ご褒美は突然に!
「失礼します」
「どうだった!?」
空き教室に入るや否や、距離をギュッと詰めてくる麻耶。
近い近い、いい匂い・・・って違う違う
「離れて・・・。えっと、まぁ、先輩のクラスの出し物はお化け屋敷になりました。ただ詳しいことはーー」
むにゅっと柔らかな感触が胸の下あたりに押しつけられ、俺は脳がショートする。
・・・ナニ、コレ
「ありがと、後輩くん!!名前は?」
「し、色見和樹です・・」
「和樹、あんたってやつは!!」
このこの、と麻耶は背伸びをして俺の頭をわしゃわしゃとしてくる。
余計に密着して、これ以上は俺の体がーーー
「何をしてるの」
吹雪のような冷たさに俺は反射で否定を叫ぶ。
「これはちが!!」
「いいから離れなさい・・・ッ!!」
川霧は詰め寄って全力で俺の足を踏んできた。あまりの痛さに俺は全身をバネのように跳ねさせて、傷を抑える。
そこまでしなくても・・俺からしたわけじゃないのに・・・
川霧は咳払いをすると、お手本のようなお辞儀を先輩たちに向ける。
「先輩方、この度はすいませんでした。私の実力不足なばっかりに。スケジュール的にも厳しいのは承知ですが、先輩たちがよければ・・その」
「何硬いこと言ってんのよ!・・・凛、私たち中等部からの仲でしょ?」
「・・・うん」
微笑む川霧の顔はこれまでに見たことないほどに幼く、可愛らしく見えた。
「まぁ、でも〜?勝手に焼きそば屋にしたことは怒ってるけどね!」
「こら麻耶やめなさいよ、過ぎたことだし」
「いいのよ有栖。私が悪いんだから。我ながら子供じみたことだったと反省してる。ごめんなさい」
「いいわよ、可愛い後輩ちゃんだから特別ね!!」
言って楽しそうに笑い合う三人には、もう陰りは一切見えなかった。
側から見ていても心が温かくなるほどに美しい友情は、この空き教室は照らしているような錯覚すら覚える。
・・用は済んだな。そう思った俺は水を刺さないよう静かに教室を出て、校舎を出た。
眩しく変化した空き教室から暗闇の校庭に出ると、俺の心は分かりやすく落ち着いた。
その事実に気づいて俺は、自分の言葉を思い出す。
成長は変化、か。
ずっと暗闇が居場所の俺は、成長をしたことがない。
少なくともこれまでの人生でその必要性を感じたことがない俺に、変化の機会はくるのだろうかとなんとなく考えながら、帰路に着いた。




