52 シルクロードステークス
日曜は、GⅢシルクロードステークスのために京都に遠征してきた優。パートナーは、自厩舎の4歳牡馬エルブランコである。
重賞挑戦はこれが3度目となる優だが、これまでの2回はいずれも、予定していた騎手の騎乗停止による棚ぼたで回って来たものだった。エルブランコは自身が乗って準オープン、オープンを連勝して来た馬だ。お手馬と呼べる馬で重賞に挑むのは、今回が初めてであった。まして同馬は自らが所属する神谷 太陽厩舎の馬。当然のことながら、力が入る一戦となる。
シルクロードステークスは、3月末のGⅠ高松宮記念にもつながる重要なレース。層の厚い短距離路線だけに、一気の相手強化が予想され、エルブランコにとってもここが試金石となる。
第2回京都競馬2日目 第11レース シルクロードステークス(GⅢ)
(4歳以上オープン ハンデ戦 芝1200メートル 馬場状態:良)
1枠1番 ブラインドフェイス 5歳牝馬 57.5キロ 屯田 勝男
1枠2番 タッチアンドゴー 5歳牡馬 55キロ ディートリヒ・シュミット
2枠3番 ノーナンバーエース 4歳牡馬 53キロ 高木 裕
2枠4番 プリンセスティアラ 6歳牝馬 53キロ 杉山 泰平
3枠5番 インサイドアウト 4歳牡馬 54キロ 小野寺 信一
3枠6番 マッハバロン 6歳牡馬 57キロ 蟹田 仁
4枠7番 ダンシングフラワー 4歳牝馬 52キロ 御子柴 茂
4枠8番 エルブランコ 4歳牡馬 54.5キロ 藤平 優
5枠9番 レディステディゴー 5歳馬場 56キロ 草野 康友
5枠10番 ヒロシスカイハイ 8歳牡馬 54キロ 仲本 昇
6枠11番 グッバイティアーズ 5歳牝馬 53キロ マッテオ・ジョバンニ
6枠12番 キープアウト 6歳牡馬 52キロ 福山 明秀
7枠13番 イエーイ 6歳牡馬 53キロ 豊橋 大
7枠14番 マッスルドッキング 7歳牡馬 54キロ 太田 卓
7枠15番 ゴーインマイウェイ 9歳牡馬 51キロ 河野 恭平
8枠16番 ダンデライオン 6歳牡馬 56キロ 山田 大河
8枠17番 ハイアンドロー 4歳牡馬 53キロ 伊藤 鉄二
8枠18番 ナウゲッタチャンス 8歳牡馬 50キロ 清原 圭一郎
「清原君は、これが重賞初挑戦だよね。お互い頑張ろう。」
「ハンデが軽くて乗り役が見つかんなかったらしいわ。俺は軽いからな。まあ正直敷居が高過ぎる気はするんやけど、重賞で乗せてもらえるだけでありがたい事やで、ホンマに。でもそっちはチャンスあるんやないか、ここはハンデ戦やし。」
同期の清原の言う通り、優のエルブランコは有力視されていた。連勝の内容も良く、オープンを勝ったにしては恵まれたハンデということもあり、単勝6.5倍の3番人気に支持されている。
ここでの注目馬は、屯田 勝男のブラインドフェイス。牝馬ながら昨年のGⅠスプリンターズステークスを制した実力馬だ。本番まで間隔を開けたいとの理由で、厳しいハンデを課されるのを承知でここを使って来た。軽快な先行力の持ち主で、馬場の軽い京都は得意のコースである。トップハンデながら単勝2.0倍の1番人気に推されている。
その最大のライバルと目されているのが、単勝4.4倍の2番人気、蟹田 仁のマッハバロン。短距離の重賞を2勝しており、こちらは中団からの鋭い差し脚を武器としている。
そしてこのレースの展開のカギを握るのが、日本人若手のナンバーワン騎手・山田 大河のダンデライオンである。GⅢ北九州記念をコースレコードで制した実績の持ち主で、このレース唯一の逃げ馬でもある。この馬がどんなペースで引っ張るかに焦点が集まる。
レースがスタートした。ダンデライオンはやや出負け気味ながら、外から押して押して先頭に立つ。
2馬身ほど離れた2番手に人気のブラインドフェイス。続く3番手は、芦毛が映えるエルブランコ。優は本命馬を相手と見てがっちりマークの体勢だ。
マッハバロンは、いつもよりやや前目の6番手。前が止まりにくい京都コースを意識しての作戦か。
前半600メートルの通過は33秒4。山田がスタートから押して行った分、やや速いペースだ。しかし年明けの京都の芝は状態が良く、前はなかなか簡単には止まらない。3コーナーから各馬が一斉に仕掛けて差を詰めて来る。
最後の直線に入り、依然としてダンデライオンが逃げている。しかしその直後につけていたブラインドフェイスが、手応え良くこれを交わして先頭に立つ。
これをマークしていたエルブランコの優も、満を持してスパートをかける。が、ついて行けない。これがGⅠ馬とただのオープン馬の差なのか、白い馬体は置き去りにされてしまった。
それを外から交わして上がって来たのが、蟹田のマッハバロン。一気に先頭に接近するが、ブラインドフェイスも譲らない。重ハンデをものともせず、二の脚を使って応戦する。
残り100メートルからは、屯田と蟹田の追い比べになった。上体を起こして激しいアクションで追うトンカツ。上下動の激しい得意のカニダンスを繰り出す蟹田。縦横入り乱れてのダンス対決だ。
最後はハンデ差と追う者の強みか。マッハバロンが粘るブラインドフェイスを首差交わしてフィニッシュ、重賞3勝目を上げた。勝ち時計は1分7秒3、レースの上がり3ハロンは33秒9。
結局エルブランコは、逃げたダンデライオンも交わせず4着に終わった。クラスの壁というものは競馬には付き物ではあるが、オープンと重賞の差は予想以上に大きい。重賞ウイナー3頭に先着を許した結果に、それを強く感じた優であった。




