ドキドキお化け屋敷☆
入った教棟は二年生のもので麻耶達がそうであったように他のクラスも思考を凝らした出し物なだけあってか、一際盛況のように見えた。
その様子を尻目に適当に見て回ろうと階段を上がっていると、頭上から涼しげな声がかけられた。
「あら、お疲れ様。」
「そっちは見回りか。大変そうだな」
川霧の腕には生徒会の腕章があるのでおそらく業務中なのだろう。
キャンプファイヤーの時以外はこうやって生徒会が見回りをするようだ。
「えぇ。まぁ一人でいるだけだし苦ではないわね。それに出し物に参加してもいいらしいしね」
「普通一人の文化祭って時点で苦だと思うけどな」
「随分自分のことを棚に上げるのね、ボッチ君?」
片眉を上げる川霧。ここまで煽り耐性がないのも面白いな
「それに私は効率のいい見回りのために一人でいるだけよ。それじゃ、私は業務に戻るから。精々一人で楽しむことね」
早口で捲し立て、下り階段に一歩踏み入れ、俺を抜こうとしたその瞬間!
「あ!」
後方から聞こえた大きな声に川霧は肩を震わす。
誰だ?
俺は振り返る。
「やっぱり凛じゃない!?凛!!こっちきてー!!」
後方に伸びる廊下の突き当たりの教室の扉から体を出した後に、鼻息荒げ詰め寄りながらラブコールを送る藤堂の姿があった。
あの人、川霧が関わるとどうしてあんなにも残念になるんだ、、
藤堂は川霧の手を強く両手で覆う。
「凛!私たちのお化け屋敷きてくれるわよね!?」
目を輝かす藤堂とは対照的に面倒臭そうな川霧は渋っている顔を藤堂に見られまいとそっぽを向きながら答える。
「で、でも私は業務中だし」
川霧がそんな建前を並べるので、俺は優しさのつもりで小言を付け加える。
親友の藤堂に嘘はいけないなぁ、川霧
「さっき出し物に参加できるって言ってたぞ」
「あ、あなた!?」
「なら来るしかないわよね!さぁ、行くわよー!!」
川霧の手を無理やり引いてルンルンに歩き出す藤堂と必死に線の細い体で抵抗する川霧。
そこには数日前まで険悪だった空気はない。きっとあれが本来の二人の関係なのだろう。
俺はつい口が緩んでしまう。・・だってーー
川霧が異様なまでにビビってたからな!!
二人の後ろを俺も藤堂よろしくルンルンで追いかけると、乱暴に川霧は教室に投げ込まれた。
もう既に開かれたお化け屋敷の扉の先は薄暗く、中にいるはずの川霧さんの様子は見えない。
廊下から様子を伺っていると、ヒソヒソとした声量の言い合いが聞こえてくる。誰でもない麻耶と藤堂のものだった。
「有栖!あなたは店番でしょ!?」
「お願い!そこをなんとか!だって凛がきたのよ!?」
おそらく藤堂が川霧に同伴したいと駄々をこねているのだろう。
俺としては早くビビる川霧が見たいので早く始めてほしい。できることなら一人で入ってほしいな、そっちの方が絶対面白い。
そんなことを考えていると、扉からゆっくりと川霧さんが息を殺して出てきた。それこそ幽霊のように
「あれ、終わったのか?」
「そんなわけないでしょ。有栖が揉めてるから今のうちと思って抜けてきたのよ。私暗いとこは苦手だし・・」
いつになく弱々しいその感じからさっきとは違って逃げるための建前ではなさそうだ。
「そうか、それは残念だな」
「な、何がよ」
川霧さんは少し潤んだ目で俺を睨む。
「だって、もう魔の手が――」
暗闇から顔を出した藤堂は脱走した川霧の手を再び掴み、彼女を一瞬で暗闇に引き摺り込んだ。
合唱、礼拝。
俺が目を瞑ったその瞬間―――!
手を引かれ、気が付くと俺も暗闇の中にいた。
なんだこれ!?ワープしたかと思ったぞ、マジで。
廊下から見ると薄暗いだけであったはずの教室は思いのほか暗い。
「・・・あなたも巻き込まれたのね」
「おい、急に喋るなよ。ビビっちゃうだろ」
どうやら右にいるらしい川霧に言う。
次第に目が慣れ、なんとか彼女の影が見えるくらいになってきた。
その影はやけに気丈に言い放つ。
「まぁサクッと終わらしましょう。こんなのただの出し物なんだし」
なんだろう・・・すごく嫌な予感がするんだけどそのセリフ。
少年誌の、やったか!?並みに嫌な予感
けれど、それを言ってしまえば今度こそ本当に予感が当たってしまう気がしたのでグっと噛み殺す。
川霧の進む足音を辿っていった・・・




