友達のために
俺は今いつもの放課後、会議室・・・ではなく第一教棟三階の廊下である。この階の下には自教室が、一つ上には過労死寸前で働いている会計係の仕事場、会議室がある。
なぜ俺がこんなところにいるのかというと、サボりではなく、ある人を待っているのだ。待ってると言っても連絡とかは入れていない。だから絶対通るはずのここで時間を潰している。
「あれ、色見くん」
「朝日さんか。ちょっといいか、話したいことがあるんだ。空き教室でいいか?」
「は、話したいこと!?う、嬉しいけど、私には大事な仕事が・・・!!」
「いや、仕事に関することだから」
「あ、はい」
しょんぼりと後ろをついてくる朝日と空き教室に着くと、俺はあいつは来ているだろうかと心配しながら扉を開ける。
「・・・遅かったね」
「朝日さんに言ってくれ」
「え、依真ちゃん?」
机に突っ伏して寝ていた茉白依真が目を擦っているのをみて朝日は目を丸くしている。朝日には悪いが茉白がここにいることに安堵しながら俺は席に座る。これに朝日も続き、茉白のとなり、俺の体面に座る。
「朝日さん、仕事は大丈夫か?」
「は、はい!大変ではありますけど、順調です!!」
・・・やっぱりか
「・・・でも、体調は良くなさそうだよ?」
「大丈夫、最近いつもより寝てないだけだし!」
気丈に振る舞っている彼女はぎこちなく愛想笑いをしている。
これじゃ埒が明かないので俺はさらに追求する。
「なら質問を変えようか。泉に対してどう思ってる?」
「・・奈々ちゃんですか?頑張ってると思います。皆さんには人任せに映るかもしれないですけど、裏では学年の出し物の指示したり、委員長の資料まとめだったりを全部一人でこなしてるんです。だから、せめて奈々ちゃんが苦手なこういう仕事は私も頑張らなきゃって思います。せっかく頼りにしてくれたんですから!!」
ガッツポーズで笑う彼女はまるで自分を奮い立たせているようにも見えた。
そして、先の発言に嘘があるようにも聞こえなかった。朝日の言うことだ、おそらく泉は俺たちが見えないところで全力を出して彼女なりの貢献をしていることは間違いなさそうだ。
「どうしてそこまで泉に肩入れする?」
「え?・・・どうしてって、友達だからですよ。それ以外に何があるんですか」
「朝日さんがお人好しなのは知ってる。それでも友達のために自分をボロボロにしてるのが気になってな。何か特別なことがあるんじゃないかって」
「そ、そんなこと・・・」
「・・・自分のためか」
「・・・!」
大きく目を見開く彼女の様子は俺の予感が的中だったと告げる。であれば、この後の俺の話はスムーズに聞いてくれるはずだ。
「まぁ、そんなことはどうでもいい。俺が受けた依頼は文化祭を成功させることだしな。・・・だから朝日さん、仕事を俺と茉白さんに分けてくれ。大丈夫、川霧さんには言ってないし、言うつもりもない。俺たちだけの秘密だ、いいだろ?」
考え込む朝日に念を押すように付け加えた俺は、チラリとこちらをみた朝日の目を見つめる。
しばらく俺と朝日の視線だけのやり取りが明けると、観念したように朝日は呟く。
「わかりました、お願いします。・・・凛ちゃんには言わないでくださいね、断っちゃったんで」
「わかってるよ」
「あのー、私には否定する権利ないのかな」
「仲間を見捨てるのかよ」
「はぁ・・・わかったよ。ただ放課後空き教室に来てくれって久しぶりに言われてきてみたら急に私には確認もなしに労働することになったから少しムカついただけ。それに朝日さんは友達だしね」
朝日の方を向いて微笑む茉白とそれに応えるように嬉しそうに笑う朝日。
それを無表情で見る俺
・・・俺は?・・まぁいいけどさー!!
俺は少しいじけながらも早速仕事に取り掛かる。
「朝日さん、資料分けてくれ」
「あ、わかりました。じゃー、これお願いします。依真ちゃんはこれお願い」
どっさりとした資料を見て、ほんの少しだけ茉白の顔が引き攣った気がするが気のせいだと言うことにしよう。
俺たちはそれから完全下校時刻まできっちりと働いた・・・
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