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ストレんじねス。 〜チートなアイツの怪異事件簿〜  作者: スネオメガネ
神《しん》の章

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美人さん

 土偶があった、その場所には、巫女姿の絶世の美女が浮いていたのだ。


 太陽を模した額当てに真っ白な着物と赤い帯。 首には、勾玉を使った首飾り。 それは、僕が子供の頃に読んだ『マンガで読む日本の歴史』に出てくる卑弥呼の姿そのものだった。 目を閉じて、薄らと後光が見える、その姿は神々しく、まさに神だった。


「……醜女……って、言ってませんでしたっけ?」


「……いや、俺は言ってないけど……、確かに俺もそう聞いてたなぁ」


「むっちゃ美人…….ですよね?」


「……そうだな。 ……まぁ、アレだ。 昔の美人は今のブスって言うだろ? ……昔は、あれが醜女に見えたんだろ……。 知らんけど……」


 息を飲みながら呟く僕に、山村が適当に答えてくれる。


「柊の奴……あの美人さんを特殊警棒で殴り倒すんですよね?」


「……だな」


「……アロハなんて着て……」


「……着てるなぁ」


「…………それって、完全にDVヒモ男みたいな絵面(えずら)ですよね?」


「……だね。 なんか……こう……美人占い師の彼女に暴力を振るうDV彼氏……みたいな感じになるよな?」


「……ですね」


「パチンコ代をおねだりして、断られたのかな? って感じだよな……」


 そんな不毛なやり取りをしていたら、美人さんがスーッと床に降り立って、ゆっくりと目を開けた。 その瞳は左目が黄色で右目が青色と、左右で違う色をしていた。 いわゆるオッドアイという奴だ。 まるでファンタジーのキャラクターみたいだ。


「……金目銀目(ヘテロクロミア)だ。 うちのシラタキもそうなんだけど、白猫に多いんだよね」


「へぇ……」


「……人間に先天的に現れるのは稀なんだが、後天的になる場合は、目の病気が原因の事が多くてね……。 昔は、そんな事わからないからさ……。 畏れられたんだろうな……、普通じゃないから……。 それが理由かはわかんないけど、神や悪魔クラスになると多いよ。 金目銀目(ヘテロクロミア)


 解説の山村が、細かく説明してくれる。


「……『山』の法師ってのは、みんな、そんな事まで詳しいんですか?」


「……いや、たまたま俺は、興味があって調べただけだから……。 他の奴は、そこまで詳しくないよ。 だって、カッコイイじゃん、金目銀目(ヘテロクロミア)


 案外、厨二っぽい。


「……控えよ。 ()は、荒覇吐なるぞ」


 山村と無駄口を叩いていると、美人さんが左手を前に出しながら、凛とした声を出す。


「初めまして。 僕は、『山』から来た安倍って者なんだけど……、まぁ、覚えなくてもいいよ。 すぐお別れになる訳だしね……。 と、言うことで、長い眠りから覚めたところ申し訳ないんだけど、これから貴女を滅ぼさせてもらうよ」


 すごいな、あのイケおじ!


 あの神々しさに臆する事なく、堂々と宣戦布告するなんて!


「……ふむ。 ()の眠りを妨げたは、それが理由であったか……」


 美人さんは、まったく動揺することなく、そう言うと、周りを見回した。


「……舐められたものよ」


 美人さんは、そうボソリと呟くと、前に翳していた左手を目の前に立っている柊に向けると、グッと握った。


「?」


 そして、なぜか首を傾げる美人さん。 今度は、イケおじに向かって、手を翳し同じようにグッと握った。



「おっと!」


 キィン!


