新宿御苑 誰がいく?
「……と、まぁ、これがウチとアイツ……ラ・ムーとの関係ってやつ? これで、情報の共有に関しては、満足って事でよござんすか? よごさんすね?」
女子高生の語りが止むと、会議室は異様な静けさに包まれた。
転生? 卑弥呼? 邪馬台国?
予め、聞きかじってた内容に加え、初耳の内容が多すぎて頭がついていかない……
加えて、壮絶な内容を、まるで放課後のハンバーガーショップで語る愚痴のような軽い口調で話されたせいで、心もついていかない……
周りの部長さん達も感じる事は同じようで、皆、一様に押し黙っていた。
でも、なんとなく、女子高生……卑弥呼は、そんなにラ・ムーの事を憎んでいないんじゃないかって、ぼんやりと感じた。
「一つ、よろしいでしょうか?」
そんな中、メガネの地味なおじさんが手を挙げた。
「伊藤経理部長……どうぞ」
あの人、経理部長だったんだ。 なるほど、言われてみれば、"経理"って感じがしてくる。 ……多分。
「えぇと、非常に壮大なお話をありがとうございました。 そんな中、個人的な興味で恐縮なんですが、結局、……邪馬台国はどこにあったんでしょうか?」
は?
えぇ~、そこ!?
今、そこっ!?
この空気の中で、敢えてのそこぉっ!?
伊藤経理部長……恐るべし。
「あぁ、それね。 まぁ、でも、そこは言わない方がロマンがあるんじゃない? みたいな? ただ、ヒントを言うと、魏志倭人伝だっけ? あれってかなり正確に方角と距離が書いてあるのよね。 ただ、一つ残念だったのは、当時の日本がまだ龍の封印がされてなかったもんだから……。 要はね……寝相が悪かったのよ、龍……。 つまり、なんて言うの? えっと、向きが違ったの……日本の……。 後は、自分たちで想像してみて? みたいな?」
「ありがとうございます。 あとは、酒の肴にググりながら検証してみます」
伊藤経理部長は、一礼するとあっさりと引き下がった。
でも、邪馬台国の場所って、日本史に残された謎の一つだったよね? どっかで"遷都"がどうとか聞いた事がある気がするけど……。
真相は、龍の寝相のせいで日本の向きが違ったってのと、卑弥呼が関わった国が二つあったって事?
……いやいやいや、無理ゲーじゃん!
歴史学者が聞いたら、本当、怒られる奴じゃん!
……でも、これ聞いたら和泉さんと真由美ママ、どんな反応するんだろ? あの二人、こういう話好きだったもんね。
僕は、思わず、心の中でニマニマしてしまった。
「じゃ、情報の共有はオッケーって事で、話を戻して、新宿御苑に誰が行くかって話なんだけど……。 安倍っち、どう?」
「どう? って言われても……。 ちなみに呪霊のレベルはどうなんだい?」
いきなり話を振られた安倍さんが、苦笑いしながら答える。
「呪霊のレベルは、特妖級以上を想定していただければ、間違いないかと……。 ただ、万が一、平将門が復活した場合は……神クラスになりますので、国滅級に対処できるメンバーをご選定ください」
安倍さんの問いに、イヨさん……あの壱与さんなんだよな……が、丁寧に答える。
「ふむ……。 数は?」
「呪霊が……五体かと……」
「……そうだね、そうなると…… 隼部隊は確定でいいかな。 あとは、……人成、もちろん行ってくれよな? 」
「あぁ、やっぱり、そうなりますよね」
安倍さんに話を振られた山村が、天パ頭をボリボリ掻きながら、めんどくさそうに答える。
「あとは……もちろん僕も行くとして……。 あぁ、全然人数が足りないな。 呪霊が特妖級って考えると、その数に合わせて、最低でもあと二人は欲しい……。 もちろん鷹斗はダメなんだろ?」
おぉ、こないだ会ったばかりなのに、ファーストネームで呼び捨てだ!
恐る恐る、柊を見ると、すんごい眉間に皺を寄せていた。
「柊 鷹斗様に関しましては、楠瀬さんとともに、当代様の儀式にご同行いただきますので……」
「あ、その事ですが、僕は辞退します。 行きません。 好きにやらせてもらいます。 ですです」
「おまっ! 勝手な事言ってんじゃねぇよ!」
壱与さんの言葉に楠瀬が、まさかの辞退宣言! それに山村が唾を飛ばしながら、ツッコんだ。
「なにか? 別にいいじゃないですか。 そもそも、僕の専門は、"刺し"ですからね。 妖とのバトルとか、専門外です。ですです。 命あっての物種ですから。 それとも、山村さんは、僕に命を賭けろとでも? どこまで傲慢なんですか? ラ・ムーですか?」
「ぐぬぬぬ……」
「承知いたしました。 残念ですが、楠瀬さんは辞退の方向で……」
楠瀬君の言葉に、山村が悔しがり、壱与さんが は冷静に受け入れた。
ってか、楠瀬君、自由過ぎるだろ……
「あ~ちょっと、いいかな?」
そんなやり取りの中、ずっと、気難しそうな顔で聞いていた烏丸生産部長が声をあげた。
「……どうぞ」
「そこの楠瀬 海月君?が、行かないなら、一人推薦したいんだが……」
「どなたでしょう?」
「うん、柊 隼斗だ」
「なっ!?」
烏丸生産部長の意外な提案に、安倍がなんとも言えない声を漏らす。
「まぁ、芦屋呪術部長とラ・ムー美樹本の戦いについて聞かせてもらったが、……どうも、『運』を操る妖を使役している可能性がありそうだ。 ソイツの権能を考えると、こないだ新法具を渡した柊 隼斗が適任だと思うんだがね」
「…………承知いたしました。 では、柊兄弟は、当代様に同行していただきます」
烏丸生産部長の提案に、少し思案した後、壱与さんが答えた。
「待った! 待ってください! それじゃ、新宿はどうするんすか? アタッカーのいない隼部隊じゃ、不安すぎる……」
声を上げたのは、山村だった。
きっと、安倍さんも同じ気持ちだったんだろうな。 すごい頷いてる。 ってか、この二人、山村は安倍さんの苦手みたいなこと言うけど……元上司部下だけあって、結構、気が合ってんだよなぁ。
「……あぁ~、一人……ちょっと……いや、かなり経験が足りないけど、心当たりがあるなぁ。 うん、戦闘スタイルも隼斗に似てるし、背に腹はかえられないし……。 まぁ、隼部隊に混ぜれば、使えそうなのが一人いるよ」
安倍さんが、コメカミに指を当てながら、絞り出すように声を上げた。
……でも、これで振り出しに戻っただけで、あと二人足りないのは、変わんないんだよなぁ。
どうするつもりなんだろ?




