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ストレんじねス。 〜チートなアイツの怪異事件簿〜  作者: スネオメガネ
神《しん》の章

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除厄式作戦会議 前編

「……うぅ、どうしよう……。 大丈夫かな……」


 作戦会議を控え、僕は緊張の真っ只中にいた。


「大丈夫もなにも、ドンと構えとったらええやん」


 緊張で破裂しそうな僕に、與座が如何にも他人事な感想を述べる。 そんな事言う奴は、豆腐の角に頭をぶつけて死んでしまえばいいのに……


 除厄式中の話し相手が欲しいという、しょうもない理由で、山村が僕を巻き込んだせいで、参加者のみの作戦会議に参加する事が決まってしまったのだ。

 一方、柊はと言えば、三善さんとの特訓から解放され、晴々とした表情で作戦会議を迎えようとしていた。


「ま、なるようになるさ」


 こちらも他人事である。 あぁ、くそっ! 心配してくれるのは、キキだけだ。 僕は助けを求めるようにキキを見る。 キキは、少し困ったような顔をして、小さく首を振った。 あぁ、もう、可愛いな! くそっ!


「ほな、入るで」


 與座の言葉で、会議室の立派な扉が開かれた。


 中の人達の視線が一斉に注がれる。 うわぁ、やっぱり断れば良かった……


 ◇ ◇ ◇


 與座が扉を開く数刻前、芦屋 道長はイラついていた。


 理由は、単純だ。 (くだん)の柊 鷹斗が追加してきた、除厄式参加の条件のせいであった。


『自分のアシスタントを参加させないと、自分も参加しない』


 何様だ? と思った。 小学生の社会科見学か何かと勘違いしているのではないか? と。


 中途半端な奴が作戦に参加すると、作戦の成功率、ひいては参加者の生存率に影響する……。 その芦屋の考えを真っ向からバカにするような条件ではないか。

 いくら、自分が信頼している山村のお墨付きであろうが、そんな素人臭い事を言い出す奴がマトモな訳がない。 節分までの期間は短いが、今からでも作戦の中止を提案しよう。


 それが芦屋の考えだった。


 貧乏揺すりをしながら、苛立ちを隠そうともしない芦屋は、扉を開けて入ってきた者達を見て、怒りを忘れた。


(なんだ? アレは……)


 與座に続いて入ってきたのは、柊 鷹斗だろう。髪を茶色く染めているのと、ロンTにアロハというチンピラ風の格好のせいで雰囲気はかなり違うが、外見は隼部隊の隊長、柊 隼斗によく似ていた。

 だが、芦屋が驚きを覚えたのは、柊 鷹斗の姿を見て……ではない。芦屋が、その姿を見てギョッとしたのは、その後に続いて入ってきた気弱そうな地味な青年のせいだった。 否、正確には、その青年に憑いている(おん)によるものだった。


 額に符が貼られたメイド……という、まるで悪ふざけのような風貌の陰……。 だが、そこから発せられる瘴気はタダならぬものがあった。

 おそらく額の符の力だろうが、かなり巨大で禍々しい瘴気を無理矢理抑え込んでいる……そんな瘴気だった。 芦屋の見立てでは、その瘴気は、符がなければ土着神並の瘴気のように思われた……。 そんな陰を使役していると思われるモブ顔の青年……


『アシスタント』


 なるほど、山村がチートだという『赤の書』の所有者は、そのアシスタントもまたチートなのだろう。


(こりゃ、一本取られたな……)


 芦屋は、モブこと、一ノ瀬 航輝の姿を見て、『作戦の中止を提案する』という考えを捨てた。


 ◇ ◇ ◇


 一方、安倍もまた入ってきたメンバーを見て、衝撃を受けていた。


(うっわぁ。 あれが柊 隼斗の兄かぁ。 確かに顔は似てる……。 似てはいるんだが……)


 いつも、学生服のような黒ずくめを好んで着る隼斗に対して、黒いロンTに紫のアロハという派手な出で立ち。 なるほど、双子とは言え、反りが合わなさそうではある。


(ありゃあ、隼斗の性格なら、確かにいろいろ溜まるかもなぁ。 まぁ、知らんけど……)


 続いて、入ってきたのは地味な青年だった。 特筆すべき点は何も無い、有象無象のモブ……。 それが、安倍の感想だった。 ただ、彼に寄り添うように憑いている陰さえいなければ……の話である。


(あっちが(くだん)のアシスタントかぁ。 ……なるほど、わざわざ現場に出たいなんて、とんだ物好きだとは思ったけど……、あの陰がボディガードなら、天狗になっていてもおかしくないかもね……。 ま、僕に火の粉が飛んでこなければ、どうでもいいんだけどね……)


「………ふっ」


 安倍は、あらゆる感情を飲み込んで、いつものように、なるべく格好付けて笑ってみた。


 ◇ ◇ ◇


 部屋に入ると、入口に近い所にスキンヘッドが四つ並んでいた。 その四つのスキンヘッドが一斉にこちらを見てくる。


 一番奥には、黒髪ロングヘアの綺麗な女性が無表情でこちらを見ており、右側の壁際には、やたら爽やかな笑みを浮かべるイケおじ、黒髪の柊っぽい青年、眼帯をして厳しい表情を浮かべる渋いおじさん、その隣に山村、さらにその隣には地味なおじさんがソワソワしながら座っていた。 相変わらず、空気を読まないのか、山村が小さくヒラヒラと手を振っている。


 なるほど、黒髪の柊っぽいのが、柊の双子の弟なんだろう。 その全身黒のコーディネートは柊と対照的に見えた。


 僕らが座るのは、左側の壁際の席のようだった。 その奥には既にメガネを掛けた真面目そうな人が座っており、與座がその隣に座った。


 僕らは、その隣に座るということだろう。 ちなみにキキには椅子がない。


 そんな僕らの挙動を、與座と山村以外の全ての人が見つめてくる。 その視線は厳しいものや、何故か驚愕に見開かれるものがあり、かなりの居心地の悪さを感じる。


 やはり、場違いなところに来てしまったようだ……


「では、皆さんお揃いのようなので……、これより、除厄式作戦会議を始めます」


 僕らが、席に着いたのを見計らい、奥の黒ずくめの女性が口を開いた。

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