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嘘から始まる  作者: 菊花
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「痛い所はないか?」

「だいじょうぶ…」

「本当か?」


こくん、と頷くといくらかほっとしたような顔をした。

私をソファに座らせ、少し迷う素振りをしてから隣に座った。


「悪かった、怖い思いさせて。」

「レイは悪くないから…。」

「いや、俺達が読み違えた。父親と一緒に保身に逃げるかと思ったんだが…。」

「ねえ、レイ。結局なんだったの…?この縁談、何か理由があったってこと?」

「んー。…とりあえずリリーは少し休もうか。」

「でもっ」

「体が震えてる。まださっきのショックが残っているんだろ?後できちんと説明するから。」

「…でも」

「リリー。休め。今は何も考えるな。」

「レイはどうするの?」

「俺はカートと話をしてくる。後処理もあるしな。」

「…分かったわ。」

「リリー。」


名を呼ばれ、そっとレイナードに抱きしめられた。

まるで壊れ物にさわるかのようだった。


「…恐くないか?」

「…レイは恐くない。」

「そう…もう少し強くしてもいいか?」


こくん、と頷く。

さらにぎゅっとされ、ドキドキと心臓が鳴る。

でも不思議な安心感に包まれた。


…私、たぶんレイナードのことが…。

そう思った時、抱擁が解かれた。

離れてしまったことが、寂しい。


「…よし。」

「レイ…?」

「ほら、寝ろ。ベッドまで抱っこで連れてってやろうか?」


ニヤリといつものように笑うと、顔を覗き込み頭を撫でてくる。

ぼっと顔が熱くなった。


「自分で行けますっ!」

「ひとりで寝れるかー?」

「寝れますっ!!」


クックックッとレイナードの笑う声が部屋に響いた。


「おやすみ。またあとでな。」

「おやすみなさい…。」





※※※※※※※※※※※※※※※※※





横になるだけ、と思いつつ結構本気で寝てしまったらしい。

気が付くと外はもう日が沈むところだった。




「レイは?」

「レイナード様は今旦那様とお話中です。カテリーナ様がご心配されていましたが、お会いになりますか?」

「お願い。あ、待って。私が行くわ。」

「それが…レイナード様よりお嬢様をお部屋から出すなと…。」

「えぇ?」

「念の為、とおっしゃられていましたが…。」

「私、そんなに弱くないわ?」

「分かってはいてもご心配なのでしょう。お嬢様、愛されていますねぇ」


くすくすとからかうように言われ、顔が赤くなる。

愛されてるなんて…!

レイナードとはあくまで偽装のつもりで、そこには特別な感情はなかったはずだ。

たぶん問題は解決に向かっている。

だから、偽装婚約もしなくて良くなる。


王都へ行ってからというもの、まるで本物の恋人のように私を扱う。

きっと、それもなくなってしまう。



「私…レイのことが、好き…」



好き、と言葉にすると切なさでぎゅ、と心臓が痛んだ。








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