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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

あなたと食べるふたりご飯。

クリスマスのごちそう

作者: 真柴理桜

 朝。冷たい空気に包まれた部屋の中で奈々は目が覚めた。

 寒さに震えながら布団の中に潜り込む。布団の中はぬくぬくと暖かい。

 いつもなら、タイマーにしてあるエアコンが作動して、起きる頃には部屋の中はそれなりに暖かい。でも今日は何故か寒い。もしかしたら昨夜、タイマーセットをし忘れたのかもしれない。


 あぁ起きたくないな。今何時だろう。今日は日曜だし、もう少しこのままでもいいかなぁ


 そんなことを考えながら、奈々は腕だけ伸ばして枕元に置いているはずのリモコンを探す。起きるためにはエアコンを入れなくては。部屋が暖かくなれば起きる気力も沸くはずだ。

 手探りでリモコンを探していると、カサリと軽い音がして、何かが手に触れた。

 片手で掴めるくらいのサイズで、ツルツルとした感触の、掴めばカサリと音がして潰れる様な柔らかさ。

 何だろう?と布団から顔を出し、枕元を見る。そこにあったのは……。


「えっ!?」


 驚いて飛び起きる。勿論、布団は被ったままだ。だって寒いし。

 枕元にあったのは光沢のある純白のリボンがかけられたオフホワイトの紙袋。

 今日は12月25日。つまりクリスマスだ。

 ドキドキしながらリボンをほどき、袋を開ける。中を覗いて、奈々は布団をはぎ取るとベッドから飛び下りた。






「潤!これ!!」

「おはよう奈々。どうしたの?」


 リビングに飛び込んできた奈々に、潤は今日は早いねぇと笑いかける。奈々は休日は二度寝を決め込むことが多い。10時前に起きてくる事は(まれ)だが、今はまだ8時前だ。


「これ!枕元にあったんだけど!」


 紙袋とリボンを手にする奈々は潤に詰め寄る。


「これ!プレゼント!潤でしょ?」

「知らないよー。サンタさん来たんじゃない?毎日よく食べて頑張ってお仕事してる奈々えらいねって」


 満足気な笑顔の潤に奈々は何だか悔しくなる。プレゼントは嬉しい。嬉しいから準備してなかった自分が悔しいし、こんなことをさらっとしてくる潤が好き!でもずるい!と思ってしまう。


「もー!それなら私もいつも美味しいご飯作ってくれる潤にサンタさんしたい!プレゼント送らせて!買い物いこう!」


 (まく)し立てるような勢いの奈々に潤は笑いながら頷いた。






 いつもなら休日は昼前くらいに朝昼兼用で食事をとるのだか、今日は思いがけないサプライズで早起きができた。潤が用意してくれた朝食を食べてから出かける準備をして、奈々は潤と二人でショッピングへと繰り出した。

 奈々の手には先ほどのプレゼントの中身である手袋がはめられている。黒のラビットファーが付いた肌触りの良いカシミア混で、ファーには花型に抜かれた革がワンポイントになっていて可愛らしい。

 特にほしいものがないと言う潤を奈々が連れて行ったのはデパートの一角。潤のお気に入りの食器ブランドの店舗だ。


「ここなら欲しいものあるでしょ。絶対!」

「そうだね。ここの食器は憧れ」


 うっとりとした溜息をつきながら食器に魅入る潤を奈々は満足気に見つめる。家にもこのブランドの食器が幾つかある。普段使っているお揃いのマグも一緒に暮らし始めた時に潤が用意したものだ。お気に入りのシリーズを少しずつ買い集めていることを奈々は知っている。

たっぷりと時間をかけて愛でていた潤が選んだのは苺柄のオーバルディッシュだ。

 そういえば丸皿は幾つか家にあるがオーバルタイプはなかったかもしれない。


「ありがとう、奈々」


 嬉しそうに笑う潤に奈々も笑顔を返した。






 カフェでランチをしてからデパ地下でデザートのケーキを買って帰路につく。

 買ってきたものを片付けて、各々好きにしばらくのんびり過ごしてから潤はキッチンに立つ。

 手伝うよと声をかけても潤にはいつも断られる。曰く、キッチンは潤の領域らしい。片づけは奈々も手伝うけれど、作る過程ではほとんど手伝わせてもらえない。

 だからいつも奈々はリビングから料理をする潤を見つめる。

 今日の夕飯は何だろう?今日はクリスマスだから、メインはきっとチキンだ。あとはサラダかな?潤が手に取る食材を眺めながら、奈々は夕飯に思いをはせる。そうしているうちに、部屋の中には美味しそうな匂いが立ち込めてきた。


「おまたせー。できたよ」


 並べるの手伝ってーと声をかけられて、奈々はキッチンへと向かう。


「美味しそう!」


 渡される料理をダイニングテーブルに並べながら。奈々が歓声を上げる。

 本日のメニューは一羽丸ごと使ったローストチキン、サーモンのカルパッチョ、ショートパスタのサラダ、オニオンスープだ。


「いただきます!」


 席について手を合わせる。それと同時に潤が切り分けたローストチキンを奈々の前に置いてくれた。


「どうぞ。召し上がれ」


 まずは早速ローストチキンから。骨付きのもも肉に(かぶ)り付く。皮はパリパリで肉は柔らかく弾力があり、しっとりとしてジューシーだ。ハーブの香りが鼻を抜けていく。美味しい。味付けはシンプルに塩と胡椒だけだがそれがチキンの旨味が感じさせる。潤が用意してくれたハニーマスタードソースと和風照り焼きソースをそれぞれかけてもまた違った味わいになり飽きがこない。

