文化祭の幕引きで、彼の幕は上がる。
暇つぶしになればうれしいです
お化け屋敷を出てから俺は疲れを取るためと、これからのための体力を蓄えるためにと空き教室で一人、居眠りしたりグラウンドを見下ろしたりして時間を潰した。
・・・少しだけ見回りもした。本当だよ?
窓枠に手を置き、景色を見ていると急に鳴るチャイムの音で現実に引き戻される。
続けて放送部と思われる女性との声。
『みなさん、まもなく閉会式が始まります。生徒の皆さんは体育館に集合してください』
・・・そろそろか。俺は空き教室に後ろ髪を引かれる思いで体育館に向かう。
もう終わるのかと愚痴をこぼす生徒達を追い抜くようにして体育館の中に入り、同じクラスの生徒が集合しているステージの目の前の群衆の中の席に着く。
俺は前から四列目程にいるのでステージ上の人間にしっかりと顔を認識されるくらいの距離感だ。
・・・いっけね、顔合わしてもそいつが誰だかわかんねーや、ぼっちだから!
後ろをチラリと見ると、たくさんの人と装飾の数々が。あんなに寂しかった体育館がここまで見違えるとは・・・と自分の委員の仕事っぷりに感動を覚えていると
ブゥゥーーーと変な機械音と共にステージの幕が上がる。
・・・・さぁ、始まりだ。
「みなさん、お待たせしました。これより、文化祭、閉会式を行いますーー」
そんなありふれた導入が終わると
「では、これより各クラスの文化祭委員代表から各学年への思いを伝えて頂こうと思います!それでは各学年の代表の方々に登壇していただきましょう、皆さん大きな拍手でお出迎えください!!」
仰々しい前置きに続いて入ってきたのは順に1年、2年、3年の代表者で、礼儀よく礼をするもの、一芸をするもの、爽やかに手を掲げるものと個性ある登場をして並んで立つ。
彼、彼女らにステージライトが当てられ、館内の照明は薄くなったことでステージ上の彼女らは人々の意識をこれでもかと受け止める。
けれど彼らに物怖じする様子はない。むしろその熱視線を浴びて気持ちよさそうですらある。
「それでは、一年代表の泉奈々さんからお願いします!!思いの丈を存分にぶつけてください!」
先輩達が控える中、ファーストペンギンとして指名された泉はわざとらしく驚いて一歩前に出る。
そして、活発に礼をしてから胸ポケットからこれから発表する内容が書かれているであろうカンニングペーパーを取り出す。
けれど、さすがは人前に立つのには慣れている泉。最初の方の言葉は覚えているのか前を向き、視線を横に流すように観客とアイコンタクトを取りながら話し出す。
「一年の泉奈々です。私は今回の文化祭。実は最初は乗り気ではありませんでした」
出たがりとして有名な彼女のその言葉に、多くの生徒はなぜなのかと聞き入る姿勢に入ったのが空気でわかる。
その空気を泉も感じ取ったのか、してやったりと小さく笑うと、曇っていた顔をパァっと明るくして続ける。
「しかし、頼もしい先輩方や委員の支え、同じクラス・学年の友達の一生懸命さを見ているうちに絶対に成功させてやる!と、必死になりました。今日こんなにも楽しい文化祭ができたのはみんなのおかげです。ありがとう」
最後に震えた泉の声に、生徒の中には心を打たれる者もいるだろう。仲の良いものは口を強く結ぶ始末。
一年郡の方を向いて礼をしている泉は頭を下げながら、チラリとカンニングペーパーを見ると彼女はーーー
ーーー大きく目を見開き、今度こそ何が起きているのかと本当に驚いた表情を浮かべた




