烏丸の仮説
あるとK&に、生ま6てこの●しゃべっ~#T¥ない子どMがいました。 いつ♪→なっても、言葉27話さな☆子に、耳℃聞こeないのかと心GhZなっ@両親は、何度もLnに連れ弖行きま/たが、いく羅uB"も、どこにm異常はありま∑⌒でした。;そん〒ある日、子どもがhAjiDe9言葉を発しま◇たД
「おばФちゃん」
子どもの話した♡1は、ママやパЯはなく、oばあ9○でした。 それでも、両親6とても喜bLました。
3日後、そかゆほたかるちゃんが狃呺狃厘ました。
おБВЁちゃんのおそ弙式の馟、その子はふたなひ言葉を☆+ました。
「おじ井ちゃん」
すると、3日子はゆ、今度はおじいちゃ∬が亡くな♪°ました。 次に呼んだ℃は、おかあ@∞でした。 すrVhや 厽日後にO母さ→が亡曲止ましましままました。
父は満みToました。 次は自ДЁの番だと……
「おとうさん」
やはり、次は自分の憑がБ∞Иた父は、絶望し絶望す絶望は絶望絶絶絶絶望望坊房茅戊5果2#崇ました。
そして、3日後、隣のjx5^@家ののの家の云え居え家ののののおGさんが亡くReeeeeweF9ました。
◇ ◇ ◇
ノートの中は、意味不明な落書きのような文章が、ギッシリと書き込まれていた。 まるで文字化けのような文章。 若干の狂気は感じるが、それだけだった。 都市伝説であるようなさっちゃんの歌詞であったり、カシマさんのような恐ろしい話でもなんでもない、ただの意味不明な文章だった。
何も知らない者が、前のページの忠告から、読んだとしたら、ただのイタズラだと思うだろう……
「……で、どうだった?」
俺は、後ろで俺の頭に両手を翳している香織さんに問いかける。 なぜ、俺の頭に手を翳しているかと言うと、脳波を見てもらうためだった。
「……そうね。 幹ちゃんの言う通りだったわ。 ノートのページを開いた瞬間、視覚野からパルスが走って、橋を刺激。微弱なPGO波が発生して……視覚野と大脳皮質で、一定時間、モールス信号のようなパルスが走ったわ」
橋は脳幹にある器官で、奇しくも、その器官は、かつて、何かしらのデータを送受信しているのでは? と考えていた器官でもある。
俺が、かつて、なんらかのデータを送受信していると考えた器官は、二つ。 一つは、今回反応した橋。 そして、もう一つは海馬である。 海馬は、記憶の司令塔とも呼ばれ、短期記憶を保存し、睡眠中に大脳皮質へ伝達し、長期記憶へ変換する器官でもある。
香織さんと契約してすぐの頃に、答え合わせをした内容によると、睡眠時、橋は幽界の魄からの情報を受信する。 データを受信した際、橋はPGO波(P波とも言う)を発生させ、主に視覚野と海馬を刺激する。 その際に見る幻覚が、いわゆる夢となる。
また、同じく睡眠中、海馬からは幽界の魄へ、すべての記憶を送信する。 その際にリップル波を発生させ、幽界と自身との親和性を高める。 ちなみにこのリップル波は、一般的に短期記憶の中から、必要な記憶を大脳皮質へと伝達し、長期記憶へと変換するための脳波と言われている。 結果、夢は幻覚と記憶の断片、そして、幽界の情報が混ぜ合わさった支離滅裂なものとなる。
なお、橋と海馬……この二つの能力は、幽界との交信に使われることから、霊感や霊力の強さと密接に関係していると言えるだろう。
睡眠時以外で、橋がデータを受信することで、幽界の魄を視る事ができる。 これが、いわゆる視える人の能力だ。 これは、脳を調べると、データ受信にともない、PGO波が確認できてしまうため、脳科学的に見ると、白昼夢……いわゆるPGO波による視覚野への刺激が観測される。 故に科学的に検証しようとすると、単なる幻覚だと判断されてしまうだろう。
それに対して、睡眠時以外に海馬からリップル波を放出できる者は、幽界への干渉が可能となり、いわゆる妖への攻撃が成立するようになる。 これが、『山』の法師達の能力の正体だ。実際にデータを取って、比べた訳ではないが、法師達は普通の人よりも、リップル波の効果で記憶力が良いはずだ。
では……霊感ゼロと言われる柊 鷹斗は、どうなのか? という話になるが、これはまた別の話で……いかんいかん。 思考があちこちと飛び火してしまうのは、俺の悪い癖だな……
「言語野の反応は?」
「そちらは、特に変わった反応はなかったわ」
