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魔王と僕≪しもべ≫のしあわせごはん  作者: 羽鳥くらら
【第6話】両片想いとフライドポテト
112/246

【6-2】

 ◇



「おはようございます、ジル様。おかえりなさい、ミカさん、クック、ポッポ」


 食堂に到着すると、待ってましたと言わんばかりのカミュに歓迎される。相変わらず美麗な悪魔は綺麗な姿勢で一礼しつつも、無邪気な笑顔を隠せていない。いや、隠す必要はないと思うけれど、カミュ本人は真顔でそつなく対応していると思い込んでいるようなので、それがなんだか可愛らしかった。


「……確かに、随分と機嫌がいいな、カミュ」

「そうですか? 私はいつもと同じですよ」


 ジルからのツッコミに対しても、クールに応対しているように見せかけて、顔はにっこにこだ。可愛い。

 ジルは呆れた風に苦笑したけれど、ふとテーブルの上に載っている朝食たちを見て、吸い寄せられるように足早に近寄っていった。


「こ、これは……」

「どう? 僕が言っていた意味が分かった?」


 ジルの横に立って見上げると、魔王は珍しくぽかんと口を開けたまま、こくこくと頷く。


「ああ、なるほど……、確かにこれは同じじゃない。……だが、どちらも卵のサンドイッチだな?」

「大正解!」


 そう、僕は今朝、二種類のたまごサンドを作った。ひとつは、ゆで卵を崩して具を作ったもの。これは何度か、通常の丸パンに挟む形で作ったことがある。そして、もうひとつは、厚く焼いた出汁巻き卵を挟んだもの。これは、初お披露目だ。

 以前、マティ様がホラマロバ王国の食材を届けてくれたときに、白出汁に似た風味の調味液があったから、それを使ってみたんだけど……、日本人好みの味つけだろうから僕は美味しいと思うけれど、ジルとカミュの口に合うかは未知数だ。


「前に、食パンでサンドイッチを作っても美味しいよって話したとき、ジルもカミュもすごく興味を持ってくれていたみたいだから、作ってみたんだ。あと、僕がいた国ではたまごサンドイッチには大きく分けて二種類あったから、今回は両方作ってみたんだよ」

「それは凄いな。大変だったんじゃないか? ありがとう、ミカ」

「全然大変じゃないよ。ジルもカミュも嬉しそうにしてくれて、僕も嬉しい。あとは、お口に合えばいいんだけど」

「ミカの料理はどれも美味しい。これだって、美味しいに決まっている」

「そうですとも。ミカさんの作ってくださる食事は、いつでもどれでも美味しいです」


 自信満々に胸を張る魔王と悪魔が微笑ましくもあり、褒められてちょっと照れくさくもあり、光栄でもあり。くすぐったい気持ちを抱えつつ、僕は二人に着席を促した。

 僕たちがいつもの椅子に座る間に、クックとポッポも窓際の定位置に置かれた皿の前に移動する。最近、彼らは「いただきます」のタイミングを把握しているようで、僕たちがそれを言うまで、クックとポッポも食べずにジッと待っているようだ。早く食べたい! と目で訴えかけてくる様子が、とても可愛い。


「それでは、食べようか。──いただきます」

「いただきます」

「いただきます」

「ククッ!」

「ポポッ!」


 ジルの声を合図に、みんなで「いただきます」を交わし合う。ジルとカミュは幸せそうな微笑で軽く頭を下げて、僕は両手を合わせて拝むように、クックとポッポはいつものドヤ顔で。賑やかで、穏やかで、幸福に包まれる時間だ。みんなで食卓を囲めるのが嬉しくて、料理をする喜びに毎日拍車がかかっている気がする。


 今朝のメニューは、二種類のたまごサンドに、香草と食用花とチーズのサラダ、濃いめに淹れたカボ茶をミルクで割ったカフェオレ風ドリンク、数種類の冷やした果実。そして、先日に無事収穫できたポトトと森のキノコをバター炒めにしたもの。

 ポトトは、先月──じゃなくて、第五星図期間に畑でせっせと育てていた、ジャガイモによく似た野菜だ。楕円形で、皮を剥くとジャガイモよりも黄味が強いというか、オレンジ色に近い濃い黄色。加熱すると色味の鮮やかさが増すし、ほくほくとしているし、見た目も食感も味も美味しい。


「どれも美味そうだが、やはりサンドイッチに目を奪われてしまうな」

「同感です」

「どれから食べてもらっても、同じように嬉しいよ。どうぞ、好きなものから召し上がれ」


 ジルとカミュは視線を交わし合い、各々の皿から同時に出汁巻き卵のサンドイッチを手に取った。やっぱり、新種のたまごサンドに一番そそられるみたいだ。


 手に取ったサンドイッチを様々な角度から観察してから、魔王と悪魔はやはり同時にかぶりついた。口にした瞬間は少し不思議そうに、でも、まばたきする間も置かず、すぐにちょっとビックリしたような顔をして、もぐもぐしながら段々と恍惚とした表情へ変化させていく。ジルもカミュも系統の違う美形だけれど、そっくりな顔をして幸せそうにサンドイッチを味わっていた。

 やっぱり同時に飲み込んだ二人は、目を輝かせて、声を揃える。


「これは、美味い……!」

「本当に! 新しい美味しさですね……!」


 美味しいって喜んでもらえるのは、本当に嬉しい。僕も知らず知らずのうちに、満面に笑みを浮かべていた。

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