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ストレんじねス。 〜チートなアイツの怪異事件簿〜  作者: スネオメガネ
書《しょ》の章

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125/190

体調を崩してました。

再開します。m(_ _)m

 気が付くと、僕は真っ暗な闇の中にいた。


 ?


 あれ? なんで、こんなとこにいるんだろ?


 そう思いながら、周りを見回すが、真っ暗闇で何も見えない。 思えば、ここ最近、ずっとキキと一緒にいたせいで、全くの一人っきりってのはなかったなぁ。 そな事をぼんやりと考えていた。


 ……


 なんだか、急に心細くなってきた。


 確か、みんなで集まって、アメージングの特番を見て、途中で三善さんと柊の出逢いの話になって……。そうだ。……確か、柊が工場で期間工をやってたって意外過ぎる過去が明らかになったんだった。


 本が柊に移って、妖退治の方が稼げるってんで、期間工の契約が切れたタイミングで更新をやめて、三善さんにいろいろ教わったって言ってた。 三善さんが知り合いの空手かなんかの道場で、主に体術とかを叩き込まれたって言ってたな……


 その後、柊の仕事の話になって……なんだかんだ辻褄屋との仕事が一番美味しいって話になって……


 それで……遅くなったからってんで、テーブルをみんなで片付けて……そこに男性陣の布団を敷いて……


 そっか。 ……じゃ、これは夢だ。


 夢の中で夢と気付く……確か、明晰夢って言われる奴だ。 真っ暗闇の中で心細くなっていた僕の心に、夢だとわかった途端、急に安堵が広がった。


 ……でも……夢だったとして……なんでこんな暗闇の中にいるんだ?


「……あぁ、ようやく……繋がった」


 不意に誰かの声が響いた。


 慌てて、声のする方を見ると、まるでスポットライトに照らされているような感じで、着物と袴に身を包み、帽子を被った、見覚えのない男性が立っていた。


 ……誰?


「……まぁ、そんな怪訝な顔をしないで……こっちに来たまへ。 一ノ瀬……航輝君、珈琲でも一緒に飲もうじゃないか」


 男はそう言うと、パチンと指を鳴らした。 すると、コーヒーカップが二つ乗った丸テーブルが、男性の隣に出現した。


 ……流石、夢だ。 まったくの脈絡のなさに、我ながら意味不明過ぎる。


「えっと……あなたは誰です……か?」


 男性は、丸テーブルに肘を置くと、ズズッとコーヒーを啜った。


「……僕は、椿(つばき)。 椿 三郎(さぶろう)だ」


 椿 三郎……。 全く聞き覚えがない……。 我が夢ながら、まったく訳がわからない。 なんで聞き覚えのない男が出てくるんだろう? そんな小説でも読んだっけ?


「赤い本……と、言った方が、君にはわかりやすいかな?」


 !


 赤い本?

 柊に慿いている赤い本?

 なんで?

 椿 三郎?

 赤い本が?


「まぁ、いきなりこんな話をされたら、混乱するのもわかるが、せっかく繋がれたんだ。 少し落ち着いて欲しいものだ。 さ、こっちに来て、珈琲でも飲みたまへ」


 僕は、このままでは話が進まない……と、恐る恐る彼の傍の丸テーブルへ進んだ。


「えっと……じゃ、いただきます」


 ズズ


 コーヒーを啜ると、少し落ち着いてきた。 なんだろう。 いろいろ聞きたい事が頭に浮かんでは消えていく。


 ……OK、一旦、落ち着こう。


「コーヒーの味がする……」


「まぁ、珈琲だからね。 なかなかハイカラだろ? 僕は、この珈琲というものが好きでね……。 ま、僕の時代では、そう頻繁に飲めるような代物ではなかったがね」


 椿 三郎は、嬉しそうに笑った。


「……これは、僕の夢……ですよね?」


「そうだね。 客観的には君の夢……ということになるね。 自分が憑いている相手以外と接触しようとすると、夢という形をとらないと無理みたいでね。 今日みたいに、多くの霊能者が集まって、酒が入って……他にもいろんな条件が揃って……ようやく繋げる事が出来たんだ。ま、今憑いている柊君とは、まったく接触出来ないんだがね……」


 椿 三郎は、お手上げとばかりの仕草をしてみせた。 そんな、わざわざ条件が揃うのを待ってまで、僕に接触しようとした理由はなんだろう? 僕は単純に気になった。


「なん……で……僕に……その……接触? したんですか?」


「ん? うん。 まぁ、今のままじゃ、いろいろ厳しいみたいだからね。 誰かに伝えて欲しいと思ってたんだよ。 三善君も三善君なりに伝えてはくれてるみたいだけど、どうにも響かないみたいでね……。 君の言う事なら、多少は聞いてくれるんじゃないか? っていう目論見だよ。 だから、君に危害を加える気は、これっぽっちもないわけさ。 その点に関しては、安心してくれて構わないよ」


「……伝えてほしい? 何を……ですか?」


 椿 三郎の少し回りくどい話し方に我慢しながら、僕は訊ねた。


「うん。 僕はね、どうしても倒したい妖がいるんだ。 そこんところは、なんとなく聞いて知ってるだろ? だから、その妖に辿り着けるまで、柊君には、妖を狩って狩って狩りまくって欲しいのさ」


 椿 三郎は、薄ら笑いを浮かべながら、物騒な事を言った。


「せっかく、最強の妖狩りが誕生したんだ。 おそらく、後にも先にも、柊君以上の妖狩りは造れないだろうしね……。 ま、だから柊君には、もっともっとも~っと頑張って欲しい……そういう訳さ」


 造る……。 まるで道具のような物言いに、少し引っかかりを覚える。


「あなたは……その……三善さんや……柊もかな? その他の取り憑いてきた人達の人生を狂わせて……。 ……そうまでして……その……なんというか……」


 なんだろう? 釈然としない気持ちはあるが、上手く言葉に出来ない……


「多くの人の人生を狂わせている自覚は、もちろんある。 本当、申し訳ないとも思っている。 取り憑いてきた人間、すべてに愛着もある。 みんな、なんだかんだ言って、いい子達だったし、僕の気持ちを汲んでくれたしね。 でも、それでも、僕は()める事は出来ない。 ……それが、僕が妖になった理由だから……」


 ズズ。


 椿 三郎は、コーヒーを啜ると、僕を熱く見つめてきた。


「だから、そんな皆のために僕が出来ることは、とっとと奴を見つけ出して、狩る事……。 ……目的をさっさと達成して、消え去る事くらいしかない……と、言っても、なかなか理解は、して貰えないだろうな……」


 そう言って、椿 三郎は寂しそうな目を伏せて、再び、コーヒーを啜った。


「だから、君には見てもらおうと思う。憑いてきた人には見てもらったんだけど、彼……柊君には干渉出来なくてね……。 代わりに……と言うと、失礼かもしれないが……、僕が奴をどれだけ憎んでいるのか……奴を倒すためならなんでもする……。 その理由と覚悟をね。 君に見てもらいたいんだ」


 そう言うと、椿 三郎は、コーヒーを出した時と同じように、パチンと指を鳴らした。


 すると、何もない真っ暗闇の空間に、映画のスクリーンのようなものが現れた。


「では、とくとご覧あれ。 ちっぽけで平凡な椿 三郎の……物語を……」


 どうやら、僕に拒否権はないようだ。 やれやれ、と仕方なく諦めた時、椿 三郎は、帽子を取り、慇懃に礼をして見せた。

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