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10話.[言ってあげてよ]

「許さないぞこらあ!」

「わあ!? い、いきなりなんですかっ?」


 夏休み最終日、インターホンが鳴ったから扉を開けたらこれだった。

 暑苦しい感じの果林先輩の襲撃、なにかしてしまっただろうか?


「銀に好きって言ってあげてよ」

「あ」


 仲良くしたい、一緒にいたい。

 そういうことは言ったのにあと一歩勇気を出せていなかった。

 あと、なんだろうかこの感じ、先輩の少し悲しそうな顔は。


「分かりました」

「うん、じゃあはい、銀を連れてきておいたから」

「あ、ははは、果林先輩らしいですね」


 とりあえず依然として暑いから上がってもらうことに。

 ただ、銀子先輩はやはりいつでも涼しげな感じだった。


「銀子先輩、僕は――」

「いいわ、いま言わなくても」

「いいんですか?」

「ええ、もっと仲良くしてその後にぽろっと零してほしいのよ」


 銀子先輩は「誰かに指摘されたから言うなんて聞く側は複雑じゃない」と言った。

 確かにそうか、しかも今回もまた先輩が関係しているわけだしな。


「基ー!」


 大きな声が聞こえてきて開けてみたら元気な丸と、佐奈がいた。

 最終日だというのに全く変わらないところはもう安心することしかできない。


「まったく、やかましいんだから」

「まあまあ、丸はこれぐらいの方がいいよ」


 元気じゃなかったなら心配になる。

 可愛げのないことを言ってくるようになったとしてもそこは変わらない。


「まあそうだけどねー……って、諏訪先輩もいたんですね」

「ええ、堀井さん達よりも先にいたわ」

「そ、そんな冷たい顔をしないでくださいよ……」


 敵視しがちだから気をつけてほしかった。

 あと、来た理由を聞いてみたらデート前に寄ったということらしい。

 デート、デートねえ、こっちは一緒にいられているけどそういうのはないな……。


「も、もう行きますから睨まないでください」

「あら、別に睨んでないけれど……」

「基弘、また明日ね」

「基、ばいばーい」

「うん、また明日」


 ふたりが出ていってから数秒が経過した後、銀子先輩が「こら」と叱ってきた。


「佐奈は丸の彼女なんですよ?」

「それでも関係ないわ、楽しそうに話をしていたら……気になるじゃない」

「はははっ」

「もう帰るわ」

「じょ、冗談ですからっ」


 いや違うな、一緒にいられているだけでデートみたいなものだ。

 お家デートって風に考えればいいことだと思う。


「……ごめんなさい、面倒くさい絡み方をしてしまって」

「いえ、気にしないでください、寧ろちゃんと言ってくれて嬉しいです」


 それすら言われなくなったら終わりだ。

 別に意地悪がしたいわけではないから気をつけようと決めた。

 丸的にも面白くないだろうからね。

 一番にとまではできなくても銀子先輩を優先して過ごすんだ。


「そういうところが可愛くて好きですよ」

「……むかつく」

「えぇ」


 不機嫌になってしまったから機嫌を直してもらえるように集中したのだった。

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