霧では隠せぬ因縁
暇つぶしになればうれしいです
それからの放課後は、会場設営の仕事が終わると急いで会計係のいる会議室に移動し泉の仕事を進める日々が続いた。
泉が本当に学年長としての仕事をしているのかは知らないが、少なくとも会計の仕事の進捗は他の生徒のと比べると頭が痛くなるほどに遅れていた。それもそのはずで、基本的に会計の仕事は少量ずつを、自分の仕事を終えた他の生徒に流していたためだろう。他の生徒とて自分の仕事で一杯一杯なので、泉にまで手が回っていなかったのだろう。
いやだなぁ、就職するとこんなクソ上司に溢れているのだろうか・・
今回は自分の意志で他人の仕事をやっているからまだしも、急に上司とかから仕事流されたりしたら俺は発狂しかねない。今回の件で身に染みた。俺は社会のために家にいるべきだ。
まぁ、今ではその家ですら文化祭の仕事してんだけど。・・・待て、俺意外と社畜の適性が・・・!
望んでもいない才能に俺が落胆しながら、今日もモヤモヤとした感情を抱きながら会計の手伝いに行こうと廊下を歩くと、甲高く人を刺すような怒りに満ちた叫びが響く。
「ふざけないで!!このバカ!」
周囲の騒ぎに気づき、俺は声のする方に走ると、そこにはへたり込む摩耶とそれを介抱する藤堂。その二人を冷たく見下す川霧の三人と、それを遠巻きから見ている生徒たちがいた。
「もう時間がないんです。それに担当のクラスの先輩に許可はいただきましたし、なんの問題もないと思いますが?」
「大ありよ!ほとんどお化け屋敷で決まってたのに!!」
さっきよりも声が震え、泣き出しそうな声だ。
「なら、より問題では?これ以上遅延されては困りますし」
対照的に淡々と先輩の追求をいなす川霧。
麻耶はその態度が許せないのか小さな肩を揺らし、力一杯に叫ぶ。
「邪魔しないで!!私たちの最後の文化祭なのよ!」
言うや否や麻耶は泣き崩れるが、それを藤堂に支えられ、なんとか立ち上がる。
これほど感情を向けられても川霧は動じない。
「すいません、仕事があるので失礼します」
川霧は機械のように綺麗な礼をして、階段へと向かっていく。
藤堂は彼女の名前を呼びはしたが彼女が振り返ることはなく、藤堂はただ辛そうに顔を伏せるのみだった。
俺は人の間を抜けて、摩耶の背中をさする藤堂に近づいて
「先輩、大丈夫ですか?」
二人を見ると麻耶は憔悴し切っており、藤堂も心労で眉間に皺が寄っている。けれどそこには怒りは見えず、心苦しさしか見えない。俺の質問に藤堂は切なそうに笑って答える。
「大丈夫。ごめんねうるさくして」
「全然。あの、何があったんですか?」
尋ねると、藤堂先輩は麻耶先輩の方を心配そうに見てから提案する。
「私たちも落ち着きたいし、空き教室でもいいかしら?」
茉白がいるのではと気にかかったが、断ることもできず、俺は首を縦に振る。
教室に行く道中、摩耶の花を啜る音だけが虚しく響いていた。
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