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成美未果は教師である

昼休みに空き教室でご飯を食べるのがあれからすっかり習慣になった俺は、今日も空き教室で空腹を満たす。


文化祭準備が始まったこともあって、ぼんやりと考えるときに頭に浮かぶのはどうしても仕事の事だった。


これがあれか、休日でも取引先との電話におびえて休んだ気にならないって現象か・・恐ろしい・・


億劫な気分でパンをかじると、静かにドアが開く。けれどそれに俺が驚くこともない。どうせ誰かは決まっているから。


「はやいね、授業終わったらすぐ行っちゃうんだもん」


「別にやることないし、これが普通だろ」


茉白は対面にある椅子に腰を下ろし、弁当箱を開ける。


あの日偶然昼を一緒にしてから、茉白はたまにここを訪れるようになった。彼女には教室で一緒に食べている人がいることを考えれば毎日来るわけにもいかないし、そもそも俺とそこまで親しいわけでもないので若干彼女の行動に疑問を感じてはいるが、互いに静けさを求めた妥協点というところだろう。


茉白は小さな弁当に詰められた具材を食べて質問してきた。


「どうだった、準備。働けてる?」


母さんかよ・・・と内心ツッコむ。


「なんとかな。でも川霧さんが心配だな・・」


「どうして?」


目を俺の方に上げる茉白にどう説明しようかと少し悩む。


問題点は三つだ。


まず俺と川霧の関係がよくない。というか、一方的に川霧に切れられてるといった感じだ。次に彼女一人で仕事を抱え込んでる点。始まってまだ間もないというのに彼女の隣には多くの資料があることを見れば、仕事の配分を自分だけ多くしているように見える。次にあの人の性格だ。やると決めたらやり抜くタイプだろし、人に頼ることはしなさそうに思える。


言い換えれば頑固。・・・それも油汚れ並みの


「まぁ、天邪鬼だからな、あの人」


「びっくり。ずいぶん自分を棚に上げるね」


はは、と乾いた笑いで茉白の口撃をいなす。


するとガラリと、今度は強めに扉が開かれた。


これは予想外であるので二人で扉を向くと


「おー、青春、青春。眩しすぎてクラついちまったよ」


「それ寝不足だと思いますよ、成美先生。どうしたんすか?」


頭を品なく搔いている先生は、大あくびをしてそこに立っていた。


やがて伸びが終わると先生は俺の方を見る。


「色見、どうだ準備は働けてるか?」


「順調ですよ」


「そうかそうか、それはいい。お前に追加のミッションをやろうと来たんだ」


ニヤリと口角を吊り上げた先生は、ビシッと俺に指をさす。


「川霧の手伝いをしろ。私の見立てでは今の仕事量は彼女に見合っていない。あれはよくない・・・ってずいぶん嫌そうだな」


それもそのはず、思い出されるのは初めて会った日の事。


「だってあいつ『進級が危うい人に頼るのは心外だわ 』って」


「あれだ、なんだ。ツンツンってやつだろ。あと色見、その物まねほかでやるなよ?」


「うん。私、手が出るかと思ったよ」


「そんなにか!?」


自信があったんだがな・・・


成美先生の冷評にへこみながらも、俺は不服だと先生を見る。


「でも、それがアイツのやり方なら、それに手を出すのは無粋ですよ」


それを聞いて先生は鼻で笑う。けれど嫌な感じではなく、子供の詭弁を笑うそんな感じだ。


「なんだ、天邪鬼同士の同情か?心外だな、私は個性を伸ばす教育方針なんだが。・・・まぁいいさ。色見、お前はどうせ手を貸すさ。君はそういう人間だ」


それじゃと成美先生は片手をひらりと上げ、格好よく教室を出ていく。


見透かしたような態度が、ひどく俺の気に障った。

読んでくださってありがとうございました!

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