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嘘から始まる  作者: 菊花
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泣きながら眠りについたせいか瞼が重い。

起きたあともしばらくベットの上でぼーっとし、いい加減動こうと寝室から出たところでコンコン、と扉がノックされた。



「おはようございます。お嬢様。起きていらっしゃいますか?」

「ええ、おはよう。起きているわ。」

「あの…レイナード様がいらしているのですが、如何なさいますか?」


ドキっと心臓が鳴る。

会うのは怖い…でもいつまでも逃げているわけにはいかない。


「お嬢様?」

「…入ってもらって。」


まだ寝間着だったことを思い出し、さっとショールを羽織った。


「おはよう。」

「おっおはよう…昨日はごめんなさい。」

「いや…泣いたのか…?」


はっとして少し俯く。

ひと目見て分かるくらいには、目が腫れているのだろう。


「ごめんな。…大丈夫か?」

「…大丈夫…。」

「リーナが分かるところだけは話してあるとは言っていたけど…聞くか?」


こくん、と頷く。

自室のソファを勧め、お茶を淹れ向かいに座ろうとしたら隣を示される。

隣…?と思いながらも拒否は出来ずに大人しく座った。


ひと息ついてから話はじめた内容は、カテリーナから聞いていた話とだいたいは同じだった。

少し調査が滞り現地へ行く計画を立てていたとき。

私が来たことで違和感なく辺境地領へ赴くことができたこと──。


やっぱり、そういうことだったんだ。

分かっていたけれど、辛くて胸が痛い。



「あー。あの、な、」

「あのっ!例の件はっ縁談もなくなったことだし、なしということでっ!」

「…は?」

「もっもともと縁談から逃れるためのものだったし…!」

「…ふぅん?」

「レイにこれ以上迷惑かけられないから…。」


沈黙が落ちる。

すっとレイの手が私の頬にふれた。


「…なんで泣いてる?」

「泣いてなんかっ」

「なぁ、俺、ちょっと自惚れてたんだけど違うのか?」

「自惚れ…?」


頬にふれていた手が離れ、抱きしめられる。


「お前俺の事好きなんだろう?」

「そっそれはあくまで縁談から逃げるためでっ」

「ああ、でも昨日叔父上に正式な婚約の申し込みしたんだよなぁ。」

「えぇぇ!?」

「叔父上には快く許可を貰ったしなぁ?」

「ええぇえ!?」

「俺を好きか?」


ぼっ!と顔が熱くなる。

まだ面と向かって好きと言えるほど心の準備は出来ていない。


「…レイは…?」

「ん?」

「レイはどうなの…?私のこと、好き…?」


ふっと微かに笑う声が聞こえたと思ったら、顔を上に向かされキスが降ってきた。


「っ!??」

「あ、キスしてもいいか?」

「順番が逆だわっ!?」

「悪い、つい。」

「ついっ!?」

「あんまり可愛いこと言うから。」

「かっかわっ!??」



ぶはははと少々雰囲気を壊す笑い声が響く。



「いいこと教えてあげようか?」

「…なに?」

「俺の初恋、リリーなんだよな。」

「…はぁっ!?」





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