髪を梳く
髪を梳いてあげる
あれから数日。無事に書類も提出し、式も挙げた俺たちはうちの屋敷で暮らし始めた。今はお風呂上がりのリシェの髪を梳いて、風魔法で乾かしてあげている。
「気持ちいいか?リシェ」
「…はい、です」
リシェはまだ俺に対して警戒している様子だ。むむむ。手強い。
「ママ!」
「わっ!あらあら、リシェったら。まだまだ甘えん坊なのね」
同じくお風呂上がりで、まだ髪を梳いてもいないエルに抱き着きにいくリシェ。そんなに俺は信用出来ないのか…。
「リオ様、私も梳いてくださいな」
「ああ、わかったよ、エル」
お手本を見せるように自然に俺に甘えてくれるエル。エルの言う通りに梳いて乾かしてあげれば、リシェもおずおずと戻ってきてまた髪を梳かせてくれた。
「リオ様、リシェは可愛らしいでしょう?」
「ああ、本当に」
うちの娘という欲目を抜いても、リシェは可愛らしい。さすがフォスティーヌ側妃殿下のお子だ。
「リシェ、エル、ちょっとついてきてごらん」
「?はい!リシェ、行きましょう?」
「うん…」
そうしてリシェとエルを連れてきたのは二階のバルコニー。二人にバルコニーから見える夜空を見せてあげた。
「わあ!」
「…きれい」
「エステルの名にちなんでね。ぜひ見せてあげたくて」
俺がそう言うと、リシェは少しだけ嬉しそうに、ママの名前は綺麗でしょうと自慢してきた。
「そうだな。とっても綺麗な名前だ。もちろんリシェの名前も綺麗だよ」
「まあ!うふふ」
「…ありがとう、です」
少しだけ二人との距離が縮まった気がした。
少しずつ距離を詰める