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ストレんじねス。 〜チートなアイツの怪異事件簿〜  作者: スネオメガネ
怪《かい》の章

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御前会議 後編

「では、決を取りたいと思います。 まずは……松井経営企画部長からお願いいたします」


 その言葉に、一回咳払いをした後、松井が口を開いた。


「今回の提案……経営企画部としては……保留……とさせていただきます」


「な!?」


 松井の回答に、芦屋が驚きの声を挙げる。 それもそのはず、芦屋の記憶上、松井が保留という回答を出した事は、今まで一度もなかったのだから。


 経営企画部のトップと言うのは、伊達ではない。 経営企画部でトップという事は、未来視に関して言うと、『山』のトップと同義である事を意味する。 そんな松井が出す答えは、成功する未来が見える場合は賛成、失敗する未来が見えた場合は反対、とハッキリしていた。 逆に言うと、松井が最初に出した答えに便乗しておけば、間違いない。 芦屋は、そう考えていたのだ。


「……残念ながら、今回の提案に関する未来は、なぜか視ることができませんでした。 ただ、節分以降の『山』の未来が、まったく視えないという訳ではないようなので、この件に関しては、会議での決定に従う。 ……というのが、経営企画部の意見となります」


 松井は、芦屋の疑問に答えるかのように、無表情のままで言い放った。


「では、伊藤経理部長、お願いいたします」


 進行役が、伊藤に話を振る。


「え~っと、経理部としては、今回の提案には反対です。 やるのであれば、来年度以降に、しっかりと計画を予算に盛り込んだ上で、お願いしたいです」


 伊藤は、やたらと眼鏡を弄りながら、手短に意見を述べた。


「では、烏丸生産部長、お願いいたします」


「生産部、賛成。 『赤の書』所有者を呼ぶんなら、うちにも連れてきてくれ。 『赤の書』と、所有者が使う道具を研究したら、新しい法具開発の参考になるかもしれんからな……」


 定例報告中、ずっと寝ていた烏丸が、やる気なさそうに意見を述べる。 その答えには、かなりの私情が入っているように見受けられた。


 本来なら次は営業部の意見が求められる順番だが、提案部署は決に参加できない決まりとなっているため、スルーされる。


「退魔部としては、賛成かな。 確かに、僕と柊法師がいれば、成功する可能性は高いだろうね。 延厄式みたいな面倒事は、終わりに出来るなら、さっさと終わりにしたいよね」


 安倍が、進行役に促される前に口を開く。


「では、最後に……芦屋呪術部長、お願いいたします」


「呪術部としては……反対だ。 失敗した時のリスクがデカ過ぎる……。 松井部長の話の通りなら、『山』は存続するんだろうが……日本に壊滅的なダメージがないって保証はねぇ。 そんな話にゃ…とてもじゃねぇが、乗れねぇ」


 賛成2、反対2、保留1。 会議室の全ての視線が駕籠へと集まる。 進行役が駕籠に顔を寄せて、二度程、頷いた後、姿勢を正して周りを見据える。


「今回の営業部の提案……採用とさせていただきます。各部門は、総力を持って、協力するようお願いいたします。 松井経営企画部長、伊藤経理部長、芦屋呪術部長、よろしいですね?」


 進行役が、当代様の声を代弁する。


「仰せのままに……」


「仕方ないですね……。 皆さん、早急(さっきゅう)に予算書の見直しと再提出をお願いいたします」


「……わかった。 当代様の意思に従おう。 ただし、一つ、一つだけ……条件を付けたい」


 松井と伊藤が素直に応じる中、芦屋だけが肩を竦める。 その姿を見て、與座の胸に嫌な予感が走る。


「……なんでしょう?」


「なに……簡単な事さ。 延厄式までに、『赤の書』の所有者の実力を確認したい。 だって、そうだろ? この作戦で矢面に立たされるのは、うちのモンと安倍んところだけだ。 部門長としては、実力もわからん、訳分からん奴に、大事な若いモンの命を預ける訳にゃいかねぇ。 ……だろ?」


 芦屋は、安倍に同意を求めるように視線を送りながら、芝居がかった手振りで主張する。


「『赤の書』の所有者に適当な案件を振って、解決してもらう。 それに……うちのモンを同行させて、その実力を判断させる。 簡単だろ? その結果、そいつが、箸にも棒にも引っかからねぇ役立たずってなったら、……悪いが、……うちはこの話からは、手を引かせてもらう。 それでもやるってんなら、安倍んとこだけでやればいい」


 與座は、その条件に頬を引き攣らせる。 要となる呪術部の不参加は、実質、計画の破綻を意味する。 芦屋の条件は、『赤の書』の所有者が使えない人間なのであれば実行するな、と脅しを掛けているに等しかった。

 しかも、その判断を呪術部の人間が行うとなれば、結局、この計画を進めるか、進めないかは、芦屋が決める事になってしまう。


 進行役が、再び、駕籠に顔を寄せる。 その時間は、ほんの僅かな時間だったが、與座には途方もなく長く感じた。 しばらくして、進行役が、まっすぐとスクリーンの方を見ながら、背筋を伸ばす。


「承知いたしました。 『赤の書』の所有者が、呪術部のお眼鏡にかなわなければ、この計画は中止とさせていただきます。 同行していただく案件と時期は、こちらで決めさせていただきますので、ご了承ください。 芦屋呪術部長は、いつでも対応できるよう、早急に人員の選出と確保をお願いいたします」


「はっ、早急に対応させていただきます」


 芦屋は、不敵な笑みを浮かべながら、仰々しく頭を下げる。


「これで定例会議を終わります。 此度の計画に関しましては、後ほど、ご連絡差し上げますので、各部門……準備のほどをよろしくお願いいたします。 あと、佐藤営業部長と與座主任は、この後、残ってください。 それでは、解散とさせていただきます」


 進行役が、深々とお辞儀をし、その場を閉める。


(……昔っから、この後残ってねとか言われて、いい話だった事なんて、一度もなかったわ)


 與座は、そんな事を考えながら、部門長達が会議室を出ていくのを横目で見ていた。 最後に出ていく芦屋が、與座に対して、ニヤリと笑ったのが、余計に腹立たしかった。


(ちゅうか、結局、芦屋の思うまんまやないか……。 どうせ、柊兄を見ても、アロハが派手すぎるとか、アロハの趣味が悪すぎるとか言って、難癖つけるんやろなぁ……)


 全ての部門長が、退室した後、進行役が部屋の照明を付ける。 明るく照らされた部屋の中で、進行役が静かに與座を見る。


「どうしました……? 随分、不服そうな顔をしてますが……」


「いや、えっと、芦屋部長の、あの条件やと、結局、芦屋部長がやりたいようになってまうんやないかな……と、思いまして……」


 進行役は、その言葉にフッと笑った。


「大丈夫ですよ。 そうならないように、しっかりと手を打ちますから……」


 一体、どんな手を打てると言うのか……。 與座は、納得がいかないまま、進行役を見つめた。


「さて、お二人に残ってもらったのは、当代様からお話があるからです。 当代様……お願いいたします」


「……行った?」


「えぇ、今は佐藤営業部長と與座主任だけです」


 駕籠の中から、聞こえてきた声は、若い女性のものだった。 次の瞬間、簾がめくれ上がり、円卓に向かって、中から勢いよく飛び出してきたのは、JK(ジェーケー)(女子高生)だった。


「あ~、眠たかったぁ~!」

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