当たり前ほど壊れやすい
選挙が終わった次の日。
あんなことがあっても多くの生徒はまるで昨日のことを忘れたように生活をしている。
俺もあんなことがあったにも関わらず、朝日の態度がいつも通りなために、いつも通りの生活を強制されている。
自教室へと向かう廊下で、俺はふと掲示板に目を引かれる。
選挙結果:会長 川霧凛 副会長 泉奈々
大体そんな感じで書かれた掲示物をマジマジと見る。
別に、もうそれを見て朝日のことでひどく自分を嫌悪したりなんかはしない。
ただその掲示の何かに強く引かれているようで俺は動けない。
「放課後、生徒会室に来て」
だから、その声が自分に投げかけられているとは分からず遅れて俺は振り返る。
「・・・川霧」
心臓を掴まれたような、そんな冷たさを感じて俺は言葉に詰まる。
そんな俺の脇を颯爽と川霧は通りすぎる。
こちらに目もくれず、何も言わずに。
たなびいた黒髪を追いかけるように振り返っても、川霧はただ前だけを見て凛と去っていった。
気づけば彼女との距離は一瞬で開いていた。もう時期に、見えなくなる。
―――
「か、和樹くん!」
「・・・あ?」
「あ、機嫌悪いです?」
「悪い、そんなんじゃない。どうした、朝日?」
昼休み、川霧のことを思い出していると、やけに緊張気味な朝日が声をかけてきた。
視線は落ち着かず、手先を、こう、にょもにょもしてる。なんだよその動き・・・
「ご、ご飯って誰かと食べますか!」
「いや、別に一人だけど」
「へ、へー!私もなんです!!」
そう言って朝日は俺の隣の席に座る。
いやいや、その席の子困るでしょ?
そんな考えは一切ないであろう朝日はあくせくと弁当を開いていく。
その姿を見ていると、どうしても最近の放課後の姿を思い出してしまい俺はつい苦い顔をしてしまう。
「あの、私もいいかな」
「依真ちゃん!ぜひぜひ」
言って朝日は自分の座っている椅子の半分に空きスペースを作ってそこを叩く。
流石に無理があるだろ
それは茉白も思っていたようで周囲を見渡して悩んだそぶりを見せる。
これ以上他の人の椅子を奪うのも気が引けるし、かと言って立ったままなのもと言ったところだろうか。
「ここ使うか?」
「えっ、でも」
「俺パンだし、壁際に持たれて食えるし」
説得も面倒なので俺は席を立って着席を促す。
すると茉白も観念したのか「ありがと」と言って席に着いた。
「私たち、このクラスで集まるのは初めてだからなんだか新鮮だね!」
「確かにね。色見くんが誰かと一緒にいるの、新鮮かも」
「おい話聞いてたか?『俺たちが』集まってるのが新鮮だって話だぞ?」
茉白のいじりに呆れた態度をとりながら、俺は内心感謝する。
だってつい昨日フったばっかだぞ?そんな朝日と一緒にご飯とか罪悪感で死んでしまう。
・・・心なしかさっきからパンの味もしない
「朝日さん、改めて、選挙お疲れ様」
「あはは、ありがと。結局演説もできなかったけどね」
「ううん。目標のためにあそこまで頑張れるだけですごいよ」
・・・胸が痛い
「まぁでも、一緒に頑張った思い出ができたし、全部が悪い思い出ではないかなって」
『ね?』と朝日は俺に視線を送る。
それに俺はどちらともつかない態度で返す。
なんと言うか、偶然なのだろうけどさっきから俺の罪悪感を突くような会話が多くて変な声が出そうになる。
挙動不審な俺に不思議そうな態度のまま茉白は続ける。
「朝日さんは書記になりたいとかって考えてるの?」
「うーん。どうだろ、今は正直先のことはあんま考えてないかな。ただ凛ちゃんが会長になったわけだし、一緒に何かやるのも面白そうだなとは思うかな」
「あのなぁ、裏生徒会とは訳が違うんだぞ?」
「そんなことわかってます!てかなんで私の応援係だった和樹くんが否定的なんですか!?」
いや、ほら会長なら他の役員が補佐してくれそうだからまだいいけど、お前が補佐側に回るのは心配だろ。
・・・でも、確かにこれを俺が言うのはなんというかマナー違反だな。緊張してるんだから変に会話に入ろうとするのやめよう。だから茉白さん、そんな目でみないでくれる?怖いよ、それ。
「・・・じゃあ、色見くんはどうなの?」
「ないな」
「だろうね」
えっ、ひどくない?
ちょっとボケの意味も込めての即答なんだけど、茉白は冷たく相槌を打つだけでもぐもぐと卵焼きを食べている。
「逆にお前はどうなんだよ」
「私?」
不思議そうに小首を傾げる茉白。
「いや、書記は会長が選ぶんだから川霧と関わりのあるお前も候補にはあるだろ」
「あー、そういう」
納得したように小さく首肯すると、茉白は食べ終わった弁当を片付け始める。
程なくして片付け終わると、茉白は立ち上がりながら言った。
「私は、なれないと思うよ」
それだけ言い残すと茉白はロッカーへと向かっていった。
その背中は、いつもより遠くに見える。そんな気がした。
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