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ストレんじねス。 〜チートなアイツの怪異事件簿〜  作者: スネオメガネ
怪《かい》の章

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祖母の死

 僕が、白い影の訪問を忘れて、マンガに没頭し始めた時、不意にこども携帯が鳴った。 母からだった。


「もしもし? どうしたの?」


「タケルっ! 大丈夫?」


「ん、なにが?」


「なにか、……変わった事なかった?」


「変わった事? 」


 僕は、首を捻った。 変な客が来た事は、変わった事と言えば、変わった事だったが、こんな切羽詰まった母に言うような内容でもないように思えた。


「ん~、特に何もないよ?」


「……そう、よかった。 じゃあ、婆ちゃんに代わってもらえる?」


「ばあちゃん、畑行ってて、今いないよ」


「そっか……。 ごめんね、変な事聞いて……。 何もないなら、いいわ」


 結局、よく分からないまま、母との通話が終わった。 僕は、訝しがりながらも、再び、マンガの世界へと飛び込んだ。


 ……


 ふと空腹を感じ、時計を見ると、13時を過ぎていた。 ばあちゃん、遅いな。 そんな事をぼんやり考えていた時だった。


 ガンガンガン。


 玄関の戸が、乱暴に叩かれた。


「タケちゃんいる!?」


 焦った感じの女性の声が聞こえてきた。


「……どちら様ですか?」


 僕は、先程の訪問者の事を思い出しながら、そっと玄関に近寄った。


「竹田のおばちゃんだけど、おばあちゃんが……」


 竹田のおばちゃん。 祖母の家の斜め向かいの家に住んでいるおばちゃんだ。 おばちゃんの息子であるナオ君には、よく遊んでもらっている。 ナオ君は、僕より一つ上の学年で、祖母の家に泊まりに来た時には、いつも、いろんな遊びを教えてもらっていた。 今回も、ちょうど明日くらいに誘って、一緒に遊ぼうと思っていたところだった。


「どうしたの?」


 僕は玄関の鍵を開けながら尋ねた。 鍵が開くと、ほぼ同時に戸が乱暴に開けられた。 そこには、顔を青くしたおばちゃんが立っていた。


「落ち着いてね……。 おばあちゃんが、大変なの!」


 竹田のおばちゃんは、一気にまくし立ててきた。


「今、お母さんがこっちに向かってくれてるけど、あと1時間30分は掛かるみたいだから、タケちゃんは家に来て、直樹(なおき)と遊んでてくれる? あ、お昼も食べてないよね? じゃあ、先にお昼食べよう!」


 状況は、よく分からないが、なにか大変な事が起きてるらしい事は、子供ながらに理解できた。 僕は、竹田のおばちゃんの家で、焼きそばをご馳走になり、ナオ君の部屋で時間を過ごした。


 ただ、何が起きているのか、わからない不安から、素直に遊ぶ気になれず、上の空でナオ君の持っているマンガのページをパラパラと捲りながら、母が来るのを待っていた。 ナオ君は、そんな僕を、同じようにマンガを読みながら、そっと見守ってくれていた。


 しばらくすると、母がやってきた。 少し息が荒かったのは、駅から走ってきたせいなのだろう。


「タケル! ……よかった。 あんたは無事なのね……」


 やってきた母は、僕を抱きしめて、そう呟くと、再び僕を離し、しっかりと顔を見て言った。


「お母さん、今からおばあちゃんのところに行ってくるから、もうしばらく、竹田のおばちゃんちで待っててね」


 そう言った母の目は、少し涙目に見えた。


「すいません。 もうしばらく、タケルのことをお願いします」


 母は、竹田のおばちゃんにそう言うと、また慌てて家を飛び出していった。 一体、何が起こっているのたろう……


「ねぇ、おばあちゃん……どうしたの?」


 僕は、意を決して、竹田のおばちゃんに尋ねてみた。 おばちゃんは、悲しそうな顔をした後、俯いたまま、黙りこくってしまった。


 ……


 しばらくの沈黙の後、竹田のおばちゃんは、ゆっくりと声を出した。


「あのね、おばあちゃんね……畑でね……亡くなったの」


 衝撃だった。


「な、なんで!?」


 ……


 再びの沈黙。


「今、お母さんが、詳しい事を聞きにお巡りさんのとこに行ってるから……」


 祖母は、朝、あんなに元気に畑に向かったのに……。 朝ごはんを一緒に食べながら、畑から帰ってきたら、お昼を食べて、庭にビニールプールを作るから、午後は水遊びでもしようと話していた祖母……。 もう4年生なんだから、ビニールプールなんて入らないよ、と文句を言うと、そうかそうか、と笑っていた祖母が……


 僕は、泣いた。


 そこからは、あまり覚えていないが、夜、母は父と一緒に戻ってきて、二人は、もう二度と祖母に会えない事を僕に告げた。 夜、祖母の家で、母が簡単に何か作るわね、と言って、夕飯に焼きそばを作ってくれた。 昼も焼きそばだった事は、黙っていた。


 その晩、客間に布団を敷いてもらった僕は、なかなか眠れずにいた。 隣の襖の向こうから、両親の話し声がボソボソと聞こえてきた。


「……先に、火葬し……骨葬(こつそう)って言うらしい」


「はぁ、最期の……タケルに見せられ……なんて……」


「仕方……さ……。 アレは、タケルには……ない方がいい」


 所々、聞き取りにくい所はあるが、辛うじて、内容はわかった。


「…………アレ……よね?」


「たぶん……。 でも、ここに……でた俺でも、初め………ぞ? 本当に……なんて、思い……なかった。 てっきり、ただの…………かと思ってたよ」


「ふぅ……私はタケルが心配。 今日ね、……から電話があったの」


「……実家から?」


「そ、……にね、良くないモノが…………って」


「おいおい、マジか?」


「だから、慌ててタケルに電話し……けど、あの子、なん……ないって……。 きっと、……間違いだと……たんだけど……その矢先にコレでしょ? 私……怖くなっちゃって……」


「…………あいつ……大丈夫かな……」


 そう父の声が聞こえた所で、襖が開いた。 僕は、慌てて目を瞑り、寝たフリをした。


「……どうだった?」


 襖が再び閉まった後、母の声が聞こえた。


「……気持ちよさそうに寝てたよ」


 ……


「俺達も、もう寝よう。 ……明日から、バタバタすると思うし……」


「……そうね」


 それを聞いて、僕は本当に寝てしまったようで、気が付くと朝になっていた。

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