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メイワク

 あの時はおかしかった。


 朝日にずっと手を握らせたり、自分から朝日にクレープを恵んだり、色々おかしかった。

 いや、それ以前だ。そもそも、どうしてあの時に他の生徒に見られていることを想像しなかったのだろうか。


 俺は扉を開けた瞬間に注がれる好奇の目に刺され、俺はそう後悔した。

 ☆☆☆


 俺は素晴らしい反射神経でその視線から逃げるように俯く。

 そしてそのままに俺は自分の席へと向かう。

 ここは本でも読んだふりして・・・


「あ、あの。和樹くん。ちょっといいですか」

「え?」


 振り返ると、そこには顔を紅潮させた朝日が。

 こいつ、なんで面倒を起こすんだよ!?


「え、えっと。今じゃないとダメですか?朝日さん」


 頼む、空気を読むんだ!朝日凪!!


「えっ、なんでそんな・・・」


 純粋に、悲しげに目を潤める朝日。


「ごめんなさい、迷惑でしたよね」

「あぁ、もう、ほら行くぞ!!」


 周囲からの侮蔑の目から逃れるよう、俺は朝日の腕を取り足早に教室を出た。

 ☆☆☆


「あ、あの!」


 焦りで一杯一杯だった俺は、その声で足を止める。


「ち、ちから。ちょっとだけ、優しくしてください」

「わ、悪い!」


 俺は急いで手を離すと、周囲をキョロキョロと確認する。

 よし、誰もいないようだ。


「で、話ってなんだよ」

「あっ、その実はなんですけど、昨日のその・・・帰り道に和樹くんとクレープ食べてるの見られてたみたいで・・・」

「まぁ、だろうな。はぁ、俺の平穏な生活が・・・」

「す、すいません。私のせいで」

「あー、いや。そこまで気にしてないぞ」


 実際、俺がどれだけ好奇の目を向けられようが他人と関わりがない以上、俺自身は攻撃を受けないだろうが、問題は朝日である。

 こいつは一様校内でも人気な女子生徒なのだ。そんな朝日が俺と帰っていたとなれば、まぁそれはいい話題になるに違いない。


「まぁ、その、あんまムキにならないことだな。適当言われても受け流すんだぞ」

「・・・」

「どうしたんだよ」


 無言で拗ねたように睨んでくる朝日に俺は戸惑う。

 もしかしてもう実害が出たのだろうか。それであれば他人事な物言いにむかついても仕方がない。


「悪い、配慮が足りなかったな。」

「はい、まーったく足りてないです!猛省してください!!」


 くるりと俺に背を向ける朝日。

 一体どんな仕打ちをされたんだろうか。恐ろしくて考えたくもない。

 俺が朝日の被害を想像し身震いしていると、朝日は俺の方を決して見ないまま、ポツリといった。


「メイワク、でしたか?」


 それが一体何を指すのか、俺には分からなかった。

 昨日一緒に帰ったことなのか、それとも根拠のない噂話に巻き込んだことだろうか。


 俺には分からない。


 だけど


「それはない」


 これだけは強く言える。

 それこそ、俺みたいなボッチが朝日なんて人気者との噂が立つなんて、ある意味では名誉なことだろうし。

 そもそも今回で一番の迷惑を被っているのは、朝日凪、彼女自身なんだから。


「・・・本気ですか」

「あぁ、大真面目だ。そもそも、朝日みたいな女子と噂されるなんて、俺からすれば見に余る光栄だよ」


 肩をすくめ、ふざけた調子で俺は言う。

 そもそも一年前は俺はずっと一人だったわけだし、それを考慮すればこんな風に噂話に上がるほどに認知度を上げたと言うのはそれなりの成果とも言えるのだ。


 何も悲観的になることはない。


 そう思い改めて朝日の後ろ姿を見る。

 眩しい朝の明かりは俺たちを照らしている。

 俺の言葉を聞いた朝日は、久しく俺に向けていなかった体の正面を向けると、


「全く、嬉しくない」


 それだけ言うと、朝日は俺の脇を通り過ぎていった。

 俺はその様子が信じられなくて何も言えずに立ち尽くす。

 

 なんで、

 

 どうして、お前は


 泣いてるんだよ

 

 キラリと光った目元が忘れられないまま、予鈴のチャイムは、騒がしく登校時間の終了を告げた。

少しでも続きが気になる方はブクマや一言でもコメントいただけると嬉しいです!

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