魔王
しばらく森を歩いていると、空が急に赤くなった。
魔王城に近づいたのかもしれませんわ。
あたりを見回していると、赤い目をしたカラスたちが飛んできた。
『娘、カエレ!!』
『ココカラ先、魔王様ノ土地。』
『出テケ!!』
うるさいですわね。シャルロッテも精霊もうるさそうにしてますわ。
『華夜、コイツらどうにカシテ、耳が壊れそうだよ。』
「そうね。」
時間がないというのに、カラスたちは一向に退く気配がありませんわ。
私、流石にキレそうですの。
『愚カ者!!』
『馬鹿!!』
『邪魔者!!』
私の中で何かがプツンと切れた音がしましたわ。
「お黙りなさい!私は魔王陛下に会いに来たのです、邪魔者はお前たちですよ!そもそも、魔王城の門番はこんなにマナーのなっていない方々なのですの?ふんっ、くだらない。残念でなりませんわ。あなた方のようにマナーのなっていない方々が客人をお出迎えしては魔王陛下の品格も威厳も落ちるというもの。今のあなた方では魔王陛下の足を引っ張るだけなのではありませんか?」
『ウルサイ!』
『カエレカエレ!!』
「もう一度言います、私シャルロッテ・デューク・ローゼンベルクは魔王陛下に会いに参りました。あなた方では話になりません、即刻出直しなさい!!」
ものすごく偉そうに言ってやりましたわ。少しスッキリいたしました。
呆然としているカラスたちを眺めていると後ろから声がしましたわ。
「私に会いに来たというのは貴様か。」
後ろを振り返ってみるとそこには蒼銀髪に赤い眼の綺麗な男性が空に浮いていましたわ。
「魔王陛下・・・ですの?」
「そうだ、私が魔王だ。」
「お初にお目にかかります。シャルロッテ・デューク・ローゼンベルク・・・いえ、送り人の華夜と申します。」
「カヨ・・・?この国のものではなさそうだな。」
私は魔法で分身を作り、その中に入り、自分の・・・華夜だった頃の姿にしましたわ。
「改めまして華夜と申します。」
「シャルロッテですわ。」
「ライアス・ヴィアス・ユーシスだ。それで、私に何の用だ?」
「単刀直入に言います、魔香の解毒薬をくださいませ。」
それを聞いた魔王は眉を顰めた。
「魔香の解毒薬?なぜそんな物が必要なのだ。」
「私のお父様の従者の方が魔族だったのですが・・・」
「襲撃者と戦った際に魔香を喰らってしまった様ですの。」
魔王は急に焦り出し立ち上がった。
「すぐにそちらへ行こう。どこだ?」
「あそこですわ。」
私は公爵家の方角を指差した。
それを聞くと魔王は竜の形になった。
「乗れ、運んでやる。」
私はシャルロッテの中に戻り魔王様の上に乗りましたわ。魔王様は飛ぶのがとても早くて・・・少し、怖かったですわね。あっという間に到着しましたの。
「華夜くん!戻ったのか!それで、解毒薬は?」
「魔王陛下を連れてきましたわ、公爵様。」
ハウル様は固まってしまいましたの。どうしたのかしら。
「おい、魔族の従者とやらはどこだ?」
「こ、こちらにどうぞ。」
とっても質の良いベットにウェルクさんは寝かせられていましたわ。
「時の精霊様、もう大丈夫ですわ、ありがとうございました。」
『その人、良くなるといいね。』
「きっと良くなりますわ。」
『そう、』
魔王様はウェルク様に近づき、手に魔力を宿した。
治療開始のようですわ。