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彼と彼女はすれ違い続ける

きたる文化祭当日!!


賑わう校内には、看板を持って客引きをする生徒、見せつけるように腕を組んで歩く生徒、クラスの出し物に興じる生徒ーーー。


「ねぇ、早くこれ貼ってよ」


「あ、はい。すいません」


女子に冷やかに指示される俺・・・


昨日、俺はつい会計の仕事と帰る間際に生徒会に立ち寄ったせいで仕事疲れが半端ではなく家に着くなり倒れるようにして数時間眠ってしまった。起きた時には日が変わるかどうかの時刻だった。そこで茉白に焼きそば屋を手伝ってもらうよう頼んでいないことを思い出し、急いで茉白に電話をかけるとその突然さを茉白に叱られたがなんとか協力を仰ぐことに成功した。


「まさか出店をやることになるとはね。まぁクラスの出し物もこんな感じだけどさ」


茉白さんはいつものゆったりとした口調で、焼きそば屋と書かれた旗を組み立てながらいう。


「ホントすんません」


「いいよ、私暇だったし。こう言うのも文化祭ぽくて楽しいしね」


言って、値段と焼きそばの絵が書かれた加工された紙を貼っていく茉白。


「でも会計の仕事間に合ってよかったね。朝日さん、顔色が悪くて心配だったけど」


何も考えてなさそうな茉白ですら朝日の変化に気づくほどに彼女の様子は変だったらしい。


その気づきは朝日が無理をしすぎたせいか、それとも意外に茉白の人の変化がわかる目のおかげなのかはわからない。


まぁ容姿も成績も人間関係も、ザ・平凡な茉白のことだ。きっと前者だろう。


「・・・今失礼なこと考えたよね?」


「ハハッ!滅相もない」


「・・・色見くんもだからね?」


ややむくれている茉白。・・・意外に人間の機微に敏感なのかもしれない。


貼り作業も終わり、周囲を見回すと時刻も昼が近づいているからか、飲食の店の多いこの辺りのスペースには徐々に流れてくる人間の量が増えていた。


もう作り置きしとくか、そう思い食材の袋を開けようと手を伸ばすと


「あ!色見くん、依真ちゃん!!お疲れ様―!」


まだ働いていない俺たちに元気に寄ってくるのはついさっきまで話題になっていた朝日だ。


よく眠れたのかその顔に昨日までの疲労感は見えない。


「二人とも、おとといはありがとうございました。本当に助かりました」


「これに懲りて安請け合いなんかするなよ」


茉白と同じで、な。


「あはは、確かに今回は頑張りすぎたなーと反省してます。・・・ただ、奈々ちゃんを見てると他人事のようには思えなくて、つい」


表立って目立つのが好きな泉と、人のために裏方に徹して身を滅ぼしかけた朝日はそう言った意味では対照的であるように思うが。


まぁ、もし困っている人間が正反対の人間であったとしても朝日はきっと手を差し伸べるのだろう。理由はなく、ただ助けたいからというまっすぐな思いで。それが朝日陽凪なのだ。


純真な優しさを持つ彼女は俺に微笑みかける。


「色見くんも同じですよね?だから自分のことで大変なのにも関わらず凛ちゃんも奈々ちゃんも助けたんでしょ?みんなのために頑張る二人を支えてくれたんですよね。優しい色見くんが居てくれてよかったです」


殊勝な面持ちで呟く朝日に瞳を覗き込まれたような感覚になり、俺はつい視線を外す。


「・・・そんなんじゃねーよ」


「ふふ、そっか・・・。良い文化祭になるといいですね!!お互い楽しみましょうね!」


校舎の方に駆け出しながら、元気に手を振る朝日を二人で見送ると、グラウンド側が騒がしいことに気付く。


そこには多くの客が昼ごはんを求めにきている姿が。


俺たちは具材を鉄板の上に広げる。


「それじゃ、私たちも頑張ろっか」


「そうだな」

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