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本当に怖いのは人間だからお化けなんて怖くない!

進むと、小さな灯りが出てきた。それによって周囲はほんのり照らされ、可動式の間仕切りで道ができているのがわかる。


「この道を進めばいいだけのようね。真っ暗でもないし問題ないわ」


川霧がそう言って颯爽とランウェイを歩くように進んでいくと


――チリリリン!!


急な耳をつん裂くような黒電話の音が静かだったお化け屋敷に響く。


川霧は肩をびくつかせ立ち止まる。


黒電話の存在に気づかなかった俺もビックリした後に


「川霧さん、大丈夫か?」


返事がないので川霧に近づき、顔を覗き込むと


「・・・」


口をわずかに開け、半口角上げて眉がぴくついている間抜けな顔がそこにはあった。


中等部の頃容姿で目立っていたと言う華々しさは微塵もない。


「お、おーい」


俺は数回呼びかけ方を揺さぶるとようやく彼女は意識を取り戻した。


「・・・ッッ!なに?あんなのでビビってないわよ。・・・耳が少し弱いのよ」


いつもみたいな感じで答えてはいるが、彼女の動揺は誰の目にも明らかだろう。


ってかそれ言い訳になってるか?


まぁいい。心臓に悪いしな、早く終わらせよう。俺はそう思い歩き出す。


「さ、進むか・・・ってどうしたんだ?」


隣で次をうながしても一切動きを見せない川霧はまるで何かを待っている子犬のような顔をしている。


・・・もしかして


俺は疑問に思いながら、2歩前に出て見るとーー


小さく一歩だけ前に進む川霧。


「おい、俺を見殺す気だろ?」


川霧はわざとらしい笑顔を浮かべて、らしくない優しい声色で応える。


「何を言ってるのかしら?」


「さっきまでの威勢はどうしたんだよ!」


「しょうがないでしょ怖いものは!男らしくリードしなさいよ!!」


なんて都合がいいやつなんだ・・・


俺は諦めて数歩後ろに川霧を連れて進む。


出てきた角を曲がると今度は引き出し付きの机が置かれている。


赤っぽい光が机だけに向けられているため周囲は先ほどよりも暗い。


その引き出しは少しだけ開かれており、机の上には「ゆっくり開けてね」と置き手紙がされてある。


「ど、どうしたの?」


すっかりひよわモードの川霧が肩を弱々しく掴みながら聞いてくる。


「なんか引き出しを開けろってさ。・・・いいか、開けるぞ?」


「ちょ、ちょっと待って―――」


俺は問答無用でその引き出しを開ける。


来るなら来い!!!


うっすらと目を開けるが・・・


中には何も入っていない。


川霧さんは俺の脇下あたりから顔を覗かせながら


「な、何が入ってたの?」


「い、いやそれが何にもなかったんだよな」


「ミスかしら!」


なんで若干嬉しそうなんだよ


どちらにせよ、特に何か起こる様子もないので俺は次の角を曲がるとーーー


「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!」


さっきの場所で絶叫が聞こえてすぐさま戻る。


そこにはへたり込む川霧がいた。


なんだか紅潮していて息も上がっている。


「い、一体何が・・・?」


その時、聞き覚えのある声が暗闇の中、不気味にうっすらと聞こえる。


「ハァッ・・ハァッ・・・リン・・・ヒヒ」


・・・これは随分なトラウマを植え付けられたかもしれない


間違いなく俺なら二度と立ち直れないだろう。


「立てるか?」


未だ床に倒れ込んでいる川霧から返る言葉はない。けれど、小さく首を横にふる。


「しょうがない俺がおぶるから――」


メシメシッッ!


ってのは冗談だ。てか今なにかが折れかけた音がしたぞ。怖すぎるだろ、藤堂先輩。


「か、肩を貸してくれれば。・・・多分大丈夫よ」


切れ切れの声で弱々しく言ってフラフラと立ち上がる川霧。


近づいて肩を貸すが、ずっしりと重みが伝わる。


かなり驚いたのか、今も力が抜けてるようだ。


俺はゆっくりと歩を進める。


いつもはたくましい川霧のここまで頼りない様子はかなり珍しくて、忘れがちだが俺と同じでまだまだ子供だと言う

ことを思い出しながら準備期間でのこいつの立ち振る舞いを思い返す。


会計の件といい一人で背負いすぎなんだよなぁ・・・


だから今だけは、こちらが背負ってあげよう。そう思い角を曲がる。


すると薄暗い両脇の照明に照らされた赤い手形がたくさんある風景が飛び込んでくる。


そしてどうやらこのエリアが最後のようだ。


これまでとは違う禍々しさに俺は気圧され息を呑む。


・・・もういっそコイツ(おもり)を置いて駆け抜けてやろうか。


そう思った瞬間、俺の肩にもたれる川霧から力が加えられる。


い、嫌だなー!冗談だって!!


