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ストレんじねス。 〜チートなアイツの怪異事件簿〜  作者: スネオメガネ
怪《かい》の章

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與座の持ち込み企画

「だいぶ、お困りのようやんな? そんな君らに朗報や! 俺が、とっておきの企画をプレゼントしようやないか」


「はぁ? お前……なんか企んでるだろ? そもそも、俺はお前に家の場所なんか教えてないんだが、どうやってここに来たんだ? さては、ストーカーか? えせストーカー?」


 與座の態度が、気に入らないのか、柊が難癖を付け始めた。 えせストーカーって……、それは、もはやストーカーではない。 見ろ! 青木君が戸惑っているじゃないか。


「いやいやいや、そこの青木君やったっけ? は、番組に出てもらいたい。 で、そっちの柊兄(ひいらぎあに)は、霊視できひんから、番組が成り立たんってことやろ? おまけに、河合 美子を引っ張り出さんと、視聴率も取れへんと……。 ま、まとめるとこんなとこやんな?」


 與座が、柊の文句をなかった事にして、話を進める。


「せやったら、簡単な話やん。 霊視できる奴を別で呼んだったらええやん」


「いやいやいや、そもそも、手頃なネタもねぇし……」


「確かにそれは、考えたんですが、ギャラ的に厳しいかと……」


 柊と青木君が、思い思いに口を開く。


「ほな、うちら『山』が、ひと肌抜いだろうやないの。 ネタ……案件は、うちらが用意したる。 ギャラ? 出血大サービスやで? それも、別で呼ぶ分のギャラは、うちら持ちにしたるわ」


 思いっきり怪しい。 あの金の亡者(偏見)の『山』が、ギャラまで出すだなんて、……これは間違いなく、なにか企んでいる。 ……あ、でも、青木君が救世主を見るようなキラキラした目で、與座を見てる。 これは、やばい!


「……いや、それじゃ、まだ弱いか……。 せや、霊能者いっぱい呼んで、みんなで、寄ってたかってボッコボコに除霊したったら、ええやん」


「……えっと、その……追加で呼ぶ人達のギャラも……」


 青木君が、恐る恐る、口を開く。


「もちろん、持ったるわ」


 その一言で、青木君のお尻に、あるはずのない尻尾が見えた気がした。 ものすっごく、ブンブン振り回されている尻尾が……。 チョロいな……


「エセ、お前、変な案件押し付ける気だろ」


 頭をガシガシ掻きながら、柊がため息混じりに呟く。


「大丈夫、大丈夫! 柊兄なら余裕やわ。 番組オンエア後は、依頼が殺到するんちゃう? そらもう、嬉しい悲鳴が鳴り止まんくらいの……。 あぁ、全くもって羨ましいわぁ」


 その言葉で、柊は、夢心地の顔で、遠くを見始めた。 口元にうっすらとヨダレが見えた気がした。 チョロいな……


「せやなぁ、呼ぶんは……」


 そう言って、與座は次々と霊能者の名前を挙げていった。


『その能力は民間一、スーパーカーをこよなく愛するスーパー婆さん、大河内 修蓮!』


『私に落とせぬ霊などいない! 可愛すぎる霊能者、河合 美子』


『メディアには出ないが、実力は折り紙付き! (じん)をもって(しん)を成す! 六道(ろくどう) 仁真(じんしん)


『前世はレムリア大陸の指導者。 スピリチュアルならお任せあれ! ラ・ムー美樹本』


『得意料理はモヤシ料理、旦那が美味しいと言ったから……9/20はモヤシ記念日。 節約霊能主婦! 立川(たちかわ) 明美(あけみ)


『デーハーアロハチート、柊』


『操る鬼は、美少女メイド巫女! もう彼女を作ることは諦めてます、一ノ瀬 航輝』


「……題して、『霊能者バトルロワイヤル』! 間違いなく、特番枠やろ?」


 つらつらと、饒舌に語る與座。 かなり、気分が良さそうだ。 だが……ダサい! 紹介文も企画名も絶妙にダサい!


