姉弟は夢をみる
義弟に事実を伝えた後、私たちはお父様に呼ばれましたの。
お父様はイザンナが全てを知ったことを知ると、数秒目を閉じ、そして深々と頭を下げましたわ。
「すまなかった・・・。我々の、私の不注意で辛い思いをさせてしまった・・・。本当に・・・本当に、申し訳ない・・・!!」
「あ、頭をおあげください。公爵様。悪かったのは父であり・・・!」
「いいや。悪いのは全て我々の方なのだ!気づくべきだった!気をつけておくべきだった!あの者がどういう人物か、わかっていたはずなのに!だというのに、私は・・・!」
初めて聞く、父の泣き声。贖罪。
父はその後も謝り続けた。
私は目を瞑った。
そしてゆっくりと瞼を開け、声を発する。
「お父様。今、謝ってもなんの意味も持ちませんわ。無意味ですのよ。」
「義姉さん。なにを言って・・・」
「今謝ったって遅いんですの。我々の失敗のせいで、イザンナは傷つき、苦しんだんですわ。どれだけ謝ろうと、過去は、起きてしまったことは、変わらないんですの。」
低い声で、淡々と。
私はきつい言葉を投げかけた。
一呼吸し、また口を開いた。
「だから、もし本当に、悪いと思うのならば行動で示したらどうなんですの?口で謝るのではなくこれからの行動で贖罪したらいかがです?過去は変えられなくとも、未来は、変えられるのですから。」
いくら言葉で謝っても、なにも変わらない。
だったら変えられるように努力するべきだと思うんですの。
「あぁ・・・そうだな。シャル。その通りだ。イザンナ、私は君の新たな父として君を幸せにするよう努力することを誓うよ。」
「努力じゃダメですわ。幸せにするのです。・・・私も義姉として誓いますわ。あなたを幸せにすると。だから・・・これからもよろしくね。」
「・・・よろしくおねが・・・・よろしく。姉さん。そして、お、お父様?」
お父様は感激したようでボロボロと泣いてしまいましたわ。
数分かけて、私たちは泣き止ませましたの。
私が送り人であるということはとりあえず隠しましたわ。
別に話しても良かったんですけれど・・・なんて説明すればいいのかわからなかったんですの。
ゲームでのルートだなんて、当事者に伝えていいのかわからなかったんですの。
お父様に話して良かったのは・・・
ゲームが始まる前に死んでしまうからなんですもの。
お母様と一緒に。
二人が死んでしまうせいで、私の、悪役令嬢シャルロッテの人生は狂ったのですわ。
絶対に、なにがなんでも止めなくてはなんですわ。
あの事件だけは。
絶対に。
夜になり、私は眠りについた。
つもりだったのですけど、なんだか眩しかったので目を開きましたの。
辺り一面真っ白で、自分がどこに立ってるのかもわからないくらいでしたわ。
そんな中、向こうでポツンとイザンナがうずくまっていましたの。
「イザンナ!!」
私は急いで駆け寄りましたわ。
イザンナはうずくまり、大泣きしていましたの。
「どうしたんですの!?一体なにが!!?」
「ね、姉さ・・・っ!!」
その瞬間、後ろに誰かが立っている気配がしましたの。
バッと振り向くと、そこには人とは思えないほど美しい方がいましたわ。
腰くらいの長さでハーフアップにされている白金の髪、白くて長いまつ毛に伏し目がちの瞳。
まるで、神話に出てくる神様のようだったんですの。
私はフラフラとその人に近寄りましたの。
「姉さん!!だめだ!!」
焦ったようにイザンナが止めに来たけれど、私はそれを振り払いましたわ。
「姉さん!!」
腕の届く範囲についたら、私は手を伸ばし・・・
そいつの胸ぐらを掴みましたわ。
「あなたですの?私の可愛い義弟を泣かせやがったのは?」
こいつが、イザンナを泣かせたのならば。
「殺しますわよ。」
そいつは驚いたように目を見開きゆっくりと手を上げた。
「泣かせたのは僕だけど僕じゃないよ。」
「は?」
「こ、怖いから睨まないでくれるかな。彼にはあるものを見せただけなんだよ。」
なにを見せたらこんなに大泣きするというのかしら?
「なにを?」
「君の記憶にある、この世界の未来を。」
「義姉さん?大丈夫・・・?」
「ぁ・・・ぅそ・・。」
まさか、あれを見ただなんて。
こんなに小さな子に、あれを見せたというの?
そんな。嘘・・・。
ありえない。
こんなに小さな子に、
世界が終わる光景を見せただなんて。