そうなると、言葉ではなく、視覚による効果ということになる。 つまり、このノートは、『中身を読んだら』ではなく、『中身を見たら』発動するということになる。 そして、その内容は……特定の器官にパルスが断続的に走る……という事から……
「そう、幹ちゃんの仮説通り、視覚野と大脳皮質にタイマー式のプログラムがインストールされた……ってとこかしら……」
俺が立てた仮説は、目から入る毒……つまり、ノートを見ることで、脳をPCに見立て、時限式のプログラムがインストールされているのでは? というものだった。 人の身体というものは、基本的に電気信号で動作するように出来ている。 それは、筋肉だけでなく、脳の活動自体にも言える事だ。 で、あれば、その電気信号を制御する事が出来れば、PCと同じようにプログラムを仕込む事が出来るはずなのだ。 ……理屈で言えば……たが……。
俺は、予想通りの結果に満足しながら、香織さんの方へ顔を向けた。 そこで初めて、彼女の表情が、少し沈んでいる事に、気が付いた。
「どうした? 仮説通りの結果だろ? 何か、気になる事でもあるのか?」
「えぇ、確かに仮説通りね。 おそらく、タイマー式のプログラムが脳にインストールされたと思うわ。 ……そう、そこまではいいわ。 ただ……これは……、自殺を誘発するようなものでは……ないわ」
今回のノートにより、橋から視覚野を刺激するPGO波を放出させ、自己像……つまり、ドッペルゲンガーを見せるプログラムが施されたと考えられる。 この現象は、『自己像幻視の原因は脳波の乱れ』と一般的に言われている内容と矛盾しない。
さらに、大脳皮質にもプログラムされているという事は、ドッペルゲンガーの幻視が終わった後に、記憶に関するプログラムが走る事になるだろう。
だが、香織さんの言う通り、それだけでは、衝動的に死を選ぶことはない。 なぜなら……
「……感情……だな?」
「そう。 人に自ら死を選ばせようとしたら、感情へ働きかける動きが必要だわ。 でも……このプログラムは……いわゆる、幻覚と記憶に関するプログラムでしかないの」
「となると、答えは一つだ。 ノートを見るだけでは、七日後に自殺する呪いは完成しない……って事だ……」
足りないものはなんだ? 感情のトリガーとなる要素は……
視覚はノートに取られている……。 とすると、後は……嗅覚、聴覚、味覚、触覚……。
「……可能性は一つしかないな」
「……そうね」
「決まりだ。 ノートを見て自殺した者の魄を霊視したのは、三善さんしかいない。 彼に確認して裏付けするしかない」
「……それにしても……こんな……脳へプログラムをインストールするようなもの……本当にただの人間が作れるものかしら……」
「ん? あぁ、こんなもの狙って作れるとしたら、天才を通り越して、化け物だな……。 だが、呪術部エース殿の噂が正しければ、きっと、理屈ではなく、なんとなくこんな感じで書けば、そんな効果が得られそうだ……といった、感覚のみでやってんだろう……」
「あぁ、そう言われたら、納得だわ」
「……何が?」
「実は、さっき言った主要な脳波の推移とは別で、無駄だと思われる脳波の動きも時々見受けられたものだから……」
「じゃ、それが原因だな。 おそらくだが、その無駄パルスが他の要素を受けて、自殺プログラムへと変貌した……と考えるのが自然だろうな……」
「なんでも呪いに結びつく特殊体質……。 面白いわね」
「あぁ、まったくだ……。 まぁ、さっさと三善さんに状況確認して……場合によっては、さっさとアンインストールしないとな……。 君なら……出来るよな?」
「えぇ、もちろん。 だけど、大脳皮質の方のプログラムは、やめた方がいいわね。 他の記憶にも支障が出るかもしれないから……」
「なぁに、ドッペルゲンガーに触られなければ、発動しないってんなら、余程、大丈夫だろう」
「えぇ、そうね。 じゃ、皆を呼んでくるわ」
「あぁ、頼んだ」
俺は、エレガントなお辞儀をして、部屋を出ていく香織さんを見送った後、スマホを弄っている営業の與座君を見る。
仮説が外れていたら、再検証のためにノートを見てもらうつもりで残しておいた男だ。 万が一のために用意した生贄のようなものだが、……命拾いしたな……
俺は、そう思いながら、何も知らないで呑気にスマホでゲームをしている與座を見て、苦笑いを浮かべた。




