男は単純
「暇だね」
「暇だな」
藤堂が空き教室に来たあの日から、朝日は泉の手伝いに、川霧は文化祭の準備に行ってしまったため放課後の空き教室は最近では俺と茉白の二人だけである。
もちろん仕事がある訳でもないので来なくてもいいのだが、適当に課題や時間を潰すには最適な空間とだけあって、毎日ここで顔を合わせている。
まぁ同じクラスで挨拶は毎日しているのでここに来なくても顔はいやでも合わせているのだけど。
「そろそろだよね、仕事」
茉白の言う仕事というのは、言うまでもなく藤堂による依頼の件である。「人手不足の文化祭の運営を手伝ってほしい」という話で、委員会も今日から本格的に準備が始まるので藤堂が呼びに来るのを待っていると言う状況だ。
「でもさ、本当にできるの?正直色見くんがいろんな人と行事を成功させるってのが現実味ないっていうか、不可能っていうか・・」
「その二つ同等じゃないからな?最後のははっきりとした否定だからな?大丈夫だろ、ほら、実際俺の活動の成果で茉白さんが仲間になったんだし。人付き合いは上達してるだろ」
「その私が不安だって言ってるんだけどな・・・」
ブツブツと文句を垂れる茉白をよそに考えるのは、最後に川霧と出会った時の呟きだった。
『結局、私たちは一人ぼっち同士なのね』
悲しげに遠くを見ていたあの横顔が、あの時から脳裏にずっと張り付いていた。
あの物憂げな視界には一体何が写っていたのか、どれだけ考えようにもわからない。
だって俺は彼女の言葉によれば一人なのだから。
川霧のせいか、目前に迫った仕事のせいか、気づけばため息が漏れる。
すると、ちょうどその時、ドアは軽快なノックの音を響かせて開く。
「色見くんは・・・っていたいた。ごめんなさい、待たせちゃったわね」
「いや、全然」
短く言って俺は席を立つ。最近座りっぱなしだったからか腰が重かった。
荷物を持って藤堂の待つ廊下へ向かうと、後方から声がした。
「行ってらっしゃい。頑張って」
「・・・あぁ」
俺はほんの少しだけ、前向きに取り組んでもいいのかもしれないと思ってしまった自分の単純さについ鼻で笑いながら、空き教室を後にした。
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