似たもの同士は睨み合う
「・・・自分を、可哀想だと慰めるのはやめにしろ」
言葉は宙に漂って、誰に言ったかわからなかった。
けれどこの言葉に川霧は目を大きく見開くと、フラフラと椅子に座りこんで顔を伏せる。自分で言っておきながら俺にもダメージがあったということは、それは彼女も同様なはずだ、俺たちは似たもの同士なんだから。
「まず麻耶先輩のクラスはお化け屋敷に変更してもらう」
「だからもう予算は焼きそば屋でとってーー」
「焼きそば屋に関しては俺たちがやるよ」
俺の思いつきだし、どうなるかはわからない。最悪、俺一人で切り盛りくらいできるだろ・・・多分
「俺たち?」
川霧さんは、確認のために繰り返す。精神的に参っているのか、頭の冴えが良くない川霧に俺は情報を付け足す。このまま不都合な部分に気づかれないように
「裏生徒会で引き受ける。それでいいだろ?」
「でも、それじゃ名簿と違うし、何よりあの外の場所は三年C組の場所なのよ?それを簡単に――――」
まずい。そう思った瞬間、だらしない声が割って入る。
「場所なら、私がどうにかしよう。」
まるで測ったようなタイミングで会話に入ってきた成美未果はだらりと窓枠にもたれかかっている。
「私の方から、掛け合ってみよう。安心しろ、私は優遇されてるからな。問題なく使用できるさ」
何が楽しいのか、疲れが前面に出ている顔を歪ませている。
って言うかそれ、面倒くさがられてるだけだから・・・
「だそうだ。で、会計の方はどうすんだ。」
そう、結局はここに問題は帰着する。
俺と麻耶先輩たちがそれぞれで活動をすれば、先の通り皺寄せは最も会計係に来る。
ただでさえ忙しい会計係にさらに負担がかかる。きっと本当にこのままでは川霧はダメになってしまうだろう。
だからこそ・・・
ここが一番大切な分岐点だ。
頼む、俺の望む通りに行ってくれ。と自分本位に強く願う。
川霧さんは俺の真意を理解しているのかわからないが、下唇を甘く噛んで視線をやや伏せ考え込む。
重苦しい雰囲気は体感時間を長くして、嫌な緊張感はずっと俺の背中にこびりつく。
ようやっと川霧さんは小さく口を開くが、勇気が出ないのかもう一度紡いで、また開く。
「・・・私たちでやるわ。」
私たち、か。
その言葉を聞いて安心した俺は体を翻し、扉に向かう。
すると俺の背中におどろおどろとした声が飛んできた。
「その、麻耶先輩に・・・」
「自分で言えよ。空き教室にいるから」
きっとそっちの方が先輩達も喜ぶだろ。なんせ、何年越しの仲直りなんだから
仕事を終えた俺は廊下に出て会議室から少し離れると、ついてくる後ろの足音に尋ねる。
「先生、狙ってました?」
「さぁ?なんのことだか」
苦しい返しに、俺は苦笑する。
「やっぱ性格悪いっすね」
「あぁそう思うよ、我ながらな。・・・一方で」
先生は謎の間を開けるから、気持ち悪くて先生の方を見る。
「いい教師だと思うよ。」
柔らかい、生まれたての子を見るような暖かな笑顔を浮かべていた。
俺は気恥ずかしくて顔を正面に戻す。
「なら、もう少し仕事してくださいよ。」
「大仕事を終えた後だ。少し休んだらな」
「・・・そうですか。・・空き教室いってきます」
俺は先生に別れを告げると窓越しの部活動の様子に目を向ける。成長のために必死に汗を流す生徒たちの姿は俺には眩しすぎる。
成長は変化だ。
窓に映る俺は自虐気味な笑みを浮かべていた。
「色見」
なんだろうかと、先生に呼ばれて振り返る。
「私はお前を選んで正解だったと思うよ、心から」
・・・俺はその笑みのまま、適当に会釈をしてから、また歩き出した。
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