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レイナードの予言通りに朝にはカテリーナの旦那様が迎えに来た。
あれこれと揉めた挙句、私がいる間は滞在ではなく訪問するという形に落ち着き、カテリーナはしぶしぶ帰っていった。
「凄いだろ?」
「…胸焼けがするわ。」
「あれはまだ序の口だぞー。隙あらば口説いてるからな。」
「自分の妻を?」
「自分の妻を。」
カテリーナは愛されているんだ。
いいなぁ、と純粋に思う。
…いや、でもあそこまでの愛は重い…かな。
ちょっと耐えられないかも。
そこまで考えて、ふふ、とつい声に出して笑ってしまった。
その一連の流れをレイナードにじっと見られているとも知らずに。
「じゃあ、俺も行ってくる。」
「あ、はいっ。いってらっしゃい。」
「…なんか、ない?」
「何が?」
言われている意味が分からず見上げると、キラリ、と悪戯な光が瞳に映った。
えっと思った時にはレイナードの唇が私の頬に触れていた。
ちゅ、と音がいやに大きく聞こえる。
「っ!?!??」
「じゃあなー。」
「なっ!!?!レイっ!?」
キッキスされたっ!
え!?なんでどうしてっ!?
頬に手を当て、真っ赤な顔でただ呆然と立ちつくすのだった。
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それからというもの、まるで本当の恋人かのように接してくる。
初めはまだ疑いの目を向ける叔父様に見せるためだと思っていたら、どうやらそういうわけでもなく。
朝にはおはようのキスをされ、夜にはおやすみのキス。
仕事が終わって帰宅すると必ず1番に私の顔を見に来たり。
休みの日にはデートしよう、と街へ。
ドレスをプレゼントされ、夜会へ。
そして何よりも。
仕草と目線がとにかく甘かった。
特別何かを言われているわけではないのに、何故か口説かれているような気分になってしまう。
そして今日も。
帰ってくるなり私の部屋へ来て、綺麗な髪飾りを手渡された。
「…これは何?」
「ん?リリーに似合うと思って。」
「私に?」
「そう。今日ちょっと街まで出る用事があってさ。ついでに見回りしてたら目に入ってなー。」
「お仕事中なのに。」
「ちょっと買い物するくらいは大目に見てもらえるさ。ほら、かして。」
私をドレッサーの前に座らせ慣れた手つきでもともとついていた髪飾りを外し、レイナードが買ってきた髪飾りをつける。
「可愛いね。似合う。」
鏡越しに見る彼はとても満足気だ。
戸惑う私と目が合うと、さらに甘く見つめかえしてくる。
「気に入った?」
「うん…ありがとう。」
「どういたしまして。」
後ろから私を囲うように両脇に手を付き、こめかみへとキスを落としてくる。
なんで、なんでこんなに大事にされているんだろう?