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はつこい?初恋って言った!?
思わず疑わしい目を向ける。
「そんな目で見るなよ。本当だぞ?」
「…冗談じゃないの?」
「心外だな。」
「だって…そんな風には…。」
「…まあ当時は気付いてなかったしな。10になるかならないかの頃だ。それが恋だとか思ってなかった。」
まだお互いに頻繁に行き来をしていた頃だ。
彼に恋心を抱かせるようなことを私はしていただろうか?
思い当たる節はない。
「…今は?」
「なに。聞きたい?」
ニヤ、と笑う顔は実に楽しそうだ。
負けじとキッと睨みあげる。
「聞きたいわ。」
「キスしたいくらいには好きだけど?」
そして再び唇にキスをされる。
ハッと我に返り、レイナードの腕を思い切り叩いた。
「痛った…なんで叩く?」
「許可してないわっ!?」
「あぁ…キスしてもいいか?」
「遅いっ!!」
「ふぅん。嫌なのか?」
「いっ嫌とかじゃ…。」
「ならいいだろ。それよりも返事は?」
「返事…?」
「そう。」
「えっと…。」
「俺が好きか?」
「っ…!!」
「リリー?」
視線を彷徨わせていると頬に手を添えられ、瞳を覗き込まれた。
「言うまでキスするぞ?」
「なっ…!?!」
「ほら、早く。」
「まって…!!」
「駄目。」
「…!!」
キスの合間に何度も好きかと問われ、息も絶え絶えに好き、と答えるまで続いたのだった。
※※※※※※※※※※※※※※※
「今回の件は本当にすまなかった。」
「いえ、お父様だけが悪いのではないのですから…。」
「いや、私がもっとしっかりしていれば…ところでリリアンナ。」
「はい。」
「あー…あのだな…。」
珍しく口ごもるお父様に首を傾げる。
「どうなさったのですか?」
「レイナードとのことなんだが…。」
「あっ!はいっ」
今朝のことを思い出し、ぶわっと真っ赤になる。
その様子にお父様の目が光る。
「なにかあったか?」
「いえっ!なにもっ!それでお父様のお話はっ!」
「…昨日正式に申し込みを受けた。お前はそれで構わないか?」
「…はい。」
「そうか…。」
急にずん、と空気が重くなる。
みるみるうちに落ち込むお父様に、私は狼狽えた。
「お、お父様?」
「ああ、気にしないでくれ。」
「えぇ…?」
「来週王都へ行こう。いろいろ詰める話もある事だしな。」
「わかりました…お父様?」
「なんだ?」
「レイとの婚約はお父様にとって良いお話ですか…?」
「どういうことだ?」
「…血の繋がらない私を可愛がって下さったお父様にはとても感謝しております。常々恩返しができたら、と考えていました。でも私に出来ることは少なく、せめて家に有益結婚ができたら…と…」
「リリアンナ。」
厳しい声と顔にいけないことを言ったのでは、と焦る。
ただ、続いた言葉は私には意外なものだった。
「家にとって良い結婚ではなくお前にとって良い結婚をしてくれればこれ以上喜ばしいことは他にない。」
「でも…。」
「どうした。」
「だって…さっきとても落ち込んでいたから…。」
「うっ…いや、あれはだな…!」
「複雑な父親の心境…ってやつでは?」
聞こえた声にハッと振り返ると、ニヤリと笑ったレイナードが立っていた。