 イケおじは、腰に携えていた刀の鍔を鳴らす。


「……なるほど。 異能者か……」


 美人さんは、興味なさそうな顔で、ボソリと呟く。


「……なんだったんだろう? 今のやり取り……」


「あれは、刀をちょっと浮かして、(つば)を鞘の鯉口(こいぐち)に当てて音を出してるんだよ。 いわゆる鍔鳴りって奴なんだけど……霊刀でやれば魔除けになるんだ。 魄くらいなら、あの音だけで消滅するよ」


 思わず呟いた独り言に、山村が説明をしてくれる。 ……ってことは、今、何かしようとしてたってこと?


「多分、柊兄に向かって、神通力で攻撃したけど、何も起きなかったから、標的を変えてみたんだろう。 まぁ、神とか悪魔クラスになると、神通力っていう超能力みたいなのを使う事が多いんだよね……。 まぁ、対処法はいろいろあるんだけど……。 でもって、その標的になった安倍部長がわかりやすく、それを防いで見せたもんだから、柊兄も何かしらの術で対抗した……って思ってるんだろうな。 あの荒覇吐……」


 おぉ、最初聞いた時は、あまりメリットを感じなかったが、解説付きってかなりいいかも。 今のやり取りも解説なしなら、全然、わからないままだったのだから。


「あの安倍って人も、刀を使うんですか?」


「いや、あの人が使うのは、主に式神だよ。 でも、なんかカッコつけて持ってんだよ……。 かなりいい霊刀()を……」


 カッコつけてって……


「一ノ瀬君、一応、結界張っとくから、そこから出ないようにね」


 山村は、そう言いながら、懐から取り出した御札。 いわゆる符を四枚僕と山村を囲うように床に置いた。


「これ、烏丸さんとこから買った結界符だよ」


 そう言いながら、口の端をクイッとする山村。


「熱烈なアプローチをしてくれたところ、悪いんだけど、残念ながら、貴女の相手は、そこの彼なんだ」


 そうこうするうちに、イケおじはそう言って、懐から折り紙で折ったヤッコさんのような物を何枚か取り出すと、バッと宙に投げる。 放り投げられたヤッコさん達は、床に落ちることなく、柊弟と安倍を囲むように宙でピタッと止まる。


 同じようなタイミングで、隼部隊の女の人、確か『岸壁の京子』だったはずだ。 が、山村と同じように符を床に並べる。 こちらも結界符なんだろう。


「あの人は、ああやって折り紙で作った式神を使って、結界を張るんだ。 ああ見えて、結構強力な結界なんだ」


 山村がイケおじの方を見て呟く。


 美人さんはと言うと、イケおじの言葉で柊の方を見ていた。 きっと、一部の界隈の人からしたら、ご褒美になるであろう、冷たい視線だった……


 その瞬間、美人さんが消えた……と思ったら、いつの間にか柊の背後に回り込んでいた。


 あっ!


 と思った瞬間、背後から美人さんの手が柊の身体を貫いた。


「……他愛もなし。 なんの手応えもないわ……。 で? 次は誰ぞ?」


 美人さんが手を柊から抜いて、振り向きながら笑みを浮かべた。 抜いた手をそのままべロリと舐める。 妙に色っぽい。 が、そこで何かに気付いたように、自分の手を見る。


「?」


 なんだか不思議そうに首を傾げながら、自分の手を見つめる。 なんだろう?


「……血が……」


 美人さんがそう言いながら、再び、柊の方を振り返る。


 その瞬間、柊が手にしていた特殊警棒が唸った。


「つびげらっ!」


 美人さんは、無様な声を上げて、綺麗に吹っ飛んで行った。 美人さんが台無しだ……


「あ~、多分、柊の血が手に付いてない事が不思議だったんだろう……。 でもって、そこに柊兄の特殊警棒による強襲が実行された……ってとこかな……」


 うん、そこは解説がなくても、なんとなくわかった。


 っていうか、やっぱり、絵面的に酷いことになったなぁ。 僕は、床に倒れ込んだ美人さんを見て、そう思った。

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― 新着の感想 ―
[一言] 醜は古い意味の方なんかな? 醜いでは無く強い? 何やら話せば通じそうなんだが……
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