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ストレんじねス。 〜チートなアイツの怪異事件簿〜  作者: スネオメガネ
怪《かい》の章

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進行役と当代様

 駕籠から飛び出したJKが、円卓の上に膝をつく。


「あ~、眠たかったぁ~!」


 與座の頭が混乱する。


(え? え? え? 当代様がいると思っとったのに……駕籠の中におったのは……JKやった?)


「あぁもぉ、月例会議って、マジ眠くなっちゃうのよねぇ。 超最悪、まじチョベリバ」


 短めスカートのセーラー服にルーズソックス、レイヤー入のロングヘアー、言動も含めて、黒い髪色を除けば、まるで一昔前のギャルに見えた。 ギャルJKは、よいしょっと言いながら、四つん這いで円卓からスゴスゴと降りる。


 状況が飲み込めず、固まったままの與座が、助けを求めるように佐藤を見る。 佐藤も絶句したまま、固まっていた。


(……ブルータスお前もか?)


 霊視のフィルターを外して、ギャルJKを見ると、確かに眩いばかりの霊力がギャルJKから出ているのがわかった。 信じたくはないが、このギャルJKが当代様で間違いないようだ。


「おひぃ様、佐藤営業部長と與座主任が、固まっています」


 進行役が無表情のまま、ギャルJKに声を掛ける。


「ん? なんで? どうして? Why(ホワイ)?」


「おそらく、おひぃ様の美しさのせいに違いありません」


「マジ? うちって、超罪(ちょうつみ)(おんな)系?」


「えぇ、残念ながら、超魔性(ちょうましょう)です」


「あちゃぁ、超罪(ちょうつみ)だわぁ……」


 ギャルJKが、額をペチッと叩きながら、ペロッと舌を出す。


(いやいや、超罪って……。 てか、おひぃ様ってなんやねん)


「ん! まぁいいわ! 初めまして、佐藤っちに與座っち、うちが当代の卑弥呼(ひみこ)よ。 よろしくねん」


「そして、私が秘書の壱与(いよ)です。 よろしくお願いいたします」


 JKが卑弥呼を名乗り、進行役が壱与を名乗った。


(……あかん。 ツッコミどころが多すぎて、どっからツッコンでええんか、完全に迷子や……)


「ひ、卑弥呼? 壱与? それじゃ……まるで邪馬台国じゃないか……」


 佐藤が震えながら、與座の言いたい事を言ってくれる。 そこに痺れる憧れる。


「ん? そらそうっしょ? だから、『邪馬(やま)』なんじゃん? 知らないで所属してたの? 超ウケるんですけど」


「おひぃ様、だいぶ前から『邪馬』の字は野山の『(やま)』を使うようになってます。 まさか、お忘れですか? そんなポンコツなところも素敵です」


「あちゃぁ、超罪だわぁ」


 再びの額ペチに、てへぺろ風舌出し。


「え? 『山』って……え?」


 佐藤が、あまりにもサラッと告げられた重い情報を処理し切れずに、ブツブツと何か言いながら、固まってしまう。 それを見て、與座は違和感を覚える。


(……どう見ても女子高生やんなぁ)


 佐藤の反応から、少なくとも、壱与の言う『だいぶ前』と言うのが、佐藤が『山』に入った時よりも前の話だと窺える。 どう考えても、卑弥呼も壱与も、佐藤よりも古株であるなどとは言えない年齢に見えた。 にも関わらず、二人のやり取りは、昔の事を誰かから聞いたというようなやり取りではなく、まるで『邪馬』という漢字を使っていた時代を経験しているような、やり取りに見えた。


 そこまで考えて、與座は思考を放棄した。


「…………まぁ、ええわ。 ……なんでや? なんでそないな……佐藤部長ですら知らんかったような……大事な事を、たかが主任の俺に聞かせる必要があるんや?」


「そら、與座っちには、これからもいろいろ協力してもらう必要あるって言うか……、佐藤っちにもそれをサポートしてもらう必要があるって言うかぁ……、準備が整ったって言うかぁ……まぁ、ほら、つまり、その……アレよ……みたいな?」


「おひぃ様、グダグダです。 でも、そんなポンコツなところも素敵です」


「あちゃぁ、超罪だわ……」


 からの額ペチッ& 舌出し……。


「ま、そんなどうでもいい事は、置いといて……佐藤っちと與座っちに残ってもらったのは、柊 鷹斗に振る案件の話をするためでっす!」


(置いとかれるんや……)


