そう言うわけじゃ」
ふふ、と愉快そうに口元を奥ゆかしく隠す川霧は、間を置いてから意外にも悔いるような声色で俺に問うてきた。
「私は間違ってたのかしら」
「それはない」
「・・・」
即答した俺に、視線だけでなぜだと川霧は続けて俺に問う。
俺はまだ冷たい指先をもらったココアで温めながら答える。
「泉の考え方がおかしいっていうわけじゃない。ただ、ほら俺としては一人で頑張るお前は・・その・・・格好良いと思うし、褒められるべきだと思う。お前すら人に頼るようなら正直今回俺が入った程度じゃ会計係は詰んでた。でも、事実はそうじゃない。それはお前の頑張りがあったからだ、その努力を責めるなんてそれこそ気狂いだろ」
「優しいのね、同情?」
「別に客観的な意見のつもりだ。・・・ま、強いて言うなら俺も、お前もーー」
「一人ぼっち。だものね」
「・・あぁ」
気づけば川霧からもらったココアの熱は人肌程になったのか、特別暖かいと感じなくなっていた。
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