その娘、見習いになる2
サウスライドの背を追いかけ2階の部屋の更に奥の部屋に通されたルディリアは、部屋に入る前からその中には誰もいないことが分かった。
何故自分だけがこの場に通されたのかと疑問に思いつつも彼に促されるままに椅子に腰を下ろす。
「さて、君にはいくつか質問させて貰おう。」
先ほどと同じように笑みを見せるサウスライドは興味深げにこちらを眺めている。そして、ルディリアが素直に彼の命に従っているからか、どこか満足気な様子である。
「はい。何なりと。」
ルディリアがそう返事を返すと大きく頷いた。
サウスライドの背後にある大きな黒板には魔法師試験の節目に使われる予定であろう内容が記されている。サウスライドはその黒板の文字を半分ほど雑に手で消すと文字を書き始める。
「まずは、名前。」
「ルディリア・ヒースロッドと申します。」
「歳は?貴族院生ではないよね?」
「17です。去年貴族院を卒業しました。こちらが卒業証と推薦書です。」
ルディリアは目の前の机に2枚の紙を並べて置く。しかし、サウスライドはそれに目を向けることなく文字を書き続けている。
見た所魔法の属性や高位魔物の名前や魔法薬などにも使われる薬草の名前などさまざまだ。それらに関連性があっただろうかと首を傾げそうになるのをグッと堪えてサウスライドの次の言葉を待つ。
「新卒生か…。それですぐに王城へ試験を受けに来るとは大したものだな。それで得意な属性は?」
「攻撃魔法であれば氷、補助であれば風と闇、回復であれば水と光を使用します。」
そこでやっとサウスライドは振り返る。そして白墨で汚れた手をルディリアに向けた。
言葉を発する手前で推薦書が目に入ったのか口を噤むと推薦書に目を近づけた。そこにはルディリアが有用な準魔法使いであるため魔法師の試験へと推薦する旨が記載されている。
「成る程、成る程。まぁ、確かに興味深い子だよね。」
ふむふむと何かを考える様子を観察するわけにもいかず、ルディリアは黒板へと目を向けることにした。
属性の相関図と高位魔物、種族名、薬草や花の名前、木の種類と土地の名前がずらりと並んでいる。
頭の中でそれらを並び替えながらまとめていく。しかし、どうしても全てを綺麗に並べることが出来ない。どうやら、自分には薬草やら端の名前やら木の種類関係の知識が足りないようだと諦めてサウスライドを見ると、彼はじっとこちらを見ていた。
驚きながらも殆どそれらが表に出ることなく、いつもよりは少しだけ瞳が大きく開いた程度の表情をスッと隠しルディリアはサウスライドの言葉を待った。
「ルディリア・ヒースロッド、君はこれらを見て何を考え何を思い浮かべた?」
「はい、まず関連するモノを並べました。属性とはすなわち魔力。ですから純粋な魔力に関係するモノをAと置き、作り出すことの出来る、魔法薬や魔法道具が連想できるモノをB、その他をCとして置いたときの土地に関係する魔物の出現地とその弱点で相図を作成しました。」
「ふむ、君は純粋な戦闘タイプの様だな。」
「はい。」
「よろしい。では、君の配属を言い渡す。 君は、魔導師見習い 兼 魔法研究室室長補佐に任命する。」
「…え?」