 與座は遠い目をした。 先程の御前会議の時の厳かな雰囲気が、まったくなくなっていた。


「壱与、アレを」


「はい、おひぃ様」


 卑弥呼に促され、壱与が駕籠の中を漁り始める。 そして、取り出したのは、厚手の数枚の紙……テレビでよく見かけるフリップボードのように見えた。


「與座っちには、あの『テカテカポマード眼帯おじさん』をギャフンと言わせる必要があります! みたいな?」


 一枚目のボードには、芦屋呪術部長の写真と、吹き出しが書かれており、吹き出しの中には『ギャフン』と書いてあった。 眼帯を付けて、しかめっ面をしている芦屋の表情と吹き出しのギャフンにという言葉のギャップに思わず脱力してしまう。


(確かに、芦屋はポマードを使ってオールバックにしとるけど……あのおっさん……『山』のトップに、そないな呼ばれ方されとったんか……)


「で、まずは柊 鷹斗を取り巻く環境が、こちら! ででん!」


 卑弥呼の放つ謎効果音に合わせて、壱与がフリップボードの二枚目を佐藤と與座に見せつける。


 そこには、ワイドショーなどでお馴染みの、相関関係図が書かれていた。

 中心の人物マークに柊 鷹斗(赤の書所有者)と書いてある。 右隣には一ノモブと書かれたマークが書かれており、柊に向かって、懐いていると書かれた矢印が伸びている。 ちなみに、柊から一ノ瀬には、モブと書かれた矢印が伸びている。

 柊の左上の人物には、大河内 修蓮、修蓮の下には和泉 真と書かれた人物が配置されており、師弟関係と書かれた相互矢印が伸びていた。

 ちなみに修蓮からは、柊に向かって、仕事を斡旋と書かれた矢印。 柊から修蓮には、下請けと書かれた矢印。 和泉と柊の間に仲良しと書かれた相互矢印が配置されている。


 さらに和泉の下に、青木(TV局)と書かれた人物が書かれており、柊との間に出演交渉中の相互矢印が書いてあった。


「柊 鷹斗は、現在、この青木という人物から、TVに出ないか?と、出演のオファーを受けてる真っ最中ということでよろしいですか? 壱与さん」


「こちら、現場の壱与です。 ……ハイ、間違いないようです」


 小芝居が始まった。


「しかし、どうやら問題が生じているようです。 現場からは以上です」


(以上やあらへん。 なんもまとまっとらんやんけ……)


「ここを利用します……的な?」


「……いや、なんもわからんのやけど……」


「要は、TV的には、柊 鷹斗に出て欲しい」


「出りゃええやんけ?」


「でも、柊 鷹斗の妖退治には……致命的な欠点がある……みたいな?」


「欠点?」


 佐藤が、険しい顔で会話に入ってくる。 おそらく、作戦の要になる柊 鷹斗の欠点と聞いて、不安になったのだろう。


「そう……彼のやり方は……TV映えしない……」


(どうでもいい欠点やった……)


「彼のやり方は、赤の書の造り出した法具を使って、妖の動きを止め、赤の書が捕食する、というやり方……。 これをTVで流そうとすると……ここまで言えば、わかるわよね? 明智君」


(明智君って、誰やねん?)


「はい、おひぃ様。 TV的には、柊鷹斗が煙管を吸ってるだけの地味な絵面になると思います」


 壱与が、ビシッと挙手をしながら、意見を述べる。


(あんたが明智君やったんか? )


「その通り! 赤の書の捕食場面、および紫煙で妖の動きを止めるところは、TVカメラに映らない……みたいな? おまけに、柊 鷹斗は霊感ゼロなので、霊視ができま……」


「せん!」


 卑弥呼が語尾を濁し、壱与が意気揚々と拾う。


(なんなんだ? このやり取り……)


「そう、それ!! つまり、柊 鷹斗をTVで使おうとすると、別の霊能力者が必要に……」


「なる!」


「それは、河合 美子のような映えるキャラが好まし……」


「い!」


(もう、なんやの? この人ら……)


「でも……河合 美子は、修蓮さんに弟子入りし……霊に対する考え方が……変わってしまったので……そういう仕事は、引き受け……」


「ない!」


(まだ続くんや……。 てか、河合 美子って素人やのに、さも霊能者みたいな顔してTV出てる奴やん。 修蓮の婆さんとこに弟子入りしたんや……)


 與座がうんざりしながら、内容を分析している間にも小芝居は続いた。


「したがって……河合 美子を引きずり出すためには、修蓮さんを呼ぶのが……」


「一番!」


「違う! 必須! 答えは必須よ? 壱与。 残念ながら、スーパーひとし君はボッシュートよ。 はい、ボッシュート!」


 壱与が、御前会議で見せていたクールビューティが台無しとなる絶望的な表情を浮かべる。 脳内でボッシュートの音楽が鳴り響き、沈んでいくスーパーひとし君人形が目に浮かんだ。


「だから、これ!」


 ここで、ようやく三枚目のボードが披露された。

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