表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘から始まる  作者: 菊花
14/15

13




「明日?」

「あぁ、あとはまあ、王都で出来ることだけになったから。」

「そう…なの…」


レイナードと共に領地へ帰ってきて4日目、区切りがつき明日には帰ると告げられた。


「さみしい?」


ニヤッと笑いながら顔を覗き込まれ、恥ずかしさで赤くなっていく。

自分でもしまった、と思うくらいにはしょんぼりとした声が出たのだから、彼が気付かないわけがない。


「さ、さみしい…です」

「じゃあさみしくならないようにしてやろうか?」

「えっ?きゃあっ」


さっと体を抱え上げられ、レイナードの膝の上に座らせられる。

いつもよりも近い目線にどうしたらいいのか分からない。


「えっ!?やっやだ!おろしてっ?」

「駄目。」

「なっなんでっ?」

「俺がこうしたいから。」

「なっ」

「…なぁ、リリー。」

「な、に」

「来週叔父上と王都に来たら、そのまましばらく残らないか?」

「え…?」

「お前今まで引きこもり気味だっただろ?急にいろいろやるよりは今から少しずつ慣れていけばと思ってさ。あと…」

「…あと?」


そっと背中に回っていた腕に力が入り、私を引き寄せると耳に口を寄せられる。


「俺がリリーと離れたくない。」

「…!!」


直接耳にふれる声と吐息に体が固まった。

ふ、と笑い声が聞こえ私を抱く腕に力がこもる。


「可愛いな。お前、なんか俺のツボに入るんだよ。」

「そんなの知らないっ」

「分かってないからよりいいんじゃないか?」


そんなふうに言われても私の何がツボに入るのだか分からない。

困惑気味にレイナードを見ると、珍しく動揺したように目を逸らされた。


「…そういうとこなー。自覚ないの?」

「えぇ?」

「昔から俺の心臓を掴むのが上手いよな。」

「そんなことしてないわ!」

「ふうん?」


意味ありげな目で私を見上げる。


「初恋なんてとっくに忘れたと思ってたのにな…。」

「レイ…?」


耳に手をかけられ顔が近づいたところで、そうだ、とレイナードが呟いた。


「…なあ、キスしてもいいか?」

「…どうぞ。」

「じゃあいただきます。」


次会えるまで、と言わんばかりにたくさんのキスが降り注いだのだった。




※※※※※※※※※※※※※※※※※※※




それから2週間後、両家の話し合いのもと、婚約が正式に交わされた。

婚礼はレイナードの強い希望により半年後に、そして花嫁修行と称して私のモーズレイ家滞在も決まった。


社交界に慣れていない私は、まずは叔母様に付いて茶会などから顔を出し始める。

叔母様やカテリーナの助けもあって、思ったより浮くこともなく馴染んでいけそうだった。

ただし多くの視線に晒されてはいる──レイナードの注目度は私の想像以上だった。


比較的小規模のお茶会でこれならば、夜会などに行けばもっと多くの目を集めるのだろう。


「自信がないわ…」

「焦るな。もともと引きこもりだったんだし。」

「…言い方が良くないわ。」

「そうか?まあ俺は助かったけどな。」

「引きこもりが?」

「そう。引きこもりが。おかげさまでお前が他の男と出会わずに済んだ。」

「なっ」


ニヤリ、といつものように笑い顔が近づく。


「昔も今も俺はお前のもんだ。」


反対じゃないのか、と思いながら瞳を閉じて彼からのキスを待ったのだった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