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カテリーナと近況報告をしながらお茶を飲んでいると、部屋の扉がノックされた。
「お嬢様、おくつろぎの所申し訳ありません。」
「どうしたの?」
「シュナウザー男爵家のご子息がお嬢様と面会をと…。」
「えっ!?」
「旦那様も奥方様も今はお出かけで…如何致しましょう?」
「今は来客中だとお断りして?」
「そう申し上げたのですが、会わせろの一点張りで…。」
「そんな…。」
そうこうしているうちに外が騒がしくなってくる。
粗野な彼のことだ、このままだと使用人たちに何をするかわかったものではない。
それにもしカテリーナがいることを知られたら…。
「お嬢様…。」
「分かったわ。行きます。1階の応接室に通して。」
「リリー!」
「大丈夫よ。護衛も連れていくから。リーナは絶対来ないでね?」
仕方なしに部屋から応接室へ向かう。
護衛を、と頼むと辺境警備のなかから腕の立つ者を2名付けてくれた。
「お嬢様、くれぐれもお気をつけ下さい。」
「ええ。あなたたちもごめんなさいね。」
「いいえ!お嬢様を守ることも役目でありますから。」
「ありがとう。」
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「ひさしぶりなぁ。リリアンナ。」
「お久しぶりです。シュナウザー様。今日はどういったご要件で?」
「どういったもこういったもないなぁ。リリー、男連れで帰って来たって?」
「愛称で呼ぶのはやめてくださいませ。」
「なんでだよ!俺はお前の婚約者だろ?」
「正式に婚約していません。あくまで縁談を提案されただけです。」
「どうせ決まるんだから変わんねーだろ?」
「変わります。私にはあなたと婚約する意思はありません。」
「お前の一存でどうにかなる話じゃないんだよ!お前んとこの村人が何やったか知らねーのか?」
「その件は今調査中と」
突然ガンっと大きな音が鳴り、ビクリと震える。
どうやらシュナウザーがテーブルを蹴ったようだった。
「ごちゃごちゃうるせぇんだよ…お前は大人しく俺のものになればいいんだよっ!」
「きゃあっ!」
がしっと乱暴に腕を掴まれる。
すぐさま護衛が間に入り制止をした。
「おやめ下さい。シュナウザー様。」
「あぁ?誰に物を言ってんだ?」
「シュナウザー様。お嬢様をお離しください。」
「うるせー!護衛ごときが!俺に命令するな!」
さらに腕を引かれ強引に顔を掴まれ無理やり上に向かされる。
「痛いっ!離してっ!」
「お嬢様っ!」
「離してったらっ!」
「ちっ!大人しくしろよっ!」
必死に抵抗していると、手が振り上げられた。
叩かれる!とぎゅっと目をつぶった瞬間、シュナウザーが吹っ飛んでいった。
「リリーに気安くさわるな。」
「レイ…?」
「…大丈夫だったか?」
気が付くとレイナードの腕の中に抱えられていた。
どうやら彼がシュナウザーを殴り飛ばしたようで、倒れ込んだ所を護衛が押さつけていた。
「レイっ!」
「悪い、ちょっと遅くなった。ごめんな。」