 サーモンのカルパッチョは上に散らされた玉ねぎの白とカイワレの緑で(いろど)りもよく綺麗で食欲をそそる。レモン風味のさっぱりとしたソースがよく馴染んでいて美味しい。

 ショートパスタのサラダはファルファッレというリボンの形をしたパスタが入っていて可愛らしく、一口サイズの赤と黄色のパプリカとアスパラガスをシンプルなフレンチドレッシングを合わせてある。見た目も華やかでパプリカは甘みがあり、アスパラはシャキシャキとした歯触りで美味しい。

 オニオンスープは玉ねぎの甘みとコクが感じられるシンプルながら優しい味わいだ。


「おいしいー」


 ふわぁと息をつきながら、奈々が頬を緩める。頬をほんのりと蒸気させ、幸せそうに目尻を下げながら料理に舌鼓(したづつみ)を打つ。

 どれも美味しいけれど、やっぱりクリスマスといえばこれだろう。


「やっぱり定番のチキンは美味しいよねー。そのままでもソースかけても美味しい」


 もも肉の次は胸肉をフォークとナイフで一口大に切り分けて、口にと運ぶ奈々。もぐもぐと咀嚼(そしゃく)した後に満面の笑顔を浮かべる。その顔に潤もほっこりとした温かな気持ちになる。本当に美味しそうに食べてくれるから、見ていて飽きない。


「でもなんでクリスマスと言えばチキンなんだろうね?確かに丸焼きのローストチキンはごちそう感あるけど」

「チキンが定番になったのは某白いおじいさんのお店の戦略だね」

「そうなの!?」

「うん」


 元々は七面鳥だしねーと笑う潤に奈々は首を傾げる。


「え?じゃぁなんで七面鳥?」

「収穫を祝う感謝祭での料理でお祝い事の定番みたいな感じらしいよ。感謝とかお祝いの気持ちが含まれている料理だね。それがアメリカから広まってイベント時に出される様になったとかって話だよ」

「そうなんだ」

「うん。ちなみに日本では七面鳥が手に入りづらいのとか、大きすぎて家庭のオーブンだと調理しにくいのもチキンが定番になった理由の一つみたいだね。やっぱり手軽に買えたり、調理が楽な方が便利だしね」

「確かに」


 七面鳥はそれはそれで気になるけども。潤が用意してくれたローストチキンは文句なく美味しい。


「ごちそうさまでした」


 さすがに二人で丸ごと一羽は多かった。大皿にはローストチキンが残ってしまっているがもうお腹いっぱいだ。これ以上はデザートが入らなくなってしまう。


「はい、よく食べました。残りはあしたアレンジして朝食にしようね」

「うん!」


 潤の言葉に笑顔を返す奈々。そうか。明日また違う形で出てくるのか。新たな楽しみに心が躍る。今日は朝から幸せなことしかない。お腹も心も満たされて多幸感がすごい。

 

 二人で食べ終わった食器を片付けて、冷蔵庫からケーキを取り出す。ケーキはこれもクリスマスの定番、丸太の形のブッシュドノエル。「キリスト誕生時に暖炉で薪を燃やしたことに由来する」との由来があるフランス発祥のケーキだ。

 卵色のスポンジでチョコクリームをくるりと巻き、表面をチョコガナッシュでコーティングしたロールケーキは本物の薪の様なビジュアルだ。上には雪が積もっているかの様なホイップクリームと粉砂糖。トッピングは苺とミントでクリスマスカラーだ。

 飲み物は12月に入ってから毎日飲んでいるものがある。潤が用意したアドベントカレンダーの紅茶だ。日付が書かれた小さな立方体の箱にはトライアングル型のティーバッグが一つ入っている。毎日違うフレーバーが入っていて、25日の今日は甘い、スイーツの様な香りのするものだ。


「いただきまーす」


 切り分けたケーキを口に運ぶ。口に入れると広がるのはチョコレートの風味。表面のガナッシュは濃厚でビターな味わいだ。スポンジはしっとりとしてふわふわでチョコクリームはミルク感があり甘めながら、スポンジやガナッシュとの相性も良く、滑らかなくちどけだ。


「美味しいー」

「紅茶も美味しいよ。アドベントカレンダー、楽しかったねぇ」


 笑う潤に奈々も頷く。アドベントカレンダーなるものを奈々は初めて体験した。毎日一つずつ開けていき、楽しみながらクリスマスまでの日数を数えていく。毎日楽しみながらクリスマスを迎えるなんて子供の頃以来ではないだろうか。


「潤といると毎日ほんと楽しいな。いつもありがとね」

「ん?どうしたの、急に」

「なんか言いたくなったから。七面鳥じゃないけど代わりのごちそう食べたからかな?日頃の感謝を伝えなきゃってね」


 いたずらっぽく笑った奈々に、潤も笑う。


「こちらこそ、奈々といると毎日楽しいよ。ありがとう」


 ご馳走と一緒に感謝を伝えられる。少し特別な夜になる。それはきっと素敵なクリスマスの過ごし方だ。


 


大遅刻しましたー!!

もう30日ですがクリスマスです。25日です。


我が家は今年はクリスマスとは?チキンとは??なディナーをしました。ホットプレート餃子だよ。一応中のミンチは鶏も使用しているそうです。

ケーキは縦型のブッシュドノエルを作りました。縦だから丸太というか切り株です。

子供たちにデコレーションを任せたらキノコの山をこれでもかとのせてました。

切り株がキノコの原木みたいになってました。同じような物をSNSで見かけたのできっとお子様のいる家庭ではよく見られる風景なんでしょうね。


それでは皆様が素敵なクリスマスを過ごされたことを祈って……。


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