「いいか、進むぞ?これで最後だからな頑張れ」


言ってゆっくりと一歩ずつ踏み出したその時


薄い鉄板を叩くような音がする。


急な物音にビクリとしてしまうが、そのまま進む。


――ピタ


「「――ッッ!!」」


俺と川霧さんは首筋に降ってきた冷たい何かに声にもならない悲鳴をあげる。それは今も首筋をたどって服の中に入

っていく。


季節もあってかなり冷たい。動悸が激しくなるが、気にせず前に進む。早く終わってくれ・・・


もう扉はすぐそこにある。


完走だ!俺はやっとの思いで扉に手をかける。


少しずつ開く隙間からは眩しすぎる光が逆光となるがーー


その光は遮られる。


爆音と共に。


――パァンッッ!!


「がぉぉぉぉぉ!!」


目の前ではクラッカーを携えていた麻耶先輩と思われる人物が骸骨がいこつのコスプレをして待ち構えていた。


「あ、あれ?がぉぉぉ!!」


「「・・・・・」」


「か、和樹?い、生きてる?もしもし〜?」


「・・・・」


「和樹?悪かったって!死なないで!!」


・・・!!


「縁起でもないこと言わないでくださいよ」


「あ、生き返った!どう、ビックリした?」


嬉しそうに先輩は両手を後ろで組んでニヤニヤしながら言ってくる。


「全然。10秒くらいしか心臓止まってないんで、まだまだですね」


「いやそれかなり驚いてるよね?漏らしてない?」


確かに今の俺は下半身がプルプルしているが別に尿意のせいではないので多分漏らしてはいない。


麻耶は今ようやく気づいたのか、俺の隣の彼女を見て嫌味らしく口に手を当てて笑う。


「いいなぁー凛ちゃん。和樹にもたれられて。羨ましぃ〜」


煽りの弱さに定評のある川霧は言われるや否やなんとか自分の足だけで自立する。


恐怖が抜けたのか、それとも麻耶の前だから強がっているのかはわからないが、いつもの様子で川霧は麻耶をいな

す。


「先輩は既に抱きついてるんですから気にしなくて大丈夫ですよ。それに、私はもっと頼り甲斐のある人が好みなので」


もう10周してこい、この野郎。


「冗談だよ、そんなにムキにならないでよ〜」


甘い口調な麻耶先輩とツンケンな川霧さん。


最初の会議室でのやり取りと変わらない口調なのに何故か俺は朗らかな気持ちになっていると、前方の扉からやけにツヤツヤとした藤堂が出てきた。


川霧さんはまるで何かトラウマを思い出したかのように顔を青くしている。


「凛!次は私と巡るわよね!?」


強引に手を取る先輩。


あ、もう不可避コンボの間合いに入ってしまった。


それでも一応の抵抗を見せる川霧。


・・・もう諦めろ。


「有栖、さっきくすぐったでしょ?そんな人となんか行かないわよ」


「もう!ツンデレなんだから!いくわよ!!」


手を引かれ、また入り口へと誘拐される川霧。


「あ、あなた!!」


またしても請うように目を潤ませる川霧を見て俺はーーー


「悪いな、俺頼りないから」


ピシャッ!!!!


すぐに力強く扉が閉められる。


よし、やり返せて実に清々しい気分だ!お化け屋敷最高だぜ!!


俺は爽快な気分で伸びをして、あくびを噛み殺していると、隣にいる麻耶がソワソワとしてから言う。


「か、和樹!!楽しかった?和樹が頑張ってくれた分の返しはできてた?」


大きな瞳は、不安と期待で大きく揺れていた。俺の言葉を口をギュッと結びながら、麻耶は待っている。


「はい。楽しかったっすよ」


びびってた川霧も見れたしな!


「ほ、ホント!?よかった〜・・・」


跳ねたかと思えば次に噛み締めるように呟いた麻耶の横顔は安堵と達成感に満ちていて、青春の顔とでも形容できそうな、澄み切った綺麗なものだった。


俺には、まだわからないけれど。


「そっか・・・。和樹に楽しんでもらえたなら他はいらない。頑張ってよかったよ、私。ありがとね!」


「いえいえ、それじゃ午後も頑張ってくださいね」


「うん!!お互い楽しもうね!」


気さくな笑顔で大きくピースを作って俺を見送る麻耶に背を向け歩く。


外を行き交う楽しげな人々を見ながら俺は、一人思う。


・・・楽しい文化祭は、ここで終わりだ。

少しでも面白いと思ってくださる方は、厚かましいですが、ブクマ、評価、感想等で応援してくださるとありがたいです。皆さんのおかげで頑張れますので・・・

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