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ストレんじねス。 〜チートなアイツの怪異事件簿〜  作者: スネオメガネ
業《ごう》の章

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ラ・ムーの悲劇 ~フート終焉奇譚~

 アイツの未来視の出来なさっぷりは、本当に酷かったわ。


 まだ幼い壱与の方が、才能がある感じ。


 で、ウチも、それまで、なんとな~くでやってた占いに、アイツに教えてもらった(アストラル)界への干渉と読み取りを意識する事で、格段に精度が上がっていったわけ。


 そうなると、俄然、気になってくるじゃん? なんでそこまで、適正ないのに未来視にこだわるんって。


 そしたら、言うの。


「未来視ができなかったせいで、故郷を亡くしたのさ」


 ってね。


 で、まぁ、こっからはアイツから聞いた話だから、どこまで本当かは、あやふやプーなんだけど……、ちょっち、アイツの過去について話すね。 どうでもよかったら、寝ててもオッケーってことで。


 アイツは……ラ・ムーは、何度も生まれ変わってるけど、元々は太古に失われた島国の神官長だった。


 その島国ってのは、何度も話に出てるからわかると思うけど、『フート』ってとこ。


『フート』はさ、(アストラル)界と現実界の狭間に生息する、巨大な魚の名前でね。 ラ・ムー達は、その上に国を作ったフート人って奴だったの。


 で、『フート』の影響で、フート人達は、みんな不思議な力を使えたらしいわけ。 フート人は、みんな魂から『本』を引き出して、特性にあった力が使えたって、感じ。


 当時は、『本』って言われても、なんのことやら、みたいな感じだったんだけどね。 文字をいっぱい書いた紙の束を纏めて、読みやすくしたもんだって教えてもらったわ。


『フート』は、各々の特殊な能力を使って、独自に文明を発展していった国だったの。 それはもう、当時の周辺の人類と大きな差ができるほど……。


 で、フートは、代々、神官長が王様みたいになるんだけど、多くの神官が未来視ができる中、一番若くて、未来視の出来ないラ・ムーが神官長に選ばれたわけ。


 その理由は、アイツの黒い『本』の能力によるものだった……


 アイツの持つ『本』は、直接、(アストラル)界に干渉できるっていう、稀有な能力だったらしいの。


 要は、(アストラル)界の住人、妖や悪魔、天使や神ってのに、直接、お願いができるチート能力ってやつ。


 もちろん、他の神官はおもしろくないよね? でも、先代の神官長とか他のおじいちゃんとかは、全然気にしなかったんよ。 おま、それすげぇじゃん! 天下とれちゃうじゃん! みたいな?


 で、未来視できひんけど、未来視必要な時は、他のやつがやったればいいじゃん? ってなって、ラ・ムーが神官長に選ばれたらしいのよね。


 先代達の読み通り、アイツはいろんなトラブルを余裕で解決してった。 他の神官達に未来視は頼むけど、あんま意味ないかもなぁなんて、思い始めてたんよ。


 で、驕った……


 周りの原始人達を見よ!

 あえて言おう!

 カスであるとっ!


 我々は、彼らを教え、導いてやらねばならない!

 ゆえに、我々は、この小さなフートの上だけでなく、世界へ進出しなければならないのであ~る! キリッ!


 みたいな?


 本当、アジャパ~だよね……


 まぁ、でもぶっちゃけ、それは無理な話だったわけ。 なんせ、『本』の力が使えるのは、『フート』の上でだけだったんだから……


 そんなこんなで、いろんなとこから、反対の声が上がったわけ。 ちょっ! おま、それ無理ゲーやんっ!みたいな?


 でも、アイツはチートだったし、頭もよかったから、思いついちゃったのよ。 フート人が世界に進出する方法を……


 それは、『フート』に、(アストラル)界の住人達、いわゆる妖とか魑魅魍魎ね……をエサとして、どんどん喰わせて、肥え太らせて……肥大化した『フート』に、この星ごと喰わせてやるって、ムチャなアイデアだったの……


 そしたら、世界中のどこにいても、力が使えるって。


 私ならできるっ!

 いや、私にしかできないっ!


 …………


 もちろん、理論的には可能だけど、やっぱりムチャかもしんないってのは本人も思ってた。 だから、他の神官達に相談したの。 未来視のできる……


 でも、ソイツら口を揃えて言ったの。


 オッケーで~す!

 パーペキなアイデアっす。

 まじパネぇっす!


 みたいな?


 で、アイツはそれを実行に移した。

 満月の晩を選んで。

 島の端、ギリギリ『本』の力が使えるとこで、舟に乗って……


 どんどん喰え! どんどん喰え!って


 魑魅魍魎達をどんどん差し出した……


『フート』は喰った。


 どんどん喰った。


 与えられるままに喰った……


 途中で、神官達が船に乗って様子を見に来た。 みんな家族まで連れて……


 アイツは、成功を確信して言った。


 見ろ! 『フート』を! 星を喰らえる程、肥大化するまで、あと少しだ! これで、未来は我々のものだっ!


 ってね……





 パン




『フート』は爆ぜた……


 その上に住む者達もろとも……


 アイツの眼前には、初めから何もなかったかのように、なんの痕跡もない、ただただ満月を映し出してる大海原だけ。

 強いて言うなら、ちょっち波が荒れてるなぁ、くらい?


 で、フートの欠片を浴び、血に塗れたアイツは呆然と、その大海原を見てた……。


 最初は、何が起きたのか、まったく理解できなかった。


 で、状況がわかってきて、脳裏に浮かんだのは、まだ健在だった両親や、親友、将来を約束した恋人の顔だったんだって……


 次に浮かんだのは、後悔……。 もし、未来視が出来てたら……って。


 そんな、アイツの耳に突然、笑い声が聞こえた。


 そら見たことか!

 未来視の出来ない奴を神官長なんぞにするから、滅びるのだ! と。


 家族とともに海上に避難していた、他の神官達だった。


 …………


 アイツは本気でキレた。


 自分を嘲笑うためだけに『フート』を、その上に住む住民もろとも、犠牲にしたのか? と。

 しかも、自分たちだけ、安全な船の上に避難して……。 おまけに家族まで連れて……ってね。


 コイツらには、死すらも生ぬるいっ!


 …………


 アイツは……本気でキレると、頭の中が真っ白になるんだぜ?って、笑ってたよ……。 その笑顔は……確かに顔は笑ってたのに、なんだか……なんだかすごく寂しそうに見えたんだ……


 黒い『本』を片手に暴れまくった結果、神官達は、"ひとかたまり"に圧縮され……それでも、死ねない妖に変貌していた。


 殺してくれ……って、嘆く一体の妖に……


 たぶん、(アストラル)界の魂魄に、直接、干渉したんだろうね。


 今でも、その妖は、(アストラル)界で、「殺してくれ、死なせてくれ」って永劫に続く苦痛に苦しみながら蠢いてんだって……


 そうやって、『フート』は、アイツ一人残して……滅亡したわけ。


 ……それから、アイツは転生を繰り返しながら、爆ぜて散り散りになったフートの欠片を集めて、また、『フート』を復活させるために……彷徨ってた……ううん、彷徨ってるの……

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