 修蓮さんに関しては、完全に『山』目線の紹介だし、六道 仁真? 一昔前にメディアにバンバン出てて、いつの間にか消えていった戦う和尚の名で人気を博した霊能者、六道 真念(しんねん)ならわかるが、仁真に関しては初耳だ。 同じ『六道』なので、なにかしらの関係者だとは、思うのだが……。


 そして、忘れもしない、ラ・ムー美樹本。キキに憑かれた僕と臨太郎に変なクリスタルを売りつけようとした怪しい団体の代表だったはずだ。 団体名は忘れてしまったが……。 キキに襲われた、あの二人は、どうなったんだろう? 僕は思わず、キキを見る。 キキは、いつものように小首を傾げている。 あらやだ!かわいい!


 立川 明美は、最近、たまにTVで見かける霊能主婦だが……モヤシ料理が得意なんだ……。 モヤシ記念日……、その情報いる? なんだかんだ地味だな……


 そして、何よりも、柊の紹介が雑!


「……って、僕も入ってる!? しかも、ディスられてる!?」


「そら、そやろ? 自分、こないだ『箱』に憑いとった陰、立派に滅っしとったやん」


「いやいや、あれはキキが……」


「そのメイド巫女を使って、滅っしたんやん? ほな、立派な鬼使いやん。 せやから、仲間外れにはせんもんで、安心し?」


 えぇ! 僕もとうとうTVデビュー? 僕は、ニマニマしてしまう頬を慌てて手で覆う。


「チョロいな……」


 與座がなにか、呟いたような気がするが、『ボン・ボヤージのホラーチャンネル』がバズる妄想で忙しい僕には、どうでもいい話だった。


「オホン! ところで、その人達は……その……大丈夫なの? ってか、本物なの?」


「ん? あぁ、河合 美子以外は、みんな本物の霊能者や」


 正気に戻った僕の質問に與座が答えた。


「……ラ・ムー美樹本も?」


「なんや? ラ・ムー美樹本知っとんの?」


 僕は、キキに憑かれた当初の話をしてみた。


「あぁ、『プラーナ』っちゅう怪しい団体の代表やったな。 ま、やっとることは、立派なマルチ紛いの霊感商法やから、一ノ瀬が心配になるんは、よぉわかるわ。 やっとる事は怪しくても、その能力は本物っちゅうこっちゃ」


「そんな豪華なメンバーが、本当に出てくれるんでしょうか?」


 幻の尻尾を振り回しながら、青木君がおすおずと質問する。


 ってか、豪華メンバーなんだ……


「わからん。 ま、でも出演交渉もギャラも、うちら『山』が責任持って担当するから、安心し? 修蓮の婆さんは、自分らとズブズブの関係やから、まぁ出てくれるやろ? 修蓮の婆さんが出よったら、河合 美子かて出るわなぁ。 あとは、まぁ……なんとかなるやろ? 最悪、柊兄と修蓮の婆さん、河合 美子、一ノ瀬で番組的には成立する訳やし……特番枠ではなくなるかもしらんけど……」


 途端に安堵の表情を浮かべた青木君。


「あ、ところで、そのちょいちょい出てくる『山』ってのは、なんなんですか?」


 そうか……。


 青木君に『山』との接点がなかった事に、今更ながら気付かされた。 僕は、青木君に『山』が、どれだけ金に汚いかを懇切丁寧に説明した。


「いや、別に金への執着が強い訳やないんやけどな……」


 これには、與座も苦笑いだ。


「と、まぁ、そんな訳やから、安心して、この企画に乗っかってええんやで。 せや、ついでに『山』の法師も一人参加させたるわ。 もちろん、メディア初出やで?」


 ここまで聞いたら、企画名はダサいが、豪華な企画に思えた。 なにしろ、謎の霊能集団『山』の法師まで出るというのだから……

 逆に、そこまでのメンバーを集めなければならない案件と言うのが、やけに気になった。


「案件の内容? それは、みんなで霊視して、解決して欲しいねんから、もちろん内緒やで?」


 與座は、そう言いながら、……ウインクした。 目が細いので、片方の瞼が痙攣しただけのように見えたが、……多分……ウインクだ。 ……きっと。


「あぁ、そうそう! 青木君! もし、上司が、この企画ダメって言ったら、『山』の名前出しとき? たぶん、TV局のお偉いさんなら、『山』の事、知っとると思うから……」


 去り際にそう言いながら、言いたい放題言った與座は、上機嫌で帰っていった。

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[良い点] お、再開してる! また読ませていただきます!
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