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プロローグ
「リリーが?」
「ええ。明日からこちらに遊びに来るそうよ。」
「随分急なのね。」
「そうなのよねぇ。」
「でもリリーに会うの久しぶりだわ!私も久しぶりにこっちに帰ってこようかしら。」
「あらぁ。でもあの子、許してくれないのじゃない?」
お母様のからかうような顔に思わず顔を顰める。
別に実家に帰るくらい…いや、どうだろう。
自信が無い。
「片時も離したくないって感じじゃない?夜会でも随分見せつけられたものだからお父様が不機嫌ったらないわ。」
「えぇ?」
「ふふふ。もう結婚して半年になるのにね?見せつけられる私たちの身にもなってほしいわぁ。」
「もう!お母様!」
そう、この時まではただ単純に遊びに来るだけだと思っていた。
昔は良く行き来をしていたが、最近は専ら私が向こう─従姉であるリリアンナの住む辺境伯領に行っていた。
それも私の結婚などで最近は忙しく、手紙のやり取りをするだけになっている。
だからリリアンナが王都へ来るのは本当に久しぶりだった。
急に来たくなったんだろう、と誰しもが深く考えずその日を迎えたのだった。